番外編「空中都市誕生」
時は三世紀の半ば、とある島にひとつの国があった。
その名は邪馬台国。
かの国はかつて多くの部族が対立していたが、ある時現れた女王卑弥呼の元に統一された。
その後の邪馬台国は卑弥呼の崩御後に一時の混乱はあったものの、女王壱与が即位してからは皆平和に豊かに暮らしていた。
だが……。
「さあ、皆船で脱出して。時間がないわ!」
「ならば女王様も! あなたがいなければ新たに国を作っても立ち行きません!」
「ありがとう……でも私はこの危機を直前まで察知できなかった。もっと早くに知っていればこの力であれを防げたのに」
「あの島はもうすぐ大津波に飲み込まれるわ。でも誰も逃げようとしない。何故?」
「あの女王様は防げなかった責任を感じてんだな。そして国民はそんな女王に殉じようとしてるんだよ。……違う所でも同じような事が起こってるようだ。よし本よ、こうしようぜ」
「え、でもうまく行くかしら?」
「俺達ならできるさ。さ、いくぞ」
「ええ、わかったわ」
「な、何だこの揺れは!?」
「い、いったい?」
「も、申し上げます! 島が……浮上しています!」
「ええ!?」
邪馬台国は謎の力で浮上し、やがて似たような島と合わさってひとつの巨大な島と化した。
「こ、これはどういう事?」
女王達は何が起こったのか理解できずにいると、そこに武装した集団がやってきた。
よく見るとそれは人間だけでなく異形の生物もいた。
「な、な?」
「あなた達はいったい? 風体からして高貴な方かと察しますが?」
驚いている彼女達に話しかけてきたのは、涼やかな顔立ちの青年だった。
「あ、わ、私は邪馬台国の女王トヨと申します。あなたは?」
「邪馬台国の女王? どういう事だ、邪馬台国の王はこの私、カムイだが」
その青年、カムイは訝しげに言った。
「え、それはいったいどういう事?」
「とにかくあなた達の事を聞かせてはもらえないだろうか? あなた達は怪しい者には見えないし」
カムイにそう言われたトヨはそれまでの経緯を話した。
「そうでしたか……私達の国も大津波に飲み込まれる寸前だったが、突然島が浮上し、そして何処からともなく現れた島、あなた達が今いる場所と合わさって……どういう事だ?」
するとトヨの側にいた老臣が語りだした。
「この世には我々の住む世界と同じ世界がもう一つあって、そこでは似て非なる歴史が刻まれているという伝説があります。おそらく我々は島ごとその別世界に来てしまい、この世界の邪馬台国と合わさったのでは? そしてこの世界では女王トヨ様ではなくカムイ様が王という事でしょう」
「ご老体の話、私も聞いたことがあるがお伽話だと思っていた。だが本当の事だったのだな。今こうして島があるのだしな」
「でも何故両方の島がこの大空で一つに?」
「……もしや神のご意思かもしれんな。二つの国が一つになって新たな国づくりを始めよという。よし、トヨ様、我々は皆さんを歓迎しますよ」
「カムイ様……ありがとうございます」
その後二つの邪馬台国は一つになり、それぞれの民が力を合わせて国を栄えさせていった。
トヨ達は初めは異形の者、いわゆる魔族や獣人族や竜族などとはなかなか馴染めずにいたが、時が経つにつれてだんだんと慣れていき、仲良く暮らせるようになった。
そしていつしかカムイとトヨは恋仲になり、やがて夫婦となり新たな国、新生邪馬台国の王と王妃となった。
そしてカムイはトヨとの間に生まれた長女が長じてから王位を譲り、これ以降邪馬台国の王は女性が即位し代々「ヒミコ」を名乗るものと定めた。
それはトヨから女王卑弥呼の時代の事を聞き、恒久の平和な国を作るにはと考えたからである。
やがて新生邪馬台国は皆が幸せに暮らせる理想の楽園となった。
そして千数百年の時が過ぎ、現代の女王ヒミコは邪馬台国だけでなく全世界が平和で皆が仲良く暮らせる世を作る為に力を尽くす事になるのである。
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