第35話巨大な、モンスターのエサ

 がやがや。

 キッチンがうるさい。

 わたくしはリビングでTVの録画を消化していた。

 そろそろ年末だ。面白い企画や、観たい番組がめじろおし。

 だから、TVに内蔵されている(らしい)記憶容量を、少しでも早く、多く空けておきたいのだ。


 がやがや。


 うるさいなあ。

 わたくしがアニメ(!)の画面を途中で止めると、チーン! とレンジの終了音がする。

「なに? 今コナンの録画消化してるんだけど」

 我ながら居丈高だと思う。昼日中から名探偵コナンを観ているわりに偉そうなんである。ところが日ごろ人族となじんできたモンスターは動じない。

 レンジの中から大きな耐熱ガラスの器を出してきて、

「今度こそ、大丈夫」

 なにやら、確信じみてそう言う。ホイミスライムの触角(よくぞ耐えた)に支えられた、器の中をのぞいて、さまようよろいがそわそわ。

「んあ? なによそれ」

 しょぼついた目をこすりつつ中身をのぞくと、さつまいもの香りのするプリンが。

「モンスターのエサ。味見、する?」

 うわ、甘そう!

「関係ないけど、TV観すぎて疲れたから昼寝するわ」

 あくびをかみ殺して、首を回す。うん? 疲れてるなら甘いもの……いいのでは? 思うけど、モンスターのエサ、だからね?

「あ、コナンは好きだから、音量大きくしておいてね。ちゃんと聴くから」

と、ホイミスライムは鼻歌混じり。

 わたくしは、ルピシアのクッキーの香りがする紅茶をセレクトして、ぐびぐび飲み、

「おっしゃ! 気合い入れて聴きなよ!?」

 自分もリビングのTV前に戻ったのだった……。

(自分がどうして速攻で寝なかったのか、いまだにわからない)

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