大自然の摂理~異世界海底奇譚~②

 ハマチは逃げられた。さらば、マグロ。尊い犠牲。決して無駄にしない。

 ハマチは考えた。修行ビックするしかない。修行しよう。


 ***


 ハマチは決意の炎に焼かれていた。肉食界の頂点に立とうとしていた。

 すべての原因は、そう、サメである。


 ならば、サメに勝てば、肉食界の頂点に立てる。ハマチは天才であった。

 その考えは正しくもあり、間違ってもいた。


 ハマチは探した。心の友を。求めていた。師匠を。

 手に入れたかった。最強を。


 そんなハマチの元にある人物が現れた。

 カメだった。のちの師匠である。


「稽古をつけてくれ!」

 ハマチは叫んだ。腹の底から精一杯叫んだ。がおーー。


「もう教える事は何もない」

 こうして、師匠の元でハマチは修業を始めた。

 修行は激しさを増した。


「せいや! せいや! せいや!」

「ゆべし! マグロ! おいしい!」

 サメと奇妙な友情が生まれた。美しいラブロマンスである。


「修行」

 ハマチは叫んだ。腹の底から精一杯叫んだ。にぃわぁー!

「よかろう」

 ハマチの修行は幕を閉じた。だが、ハマチは思っていた。

 これではまだ足りない。憎きサメ共を殲滅できない、と。


 ハマチは探した。心の友を。求めていた。師匠を。

 手に入れたかった。伝説を。


 そんなハマチの元にある魚が現れた。

 イワシだった。のちの師匠である。


「修行を教えてくれ! 覚悟なら出来ている!」

 ハマチは普通に言った。努めて冷静に。クールだった。

 キンキンに冷えていた。


「ーーついてこれるか。俺の突然の死デットリー・スピードに」

 世界の魚たちは困り事があると、イワシに相談する習性がある。

 これは私たちの世界でも偶発的に起きる。

 しかし、イワシが必ず答えてくれるとは限らない。

 これは私たちの世界では確認されていない。異質。


 ハマチの修行は困難を極めた。


 ハマチは丸太を殴る。殴る。殴り続けた。

 強靭。圧倒的なまでのパワー。力はパワー。

 

 ハマチは山を削った。身体は最強を求めていた。

 これにはスサノオもにっこり。


 ハマチは岩壁を笑った。おかしを食べた。また笑った。おいしい。

 これには広島出身の私もにっこり。


 ハマチは、ブリに成長しました。

 ハマチは成長魚だったのです。すごい。


 もうおわかりでしょう。

 そう、これはハマチがブリになり、世界を救う壮大な茶番劇。

 

 お寿司が食べたい。お寿司の出前が呼んだ。

 お寿司の出前が来た。お寿司を食べた。

 お寿司おいしい。とてもおいしい。


 修行を終えるブリ。戦いの日々へ、戻る。


 ここは異世界にある海底学園。

 一匹のサケが遊覧飛行をしていました。


 ここは異世界のどこかにあると言われる、海底学園。

 そう、ここは海底であった。未知の世界。

 誰も見たことのない未知の世界、すなわち異世界アトランティス


 すなわち、平和の世界。大変平和。

 お釈迦様もこれにはにっこり微笑んでいらっしゃる。 


 だが、サケ、危機。生死を分かつ、最大の危機。

 サメに見つかる。大ピンチ。恐ろしい出来事。


 サメは餓えている。何故なら野生の勘が鈍るからだ。鈍ってしまうからだ。


 サメの大群。圧倒的な戦力差。

 勝てない。サケ、諦めの境地。


 サケ、とてもあぶないね。


 そこへブリが現れる。さすが俺たちのブリ。

 サケの危機に現れる。超常現象。自然界では普通のこと。

 テレパーシ、そう、虫の知らせであった。これは虫界では自然なこと。

 

「ブリブリブリブリブリブリブリブリ!」

 ブリの突然の鳴き声! 異世界では常識! 異世界だから、何でも許される!


「ブリィィィィィィィ!」

 サメ、喘ぐ! 全力で喘ぐ! 異世界では非常識! 許されない!

 

 瞬く間にビンタされるサメ! ブリの恐るべし戦闘能力! 恐ろしい!

 尾びれのスナップを使った往復ビンタ! パチンッ! パチンッ!

 ひじ打ち! ブリの全力のひじ打ちに、サメは痛くて悶えていた!

 サメは震えていた! とても震える! 寿司食べたくて、震える!


 サメは泣いていた。失恋だった。哀しみのラブロマンス。惨酷。

 これにはポセイドンも大泣きであった。


「お前たちのリーダーはどこだ? 答えろ!」

「うわあああああああああああああああああああ」

「いやあああああああああああああああああああ」

 蹂躙! マグロの仇! サメ探しに奔走する!


「サメはどこだッ!」

「サメはあの山の上にいます」


 サメが指を指した方向。あ、あれは!? まさか!? サメ!?

 ついに二人は出会ってしまった。禁断の花園へ来てしまった。運命の再開であった。

 

 サメVSブリ、肉食同士の戦いの火ぶたが切って落とされそうであった。


 ***


 読者の皆様、想像してください。サメが山にいます。何故、山にいるのでしょう。

 サメが山の上にいるのは優越感に浸るためです。高みの見物です。高いところが好きなのです。

 ほら、あの憎たらしい顔を見てごらんなさい。まるで幼い少年時代のよう。

 

                                by 俺


 ***


 サメVSブリ、肉食同士の戦いの火ぶたが切って落とされそうであった。

 のちに、魚群大戦争の始まりだと言われたこの戦いは、私たちの世界でも起こる可能性があるかもしれない。ないかもしれない。なかった。あるはずがなかった。ない。


 でも戦った。ブリは戦った。サメと戦った。

 でも、サメ強い。めっちゃ強い。


 何故なら、サメはチート使い。ブリ、危うし。


 サメはアイテムボックスから包丁を出します。

 これは彼のチート能力のひとつです。きっと不正なコードを使ったんですね。

 T○Sさんが泣いています。号泣。激しく号泣。


 このままでは、ブリ、三枚おろしにされてしまう!


 勝てるのか? ブリは勝てるのか?

 勝てる! 一分、一秒!

 俺たちがこうしている間にも、ブリは成長している!


 ショウガパワーだった。イワシ師匠からもらったもの。

 それは、ショウガパワーだった!


 ブリの渾身のひじ打ち! 痛い! ビンタ! 辛い!

 サメ、大泣き! チート能力も泣いていた! ワサビが強すぎたのだ!


 そんな混沌交わる社会に突然、師匠が現れた! イワシ師匠であった。

 師匠は言った。浜辺に上がるとよく死んでしまう、あの師匠が言ったのだ。

「こんなことをしても あらそいは かなしみしか うまない」


「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 ブリは絶望した。人生で初めて絶望した。トイレで紙がない時よりも絶望した。争いは何も生み出さない。悲しい。


「ああ、そうだ。こんなことをするべきじゃなかった。俺は」

「弱肉強食だってだけで戦う必要はないじゃないか食べるものが違うだけで、同じ海の生き物じゃないか」

 熱い友情! 感動! お釈迦様もこれには満面の笑みに違いない!


 サメとブリ、突如彼らの身体に変化が起こった。融合だ合体だ

 彼らの友情が世界を変えた! 友情パワー、おそるべし!


 皆が平和で楽しめる世界、ヒップホップ育ちのヒップホッパー、『鮫&鰤』誕生の瞬間であった。

 

 悪い奴は大体友達、良い奴はみんな友達、……


 世界が熱狂の渦になった。 ウッドワー! かっこいい! 抱いて!


 そして、彼らは伝説となった。


「という世界があなたの転生先になります」

 我らが主人公森乃山隼もりのやま しゅんは、自身を神と名乗るロングヘアーのおっさんからそう告げられ、頭を抱えた。


 絶望していたのだ。

 自分が死んでしまった事よりも。

 この転生したくもない世界に、なぜ自分は転生しなければなれない事に。

 生前、きっと自分はとんでもなく悪い奴だったのだろう、と彼は考えていた。


「あ、嫌ですか? チェンジします?」

「え、できるんですか?」

「ええ。できます」


 できたようです。森乃山君、良かったね!

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