【音羽のお気に入り】

「わぁ~、藍子ちゃんだ~」

 藍子を見た音羽は嬉しそうな笑みを浮かべて、いきなり背中から抱きついた。

「お、おはようございます、部長」

 それに対して藍子は戸惑ったような顔をしながらもとりあえず挨拶する。藍子は音羽の今、一番のお気に入りのなのだ。

「ん~、大きいのも良いけど~、手の平サイズも、これはこれでいいよね~」

「ぶ、部長……」

 そのまま音羽は、藍子の胸に手を伸ばすとさわさわと撫で始めた。藍子は恥ずかしそうに抵抗するが、本気で嫌がってるようには見えなかった。毎日のように触られているので、慣れっこになってしまったのだ。

「…………」

 しかし、羽音は面白くなかった。おもむろに手元にあった台本を丸める。それから……、

”パコーン!”

「いった~い!」

「ほら、みんな、待ってるから行くよ!」

 藍子を置いて、頭を押さえて痛がる音羽の腕を掴んで引きずるように部室を出る羽音だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る