青結晶の洞窟⑧
三人で見つけたそれに向かっていく。
近寄ってみれば、見えてた範囲は入り口に過ぎず、中にはもう少し広い空間があることがわかった。
「たぶんこれだな」
日吉がタブレットをいじりながらそう言った。
「テレポーターの中でも『緑』は駅からダンジョンに来るためのもの、『赤』はダンジョンから脱出するためのものらしい」
タブレットからの情報ならば確定的である。
日吉は小走りで川蝉の前方に出てきた。
「じゃあ俺が調べて来る、お前等は待っていろ」
「いや、待て」
それを川蝉が言葉で止めた。
「何だよ?」
「別に調べるのは一人でなくてもいいだろ。三人で使い方を調べればいい」
「いやでも見張りとかいるだろ。あんな狭い場所にいてまた大量のモンスターが出たらヤバいし」
「何故そこまで頑なに一人で行きたがる?」
「いいだろ別に。お前には関係ねーよ!」
前までは筋の通っていた日吉の理論が急に荒っぽくなる。
――一人で使うつもりなんだろうな。
川蝉としてはまだ帰る気はなかったので、日吉の企みは心底どうでもよかった。
だが七瀬のことがある。彼女のメンタル面での疲弊は日吉の比ではなかった。
「誰がこれを使うか、先に決めないか?」
「いや先に俺が調べる。使えなきゃそんな話をしても意味はない」
あくまで日吉はそこを譲る気はないらしい。このまま下手をすると議論は平行線を辿りそうな気がしてくる。
「七瀬はどう思う?」
川蝉は七瀬の意見を聞こうと彼女の方を向く。
だが七瀬にはその声は届いていなかった。代わりに異様に怯えた様子で、川蝉の腕の袖を引っ張ってくる。
「あ、あれ……」
震える声と指で、ある一点を七瀬は示した。
ぬるりと――
その時、肩を押しつぶすようなプレッシャーが一気にのし掛かってきた。乾いた皮膚に汗がにじみ出てくる。
「…………」
その事態に川蝉は歯を食い縛り苦い表情になってしまう。
「嘘だろ!」
日吉もまた異常事態にヒステリックな声をあげた。
ペチャリペチャリ――
湿った足音が洞窟内に響く。
一歩、また一歩、ゆっくりとそいつはこっちに向かってきていた。
紅の体皮、生物的とは言い難いメタリックカラーで光沢のある色。
腕が異様に長く地面に指が触れている。その漆黒の瞳は川蝉達を捉えていた。
殺戮を招いた象徴。
蛙の姿を模した悪魔、ヤドクが一匹、通路から現れたのだった。
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