第20話スライムベスの再来
いや、いーよ? べつに今更謝んなくったって。おまえ、そもそもそういうキャラじゃないし。おまえいなくても、わたくしの人生満ち足りてるし。
しかし、まあ。想像していたとはいえ、仲間集めに苦労しているらしいな。まず出会うことからして難しい、というか。……当然だろう。
『スライムべスとして生をうけたからには、キングの座を狙うのが覇道の精神!』
……なんの話?
ああ、スライムベス。おまえスライムキングになりたいらしいな。それは前にも聞いたけど。え? 仲間が不承知? ブフォ!
わかる。わかるよ、おまえじゃなくて、そいつらの気持ち。
ほら、モンスターのえさやるから、じっとおとなしくしてなさい。
なに? あいつら頭おかしいって? そらおまえだよ。『スライムもりもり』やんなさい。なにかって? ゲームだよ。一生懸命働くスライムたちの、体張ったストーリー。
興味ない? ああ、おまえ。残念だけどな、おまえが出会ったっていうスライムベス? そいつらも今のおまえと同じくらい、いわゆるその「覇道」ってやつに興味が持てなかったんだと思うな。そんなことない?
『向こうがあちしのさいのーを前に、自分の実力のなさに腹が立って悔しがってたんだ』
? いやいや、フラれたんだろ、だったら謙虚になんなさいよ。
え? なになに?
他者の興味を引くにはどうしたらいいかって? さーね。まず自分が興味をもつことじゃないの? 相手がどんなことに興味を示しているのか、とかね。
なに? 襲われた? 性的な意味で? 違う? そらそうだ。スライムベスだもんな。丸くてぷにゅんとして、肝心なデコボコがないもんな。え? ある? その頭上のとんがり? ふーん? ああ、意味が通ってなかったっぽい。
……で、さあ。ふつー、そのとんがりを、さあ。スライムベスってなんに使ってるの? アンテナなの? 触角? 意図不明……作画担当に言えって? そんなことできないよ。天下のバードマウンテンライトさんに……おまえ、なに無茶言ってんの。
『だってあいつらひどい』
って「だって」の意味が不明だし。そのひどいやつら(?)に声かけたのおまえだし。そもそも今、そんな話はしてないし。おまえのモノローグで、紙面埋めるわけにいかないし。
『そう、運命のあの日、あちしは……』
うん? あの日っていつ? 何時何分何秒? ったく、とーとつだね。
『あちしは彼に会いに旅だった……』
彼!? 男、いやオスだったの? ていうか、なんか聞いちゃってるけど。
『そして彼はあちしをかついで捨てた!』
唐突すぎる。過程はどーなってんの?
『くわしくはウェブで……!!』
検索けんさく! って、おまえなあー!!
あー。DARUMA茶がうんまい。フルーティで甘い綿菓子のような匂い。二番煎じが特にたまんないな。お茶っ葉、開いてるときにお湯を注ぐとさあ。ぱあっと香りが派手にひらくんだよね。興味ない? あそー。わたくしもおまえに興味ないしー。やっぱ、出てってくんないかな……?
言ってもまたくるんだろうけど。
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