第1ー1章~私達の生活~
「雅さん!」
琴南は雅に元気よく話しかける。
「どうしたの?」
雅が言うと琴南はふわりと笑って
「合唱、時間ですよ!」
そう、雅はこの有名大学、風条大学の大学1年生、合唱部に所属しているのだ。
琴南も勿論合唱部だ。
元はと言えば彼女が誘ってくれたのだ。
琴南は雅よりは断然成績は低い。
だが、とても綺麗で明るく元気で沢山の人が琴南を好いている。
雅はそんな琴南が大好きだったし、琴南は雅に一番懐いていた。
雅はいつも琴南を見ては私もこんなふうになりたいと願うばかりだった。
「いいよね。琴南はさ。」
部屋に向かう途中、雅はため息をつきながら呟いた。
「なんでですか?」
琴南は驚いたように雅を見る。
「琴南は綺麗だし、皆に好かれてるしさ。」
「好かれてるとかじゃないですよ。」
「え?」
雅は思わずマヌケな声を出した。
「知ってると思うけど、私ってこの大学の中ではかなり馬鹿なんですよ。」
「うん。」
「否定してくんないんですね。」
「ごめん。」
いいですよ、と琴南は言い、少し悲しそうに笑って、
「馬鹿だから、皆、下だと思って近ずいて来るんですよ。それだけです。」
違う。そんなんじゃない。
琴南は本当にいい人だから好かれるんだよ。
そう言おうと思ったが、言葉が出なくて雅は黙ってしまった。
でも、本当に琴南の悲しそうな顔も綺麗だと思った。
言っちゃいけないけど。
そして部屋に着く。
部屋の中にはすでに仲間がいた。
彼、彼女らも琴南を見ると嬉しそうに「琴南!」と笑った。
…私はそんなこと言われもしないのに。
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