1-2)紙とWEBの文章ルールについて

 さて、きほんの「き」。文章体裁のお話続きです。といっても言うことはあまり改行のお話と変わりませんが。印刷物と端末の違いって結構大きいんですよね、ということを少しだけ。


 紙媒体には明確なルールが存在します。趣味である以上絶対ではないですし、出版される御本でも個性的なものがあったりしますのでこれじゃなければいけないということはありませんが……それでも自分の確固たる理由がなければ、多少は守っておいた方がいいようなルールですね。段落文頭を一文字空けるとか、前回お話した改行の位置とか、空行を入れすぎない、とか。三点リーダー(「…」のこと)やダッシュ(「―」のこと)は二文字使う(または二の倍数)とか、感嘆符や疑問符の後は空白入れる、とか、調べると先人の方々が丁寧にまとめてくださっています。そちらを読むといいと思います。


 この紙のルールはWEBと違い細かいです。縦書きであること、見る形が印刷物なので読者毎変わることがないということ、それに加えて紙に印刷するので、単純にページ数が増せば増すほどお金がかかったりするのもありますね。

 私自身は紙が好きなのでこの形式がとても目に馴染んでいます。個人的には読みやすい形式ですね。


 さて、この紙のルール。WEBでも準拠しなければいけないというと、そういうことはありません。このルールでないと読みづらいという層は一定数いますが、逆にこのルールだと読む気が失せる、という層もいます。あくまでどちらも一部であり絶対ではありませんけどね。

 改行の時にもお話させていただきましたが、あくまで自分の読者層について考えるといいと思います。今よりもっと多くに見てもらいたい、という場合は、一般論に寄せるのも大事なことですけどね。


 以前お話したようにWEBでは表示端末の違いから魅せ方が変わってきます。特に台詞の前後に空行いれるのは恐らく台詞が埋もれないようにでしょう。またツイッターなどで短文を投稿することに慣れている人は、貴重な一文字を同じもので消費したくないでしょうから三点リーダなどのルールもあえて無視すると思います。


 何度も言いますが感覚は人それぞれ。ぎゅっと詰まった文は読みづらい人、逆にすかすかに見える文は読むのが困難な人。本当にたくさんいます。

 上の文章のルール以外でも、平仮名や漢字の量とかがそれにあたりますね。平仮名よりも漢字の方が情報を想像しやすい人もいれば、逆に漢字が多いと読みづらい人たちもいます。趣味で楽しむ分には、自分がかきやすい形を模索してみましょう。

 体裁だけを気にして筆が止まるくらいなら、まずは書こうよ、とすら思います。まあ、先にルールだけでも知っておくと、使う使わないは置いといて便利かもしれませんが。人それぞれです。


 きほんの「き」、の割にあまり細かいことをお話していませんね。何度も繰り返し言っている「人それぞれ」、個人的には大事だと思っています。


 このお話は少し主題からずれてしまいますが、別途枠でお話する前にここで一言だけ。

 読んでいるとき、貴方自身が作品に対して「読みづらいな」と感じることがきっとあると思います。もしそういうことでアドバイスを欲している方にお話することがあったら、お伝えするのもいいと思います。ですがお伝えするときに、その相手を間違っていると言いきってしまうのではなく、色々考えたうえで自分がなんで読みづらいのか、相手がどのような媒体を想定しているかひとつ考えてほしい、というのが非常に勝手な願いです。

 商品にするならまだしも、趣味でのんびりやっている場合は特に。貴方の見ている世界がその相手の作品を読む人の常識と限りませんのでね。

 逆にお言葉を受けた時は、相手がどういう親切からなのか丁寧に聞いてみましょう。そして自分がその表現を使うかどうかは、自分で決めてみましょうね。

 商品としてなら当然紙媒体ルールにすべきだろうとか、色々ありますが……まずは趣味ですし。その趣味の中で何を選ぶのか、自分の作品ですから自分の為に決めてあげてください。


 最後に元も子もないことをひとつお話しておきますね。「読みたい要素さえあれば文体がなにであれ意識しない層もいる」ということです。

 もちろんそんな層ばかりではないですが、以前個人的にびっくりしたことをお話しておきます。


 お話相手の方は二次創作をされてました。漫画は普段から描いているものの、文章を書いてみたいとのことでお話を伺っていました。

 本当きほんの「き」でお話するようなことしか伝えられない人間でしたが、その際どのような文体が好きか好きな作品を教えていただいたんですね。雰囲気を言葉で教えてもらいましたが、好きな作品を見るのが一番てっとりばやいので。

 そうして面白いことがありました。二作拝見したんですが、片方は紙媒体のルールに準拠しながらも台詞前後と内容がすこし変わるときに空行をあけるパターン。片方は改行文頭あけをしないで空行過多のWEB形式特化型パターン。

 これら二つを書いてみたい雰囲気としてあげられたんですね。ちょっとびっくりしました。


 おそらく読み手では、「キャラクタが好き」「シチュエーションが好き」という要素が最大で、そこから読みだして「面白い」があればぐいぐい引っ張られるんだと思います。WEBと紙媒体の違いもお話しましたが、「言われれば違いますね!」と驚いたように言われたので、趣味の文章では特に、「どれだけ好きなものを書いて人と共有できるか」が強いのだと思います。

 形だけ綺麗に整えたとしても、物語がなければひきつけられない。逆に今一生懸命書いた文章が稚拙だったとしても、物語があれば人は気にせずぐいぐい読んでしまうことがあります。

 二次創作だから特殊だったという可能性もありますが、やはり根底の面白さ、自分の得意をどれだけ魅せるか、が一番かなと思っています。


 なのでお話しておいてあれなんですが、人がひっかかる要素を減らすのが体裁ではあるものの、物語の面白さを増やすものではありません。

 ルールが明確で分かりやすいからこそ人との違いが気になるかもしれませんが、そういう人からのひっかかりを減らすために取り入れることはあっても、そのことを理由でペンを置く必要もないです。

 趣味で楽しんでいるんです。書き上げることを優先してみてくださいね。


 ルールを知っていることは身を守る道具にはなるでしょう。もし気になったら、好きな作品を書く人の文章を観察したり、ルールについて基礎的なことを調べてみてください。


(2016/12/23)


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