ノベルチェッカー

 文章を書く際は、多少の誤字脱字はつきものである。

 小説であれば、作品を作り上げることが大事なため、

 多少の問題点は気にしない方が良いことは明確である。


 しかし、多くのものが推敲に推敲を重ねて、完成した文章から

 ビスケットのかけらのようにぽろぽろと出てくる様に、わたしは歯に何かが挟まっているような錯覚になる。

 見ている側からしてもさぞ歯がゆいことであろう。


 私の作品はまさにそうであった。

 どこかが文字が誤っていたり、抜けていたりすることが多々あり、酷い時は直した箇所からも出てくる始末。

 どんな気を付けていても、出てきてしまう誤字脱字に、私はほとほと困っていた。


 そんな私のところに、とある研究所の科学者である古い友人が、興味深い話を持ちかけてきた。

 聞くところによると、彼は校閲や翻訳で活躍できるロボットを独自で製造していたそうだが、正常に動作しているか分からず、途方に暮れていたそうだ。

 たまたま私のことを思い出し、数か月間の間、預かってほしいとのことであった。


 ちょうどそんなロボットが欲しかった私は二つの言葉で返事をした。


 後日、彼の作ったロボットが届いた。

 人の姿をしたかわいらしいロボットであった。


***


 ある日、科学者は預かってもらっていたロボットを回収するため、古い友人の元に訪れた。

「その後はどうだい? あのロボットは使えたか?」

「ああ。とても助かったよ。だが、やはりあのロボットには改良の余地があるようだ」と、古い友人は答えた。

「何か問題があったのか?」

「つい届いた日のことだ。俺の原稿をロボットは受け取ると、誤字脱字を瞬く間に修正してくれたが……」

 そういうと彼は、自身が書いた原稿を科学者に見せた。


“大声で声を出して叫んだ”

“イサダは激しく激怒した”


「このように、意味が重複してしまう」

 古い友人はひどく落胆した様子であった。このおかげで彼は更に修正する時間が多くなってしまったからだ。

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