パンデミックのそのあとで
真賀田デニム
第1話 『パンデミックのそのあとで』
ZOウイルス――。
そのウイルスが
えーと、確か2年前?
ううん、違う、2年と20日前だ。
……ほぼ一緒だから訂正する必要なんてなかったね、はは。
まあ、その2年前を境に地球は大きく変わったのだけど、何が大きく変わったって言えばそれは人間だ。
私が聞いた話によれば、人間はほとんどゾンビになったみたい。
ゾンビってあのゾンビだよ。
動きがちょっと鈍くて顔色の悪い、あのゾンビ。
映画なんかを見ると、ゾンビっていうのは人を襲って食べたりするよね。
死んだ人間なのに、なんで食欲あるんだろー? なんていう疑問はさて置き、少なくとも私のそばにいるゾンビはそんなこと全然ないんだ。
“あの人達”は人間を襲わない。
それに、ちゃんと喜怒哀楽があって、なんだかとっても――。
「おーい、まほろーっ。なぁにやってんだ、早くこいよ」
遠くから鳴ちゃんが手を振っている。
あれ、いつの間にあんなところまで?
「何やってるのですか? まほろさん。見つけましたよー」
栞ちゃんも横で手を振っている。
え? 見つけたってもしかして――っ。
私はお花畑から目を離すと、二人の友達の元へ走り出す。
「はあ、はあ、み、見つけたって言ったよね? 本当に見つけたの? あれ」
そして小高い丘にいる友達のところにたどり着くと、息も切れ切れに聞いた。
「ああ、あったぜ。いきなり見つけて、あたいもびっくり」
「まほろさん、もっとわたくし達のほうへ」
私は招かれるように二人のとなりへと立つ。
そしてようやくそれを見ることができた。
晴天の下にでんと構えるそれは、紛れもなく私達の目的の建物――。
ショッピングモールだった。
「やったっ、あった! 本当にショッピングモールだっ」
私は笑みを浮かべて二人の顔を交互に見る。
鳴ちゃんも栞ちゃんも満面の笑みだった。
「へへ、やっぱりあたい達にはショッピングモールだよな」
「そうですね。だってわたくし達には彼らがいますから――」
二人が背後を見やる。
私も後ろを振り返った。
「おーい、あったよ、みんなもこっちおいでよー」
私は呼ぶ。彼らを。
ちゃんと喜怒哀楽があって、なんだかとっても人間らしい――。
でもやっぱり人間ではないゾンビさん達を。
◆第2話 『23人のお友達』へ続く。
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