てんと居住まい正しまして。

夏みかん

第1話 あのねのね

あ、で始まるあいうえお。


私が生まれたのは、この街の産婦人科であった。


看護師さんが湯の中に落としてしまったのか、私は生来の風呂嫌いで、よく泣いては皆にあやされた。

初めての女の子。それだけで価値のある存在。

あの頃の人の恩義とは、と常に考える。今よりよほど温かな何かがあった。

それは今日まで続いて、私を助けているだろう。


・・・・・・・・・


さて、私は今日から、目下就活を頑張ろうと思っている。

社会人復帰だ。頑張るしか無い。

とりあえず、通える範囲で、自分の気が持つ範囲で頑張ろうと思う。


どうしようか。レジチェッカーになるのが一番技術も着くし、確実な気がする。

しかしあの行列のできる中、自分にできるだろうか。

かつて先生には、一対一は辞めたほうが良い、と言われた。


清掃なんかが良いんだそうだ。

広くて、集中攻撃を受けなくて、ゆったりと働けるところ。

なんだか贅沢ばかり言っている気がする。


あーとにかくどうすればいいんだろう。


計算があるところは駄目だ。とちるかミスる脳みそなので。

とりあえず、気を遣わなければいけないところは駄目だ、疲れて荒れる。


あーどうしよう。


とにかく、頑張るしか無い。

ガサいので手先を使うところも駄目だ。清掃に限る。

あー草むしりでも何でも、野良仕事の方が好きなのだが、土木に行けば確実にお前は怪我をする、いや死ぬと言われた。


やはり作業所からだろうか。


広い視野を本当に持てたというのならそこから始めるべきか?


くしゃっとなりやすい気性なので、そこはやはり病なのだろう。

しかし私は世間の移り変わりを見る必要があれば、そこは頑張るべきではないのか?


自分で疑問である。優しくされて本当に嬉しいか?と。


現実を知りに行くべきだ。

とりあえず求人情報を見なくては。農家でも何でも、好きな方に行っても辛い目に遭うなら、なんだって経験してみたいと思う。


とにかく、頑張ろう。

では。

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