人は100文字前後で短編小説は書けるか?

 人は100文字前後で短編小説は書けるのか?

 ふと、頭によぎったこのフレーズ。はたして本当に書けるのか。


 私は興味本位でやってみたが、非常に難しい。

 どう難しいかというと、まず起承転結が出来ないのだ。

 そして、キャラクターが出てこない。主要な人物が出てこないのだ。

 一応完成したものを見てみたが、これは小説といえるのだろうか。


「というわけで、猫さんに相談したのです」

 ニャー、と猫さんはため息をついた。


「これ何? 詩?」

 うちの犬は呆れた顔でこちらをうかがいながら答えた。

 そこまで酷いだろうか。一応、話はできていると思っていたのだが。


「あのね、小説って想像力を用いた、人間の経験が描かれた虚構の物語なの。これは、経験も何もないじゃない」

 猫さんは俺を諭すように言う。経験が描かれていなければ、小説ではないと?


「じゃあ、俺が書いてきた物語はなんなんだ?」

「だから、詩じゃない?」と犬は言う。


「いや、詩は感動を伝えるものだから。これは、そうね……日記かな」

「猫さん、俺は日記を書いたつもりはないが?」


 正直、俺の作品がここまで言われるとは思ってはいなかった。そこまで酷い物語だろうか。自分の才能のなさに、少し自信を無くす。


「やはり、百文字で小説を書くのは無理なのか……」

「無理だと思うからできないのです。こなれてくれば、たぶん、きっと、おそらくうまくなると思いますよ」

 猫さんはしっぽを振りながら、精一杯慰めてくれた。


“今日は卵焼きを食べた。とてもおいしかった。俺は物語を考えた。犬と猫が喋りだす物語だ。もしも今、この子たちが俺の作品を見たらどう反応してくれるのだろうか。きっとこうしてアドバイスしてくれるのではないかと思っている。”

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