弐百四拾五振目 現代刀の魅力
刀剣の捉え方は人それぞれですが、現代刀にを酷く否定する人が偶にいる。
それでも勝手にやってくれるなら構わないが、私が古刀中心であるため仲間みたいな感じで同意を求めてくるのが厄介。
私は現代刀も(あまり買ってはないけど)好きなので、そういうのは同意しない。
実際、新刀でも古刀でも現代刀でも素晴らしい品は素晴らしい。
現代刀・新刀(新々刀もここに含むとして)・古刀はモノが違う。このモノというものが、何と言いましょう? 絵画などで言えば写実主義・浪漫主義・古典主義のような感じで、ジャンルが違いという意味でモノが違う。
ゴッホとピカソを比較して片方が優れていると主張し片方を否定する人がいたら、そんなの馬鹿馬鹿しいと誰だって思う。しかし何故かかしらん刀剣については当たり前のように行われる。
そういった人は、主張するのが好きなだけだったり、自分の意見に他人を従えるのが好きなだけであって、刀剣が好きじゃないのだと思う。
そうならぬよう我が身を振り返り気を付けたい。
地鉄が~などと言う人もいるけれど、たとえば岐阜県関の伝承館にある二十五代兼房の地鉄など私は何度でも見に行きたいぐらい好きであるし、その他の方々の地鉄だって見応えがあって好き。
また現代刀でも映りが出ている作もある(古刀の映りは研ぎ減りの中で内部にあった焼きが現出している感じもありますし、そもそも映りというものも種々様々なので、現代刀の映りが即座に古刀の映りと同一とは思ってませんが)。
現代刀の醍醐味は、その健全性。
そして、さらなる醍醐味は注文打ちという点ではないかと。
この注文打ちする場合で一つ気を付けたい点。
注文の仕方とかではないです。そういうのと違いまして……もっと即物的!なお金に関する話。
現代刀にしてもいずれか手放す事になるという点です。それが十年後か二十年後か、はたまた百年後の子孫かは不明ですが、どこかで手放すわけです。その時に困らないように、といった意味での注意点。
それは!
為銘などは止めましょう、そんだけ。
「為○○氏」、「○○家重代」、「○○記念」といったものです。こういったものは頼む時は良いですね。自分の為に世界で一つの刀剣が出来た、嬉しい! と思うわけです。
しかし冷静になって、周囲からの視点を考えましょうよ。
つまり「為鈴木氏」、「鈴木家重代」、「結婚記念」、「銀婚記念」といった銘の品があったら、欲しいですか? 普通は躊躇いますね。
ただし新刀・新々刀で「〇〇左衛門所持」などは別に誰も気にしませんね。しかしそれは、現代において「〇〇左衛門」という名称が身近にないから気にしないだけです。
あと二百年後ぐらいに「鈴木」という名称が希少になって、たとえば一般的な名前が「スズキ」とか「SUZUKI」とかになって、漢字の名前が物凄くレアになったら喜ばれるかもしれませんが。
なんにせよ、年紀と銘だけの方が良い。
まあ、ぶっちゃけ言えば古刀であれば6割7割で売れますが。現代刀は注文打ちで高いお金を払っても、手放す時はかなり下がります。その意味では、あまり気にする必要は無いかも。
でも、制作者が後に無鑑査になったり人間国宝になる可能性もある。そうなれば100万で作って貰った刀が、その時には400万ぐらいの価値になり……しかし為銘があるので全く値段がつかなかったり、それどころか買い取っても貰えない可能性だってあるわけで。
実際、誰もが欲しがる某著名無鑑査の品が為銘であるがために、全く売れていない現実を見ると本当に為銘は止めた方がいいなぁと思う。
そして!
写し物は少し特殊になる。
それで「倣 ○○」といった具合に銘されて出来が良ければ素晴らしい。
○○写しと刀匠自身が宣言しているので証拠になりますし、百年二百年、下手すれば千年先まで銘として残るので、刀匠だって迂闊な品には○○写しなどと銘は入れない。自信を持って宣言できるだけの品であるという証拠となる。
なので、銘に「○○写しと入れてください」と注文すると良いでしょうが……その分だけお高くなるかも。
その意味で現代刀を買う場合は、銘に「倣 ○○」などとあるのが良い。なくても誰が見ても明らかなものや、展覧会などで出品したものであれば更に良し。
ちなみに。
現代刀などの場合は勝手に「○○写し」として売るセコい手があるので注意。流石に存命刀匠の作ではやりませんけど、物故刀匠の作などは注意しましょう。こういう店は古刀でも勝手に大名家伝来にしてますがねぇ……。
さらに写し物を選ぶ場合の注意点。
できれば著名作の写しが良く、正宗写しとか、吉光写しとか、国光写しとか、景光写しとか、兼光写しとか、来国俊写しとか、そういった具合。古刀で人気のある作と連動しているので分かり易い。
一番人気は山鳥毛写しです。
山鳥毛写しは人気がある。
山鳥毛写しは直ぐ売れる。
山鳥毛写しは高く売れる。
その為、多くの刀鍛冶が頑張って山鳥毛写しに挑戦している。
ただし出来る人もいれば、そうでない人もいるし、出来ても上手かどうかはまた別問題なので、結局は出来をよく見るしかないのですが。
それから新作名刀展など、展示物を参考にする場合の注意。
ああいった展覧会で上位入賞者の腕が良いのは間違いない事ですが、しかし出品作と普通作で出来が違う事だけは頭に置きたい。
作り手は「どの品も変わらず、誠心誠意真心込め作ってる!」とは言いますが、実際のところ出品作は気合いが違います、気合いが。白鞘も研ぎも鎺も何もかも最高の状態で揃っているわけです。
展示物をみて憧れて注文して手元に届いて、微妙にコレジャナイ感が漂うと哀しい気持ちになるわけです。
なんにせよ、もし注文打ちをするなら直接会いに行って品を幾つか見せて貰った方がいいです。その辺りは古刀を買うのと一緒。あと違うとすれば、やっぱり刀鍛冶との相性。話してみて合う合わない、人間性とか好悪の感情。そういうものも、結局は刀そのものにも反映されてきますよ。
注文打ちはさておき、普通に現代刀を買うのは恐い。
古刀なんかですと重要刀剣、特別重要刀剣というものがあるので、ある程度は値段が縛られるし根拠が分かる。しかし現代刀の場合は物故刀匠でも特保とかぐらいなわけですし……。
だから出来の差が判別しがたい。
そこを突いて高い店は高く売るし、普通の店は普通に売る。その差がヒジョーに顕著。逆に言えば現代刀の値段を見れば、その店の売り方がわかる。
ますます即物的な意見になりますが。
現代刀で人気なのは人間国宝になった方々。それに続いて、吉原一門で義人氏・義一氏・國家氏、河内国平氏、大野義光氏といった辺り、そして無鑑査の方々も人気。作刀を止めていたり亡くなられていたりする方の作などは、値が上がる事はあっても下がることはない。
この辺りを買っておけば……百年後には倍額になっていそう。
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