決戦

PART:1

 レッドソード、グリーンベンジャー、ブルードラゴン、バーチャルピンク、サンフラワー。カスタード、オキザリス、ハイドランジャーの8人もまたそれぞれのチーム、または個人でバットレンジャーを始めとした登録法賛成派の接触を受け、自分たちの方針を話した。彼らもまた登録法の必要性は理解しつつも、自分たちは中間の立ち位置を崩さないこと、またはどちらかというと反対するという立場にいることを伝えた。バットレンジャーは彼らの考えや立場を理解しつつ、反論することなく受け入れた。それと同時に敵対するならばその時はそれ相応の対応を取るとも言った。


 「それ相応の対応って、下手撃てばあいつらが立ちはだかることだよね」


 カスタードは壁に寄りかかっているサンフラワーに向かって言った。


 「ドリームホワイトがいた屋敷では実際に他の戦隊や魔法少女と戦ったけど、バットレンジャーはかなりのベテランで強豪だから、あまり敵に回したくないわね」

 「登録法が出来たら自由に動けなくなるっていうのは解るけど、あんな乱闘騒ぎや同士討ちはもう御免被りたいなあ」


 オキザリスが率直な感想を述べる。


 「おまけにシビュレンジャーなんて奴らまでいるからなあ」


 ブルードラゴンが調査報告を眺めながら言った。


 「なんて言うか、問題がでかくなりすぎてるって感じがするっすね」

 「方針は正しいと思うが、それに伴う問題も山済みだな」


 グリーンベンジャーとレッドソードが顔を見合わせた時、彼らのすぐ横を誰かが横切っていった。それがザウレンジャーとチェリーブロッサムだったので、声をかけようとしたが、彼らと一緒にいる人物を見てびっくり仰天した。

 それは収監されたはずのドリームホワイトとブラックサレナだった。2人は目立たないように6人の中に混じって、顔がばれないように上から布をかけられ走っていた。


 「ちょ、ちょ、ちょっと君たち何してんの!」


 レッドソードを先頭にザウレンジャーとチェリーブロッサムに駆け寄って行く。彼らもまた相手が見知った人物であることを確認すると、足を止めた。


 「その人って、ドリームホワイトだよね?何処連れてくつもりなの!」

 「止めないでください。最善の選択なんです」

 「最善って……」

 「捕まってる人を勝手に外に出したら怒られちゃいますよ?」

 「それが解らない程君たちも馬鹿じゃねえだろ?」


 口々に言う中、ザウレッドは自身の決意を語った。


 「これから俺達がやることにどうしてもこの人が必要なんです。シビュレンジャーを倒すために」




 矢口修二がした相談とは、拘留中のドリームホワイトとブラックサレナを脱出させ、シビュレンジャー退治に協力させるという事だった。


 「それは一体どういうことなのか、理由を聞かせてくれないか?」

 「そうだよ。突然そんな事言われても解らないよ」

 「それって要するに脱獄させるって事よね。そうすることで、何か私たちの特になる事があるのかしら?」


 ザウレッドは一度頷いて、自分の考えを言った。


 「今、魔法少女も戦隊たちも登録法に賛成か反対かで争っている人たちが大半だ。話し合いで解決できればいいんだけど、武力衝突なんておこっているのが現状だ」

 「そうだね。それがどうしてドリームホワイト達を脱獄させることになるの?」

 「全ての魔法少女と戦隊を敵と認識していて、尚且つ強い力を持つシビュレンジャーがいる以上、俺達が戦っている場合ではないと思う。彼女たちにとっては賛成派も反対派もすべてが敵だ。彼女たちを完全に撃退するのは難しい。その弱点を知っている人でもいない限りは」

