ヲ 色は匂えど散りぬるを
第74話 脆弱な契り
「――……んぅ……ッハ!?」
ここは
自分って……
機体も
「……リトラ……そうだリトラ!」
そうだ。
異世界侵攻が起きて、そのあと世界が焼き滅ぼされたんだ。その際、リトラもあの場にいた。何かで護られてるようだったが、何処かに飛ばされたんだ。
今も行方不明だったら?
命が無事でも、怪我とかで後遺症は残ってないか?
「リトラ! リトラいないのか!」
まず先に、リトラの部屋へ。
いない。
化粧棚が目を惹く。
がさつな自分と違って、アイツはしっかり女やってたな。
「……」
時計を見てみると、朝七時近く。
飯でも食ってるのか?
って事はダイニングだな。一階に行こう。
「穏やかな夢だね、信」
「……は?」
テーブルに……亜紀?
何でアンタがいるんだ。
リトラどころか、誰もいないのは何でだよ。
「率直に言うね。ここは貴方の夢の中、貴方はまだ眠ってる状態なの」
「どういうこったよ。意識ははっきりしてるぞ」
所謂精神世界とやらか、ここは。
"神様"に眠らされたのか?
「それ」
「それって何」
「それだから起こせないの。"神様"だなんて大層な様に思われちゃ、あの子にとっても重荷じゃない」
「……アイツは、"神様"じゃ……ないのか……?」
あんな人間離れした精神構造の奴、他に何て呼べば良いんだ。
化物なんて言葉じゃ足りねぇぞ。
「止めて」
容赦が無さすぎる。
普通だったらもうちょっと考えるだろ。
打算的とも言える思考は少なからずするはずだ。
アイツは、人間じゃぁ――。
「信。それ以上考えると、
「……」
「理解出来た?」
「あぁ……頭では、だが……」
多分、自分があそこで狂乱状態に陥ったのはコイツら
アイツが自分で撒いた罠じゃなかったんだな。
そうなると、明らかに、
そう言えば、前は
「……恐がらせた事は、ごめんなさい。忘却は興味を惹くから、恐怖させて自分から離れさせる方が確実だったの」
「その理屈は分かる。だが、何故……いや、止そう」
「うん。そうしてくれると嬉しい」
自分は……必要以上にアイツに近付き過ぎたか。
触れちゃいけないとこまで来ちまったんだな。
「あの子は今まで通りを望んでると思うよ。皆と過ごす日々を。だから貴方も……昨日の事は、全部夢だと思って、ね?」
「無茶ぶりにも程があるぜ……」
「……まぁ、無理なお願いなのは分かってる。けど、こうしか言えない」
お父さんですら大昔に蒼の粛清やら何やらで人間を押さえ付けるのが精一杯だったしな。今は紅の粛清で躍起になってるようだが。
「分かった。分かったから。いつも通りで良いんだろ」
「……ありがと。私も出来る限りの協力はするから、あの子と一緒にいてあげて。貴方の事、結構気に入ってるみたいだから」
「んだそれ」
「理解ある彼女№1的な位置付けらしいよ」
「……は?」
あ、の、馬鹿、彼女出来た癖してまだそんな事言ってんのか。
刺されるぞ、槍で。
「最低だよねー。……ん~まぁ~何。そんなわけだから、貴方に見てて欲しいの。あの子、まだまだ子供だから」
「アンタが面倒見りゃ良いじゃねぇか」
「ダーメ。あの子、私の事信用しなくなっちゃったし……今更親面しても無理だーって……そりゃさ、私だって色々迷惑掛けちゃったけどさ。『そんな幼女姿の母ちゃんに甘えても癒されない』なんて言われちゃったら自信無くすよ」
世界の守護者とも言える偉大な御仁が、それぐらいでいじけるんじゃねぇよ……。
「……まぁ、何だ。その辺りも良く分かった。自分がアイツの姉弟にでもなりゃぁ良いんだろ」
「……私の息子を、どうか、お願いします」
子が卑怯なら親も卑怯だな。
「OK。その依頼、引き受けた」
「感謝するよ、信。それじゃ、起こすね」
「ってか待て。夢ってお前どうやって自分の夢に――」
…………
………
……
…
結局、亜紀がどうやって夢に入って来たかは分からなかった。
でも、それはもうどうでも良かった。
「……サリー……?」
リトラの無事な姿が見れた。
「……悪い、寝てた」
「寝てた、じゃないよぉお!! おはよぉサリー!!!」
今は……それで、十分。
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