きみのはなし

 ぼくは昔から、数学が苦手だった。決まった答えに向かって、できる限り短いルートで走り抜ける。嫌いだった。

 始点と終点が決まっていて、そこまでの道のりを計画するよりは、行先も決めずに歩き始めて、途中で目的を見つける方が好きだった。共感してくれる友達も少なくて、みんなとは違う道を歩くことも多いけれど。

 もちろん、ぼくにも好きなことはある。それは、何かをつくること。絵を描いたり、音を奏でたり、文字を紡いだり。周りの評価は気にしない。他人の基準で測ってもらう事は好きじゃない。なんてひねくれているんだろう。けれど褒められるのは嫌な気分じゃない。少しわがままかな。

 

 ぼくの中にある想いを、かたちのない想いを、誰かに伝えるために、つくる。ルールはない。想ったように、感じたように、紡いでいく。今もこうして。


 これは、ぼくのはなし。

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