 「……まさかリーダー、ドリームホワイトから何か聞き出そうっていうのか?」


 一成の問いに、修二は頷いた。


 「彼らはシビュレンジャーの製作者だ。当然弱点だって知っていると思う。監獄から連れ出して、シビュレンジャー退治を手伝ってもらうんだ」

 「でもそんなことしたら、私たち……」

 「何らかの処罰があるわね。最悪引退かも」


 友菜と由香が不安を漏らすが、修二は動じなかった。


 「だからってシビュレンジャーを放っておいたら登録法が施行されても、被害を被る戦隊と魔法少女、さらには一般人にも被害が出るかもしれない。例え俺達が力及ばなかったとしても、何もしなくていい訳はない。俺達は全ての戦隊と魔法少女の未来の為に、そして今生きる人達の為にも、シビュレンジャーを倒さなきゃいけないと思う。登録法に関して決めるのはその後でも遅くはないと思う」

 「成程。目の前の問題を解決してから登録法云々を解決しろって事か」

 「うん。とにかく、シビュレンジャーをどうにかしない限り俺は登録法に賛成も反対もできない。これが俺の考えだ。全ての責任は俺が取る。協力してほしい」


 修二は自分の考えを話し終えると、改めて全員に協力を求めて頭を下げた。例えここで断られたとしても、修二は一人でも実行するつもりだった。だが友菜をはじめ、ザウレンジャー達は修二に協力することを決めた。


 

 「修ちゃんだけにやらせられないよ。私にも手伝わせて」

 「しゃーない。協力しますか」

 「リーダーがそこまで決めたんなら、俺らもやるよ」

 「僕らがやらなきゃ誰がやるってね。ほかにレッドみたいに考えている人がいないなら」

 「それにあなた一人で背負う必要はないわ。私たち全員一緒に責任は負うから」


 全員を巻き込むことになるかもしれない危険な賭けに賛成してくれたことに修二は感謝し、その場で頭を下げた。


 「なら早いほうがいいな。今からドリームホワイトのところへ行こう」

 「今だったら警備が手薄なはずだから、いけるはずだよ」

 「でもあの人装備品とられてるんだよね?それも取り返したほうがいいと思うけど」

 「それなら心配ないわ。持って行った場所を知っているから」


 作戦を立てるブラック、ブルー、イエローにピンクが補正を入れていく。そして6人は一斉に行動を起こしたのだった。



 「僕らの作戦にはこの人達が必要なんです。作戦が終わったらすぐに帰ってきますのでご心配なく」

 「いやご心配なくってなあ……」


 レッドソードは眉を寄せたがあくまで6人は止まるつもりはなかった。


 「それがあなたたちにとって大切なことなの?」

 「そうです」

 「それはどんなことがあっても変わらない?」

 「変わりません」


 バーチャルピンクとハイドランジャーが聞いても6人は考えを変えるつもりはなく、それでは急ぐんでと走り抜けていった。



 「本当に良かったのか。私たちを脱出させて」


 一緒に走りながら尋ねたドリームホワイトに、ザウルブルーとザウレッドが返す。


 「もう決めた事ですから。それに自分が作った物の弱点ぐらい知ってるでしょう?」

 「俺達6人全員で決めた事なので、それを貫こうと思います。登録法について争うよりシビュレンジャーをやっつけようって」

 

 もう後戻りはできないし、彼らに今更戻る気はなかった。これが最善の行いなのだという思いが支配していると、ドリームホワイトは思った。


 「とりあえずまずはこの建物から出ましょう。それから安全な場所まで行って、シビュレンジャー対策を立てましょう」

 「解った。そこまで決めてあるのならば私はもう止めない。君たちに協力しよう」

 「…それに思わぬ助っ人までいるみたいですよ」


 ブラックサレナの言葉通り、後ろから大勢の人間が後をつけて来た。それは先ほど会話していたレッドソードを始めとした戦隊と魔法少女達だった。


 「皆さん、どうしてここに……」

 「さっきドリームホワイトが言ってた通りよ。私たちはもうあなた達を止めないわ。代わりに私たちにも手伝わせて」

 「嫌って言っても付いていくっすよ」

 「とりあえずは外まで護衛する!そこから先はあなた達だけで行きなさい!」

 「……はい!」


 大人数となったが、ザウレンジャーとチェリーブロッサムは一つの目標に向かって進み始めた。

 

 


 

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