ぽつりぽつりと
犬養
稲穂
彼女は強い風に煽られて、右へ左へなびく稲穂。
私は彼女がひどく恐ろしい。
いっさい自分の意志を示さず、綺麗な音を立てて、ただ揺れている。
私は彼女がひどく恐ろしい。
彼女の瞳はがらんどう。
私は端から映っちゃいない。
それでも息を吹きかければ、私の風になびくだけ。
私は怖い。
意志を持たないあの子が怖い。
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