第18話 暗闇の君
気がつくと剣斗は、ゴブリンの死骸の山に座っていた。
頬には血がべっとりと付いていて、周囲には血生臭さが充満していた。
大剣はところどころが刃こぼれしており、折れる寸前まで磨耗している。
意識が途切れそうになるが、歯をくいしばることで剣斗はすんでのところで止まった。
「こいよ……豚面ども……」
立ち上がりながらふりかえるとは、そこには剣斗よりも一回り大きな体躯を持った獣たちが舌舐めずりをして待っていた。
それを見た剣斗は、顔を覆っていた血まみれの包帯を剥ぎ、フードを外した。
「一匹残らず挽肉にしてやる‼︎」
投げやりに剣斗が吠えると、オークの群れが一斉に飛びかかり、その手に持った棍棒を叩きつけようと両手を振りかぶった。
それを見た剣斗は、片手に持っていた大剣を両手に持ち直し、ガラ空きになったビールッパラに叩き込んだ。
五体のオークが二つに分かれていき、血が噴水のように吹き出し、あたり一面が赤く染まっていった。
それを見て恐れを覚えたのか、オークたちは距離をとってお互いに目配せをし合っている。
「ブヒブヒうるせえな……」
イラつきを隠さない剣斗は、大剣を握って駆け出す。
その濁った瞳に睨まれたオークはデタラメには棍棒を振り回し始めたが、そんなものは気休めにもならなかった。
豆腐のように断ち切られた棍棒が宙を舞い、返す刃がオークを両断していく。
だが、それが決め手となってしまったのか、大剣に大きくヒビが入っていき、半ばから大きな音を立てて砕け散っていった。
散らばった破片が頬を掠め、顔を隠していた包帯の結び目が外れる。それを気にも止めず、剣斗は折れた刃を後ろにいたオークの首へと突き刺して抉った。
息を切らしながら、地面に転がった刃を拾い上げる。
霞む意識の中で、街の方へと逃げ込もうとしているオークを捉え、刃をあらん限りの力で投げつけた。
それは真っ直飛んでいき、オークの頭蓋を二つに割った。
「これで……終わった……」
満身創痍。
立ち上がることすら億劫な剣斗は、血だまりの中に仰向けになって倒れこむ。
身体は動かず、武具も失った。
街に戻れば、きっと自分は再び奴らに殺人犯として吊るされるだろう。
だが、ここで死んでしまえれば。
力尽きたその先に、安息があるのならば、もう、それでいい。
それなのに。
「やっと、見つけた」
なぜ、この茜色の光は自分を手放してくれないのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます