拝啓、

「私は惨めじゃない」


 私は現在、ごくごく普通の女子高校生!

 成績も、運動も、性格も、容姿すら平凡の、普通の女子高生!


 私には、自慢の彼氏がいます!

「なんで俺の言う事を聞けないんだ?」といつも怒りっぽい彼!

 気に食わない事があるとすぐに私をグーで殴るの!


 顔以外を狙って。力の限り、一発、一発。

「ごめんなさい」と言っても、やめてくれない。

 おかげで顔以外は、痣だらけ。


 でも、でも、大丈夫!

 彼は優しい人なの! 自己表現が苦手なだけなの!

 こうして殴るのも、彼なりの愛情表現のひとつなの!


「私は惨めじゃない」


 特に美人でもない、平凡な私のことを、誰も見てくれませんでした。

 ごくごく普通の私を、誰も評価してくれませんでした。


 でも、彼だけは、私を見てくれました。

 彼だけが私を評価してくれました。

「愛している」と言ってくれました。

「好きだ」とも言ってくれました。


 本当に、うれしかった。


「私は惨めじゃない」


 最近、彼に友達が出来たそうです!

 クラスメイトの美人ちゃんです! とてもかわいい女の子です!


 わかってるよ! だって、彼は!

 私の事が好きなんだもの。


「私は惨めじゃない」


 秋です。文化祭の秋です。

 この時期、私には悩みがありました。

 彼のことです。


 最近、彼の付き合いが悪くなりました。

「文化祭の実行委員でいっしょになったんだよ」と彼は言います。

 大丈夫、分かっているよ! 忙しいもんね!


 美人ちゃんと、一緒に、帰っていることも。

 美人ちゃんの家に、いった事も。

 美人ちゃんと、キスしたことも。


 でも、大丈夫。私の元に帰ってくるもんね!

 信じているからね! 私!


「私は惨めじゃない」


 どうやら彼は、他の人が好きのようです。

「ずっと、一緒だよ……」って言ってくれたのに。

 もう、彼を愛することに、疲れました。


「私が惨めじゃない」


 真っ黒い海が空一面を覆う時間。

 彼は花になりました。真っ赤な花になりました。

 綺麗に、本当にきれいに咲きました。

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