魔闘拳士

八波草三郎

序詩

魔闘拳士の詩

其の者は魔法士にして拳士なり

西部一と謳われし美姫の傍らにあり

美姫に思慕を寄せし者多く、噂になりて多くが都に詰め寄せる

困りし姫は戯れにも、魔闘拳士倒せし者の妻にと宣する

美姫を妻にと望みし者各地より押し寄せるも、

剛腕の武芸者、名高き魔法士、その全てが魔闘拳士の前に膝を屈す


王の認めし誉れ高き聖騎士はその剣を届かせるに及ばず


王宮に務めし宮廷魔法士の魔法はその拳の前に消え失せる


美姫を見初めし王子、剣を取りて魔闘拳士に挑みしも地を舐める

諦めきれぬ王子は鍛えては幾たびも幾たびも挑む

その真摯なる姿に心打たれし美姫は王子の求婚にこたえる


慶事に沸き立つ都

しかし、そこへひたひたと攻め寄せし隣国の軍勢

その前に立ち塞がりしは魔闘拳士

彼の武威の前では如何なる強兵も敵う者なし


そして王子と美姫の婚儀に、祝花に彩られし都

重なる祝いの言葉をよそに、役目終えし英雄はその地を去る

いずことも知れず

いずことも知れず



宮廷詩人サンクリート 『魔闘拳士の詩』より抜粋

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