楽しいお昼休み



——キーンコーン カーンコン



お昼休みを告げるチャイム。

机の上に置かれた教科書を手早くしまい昼食の準備をする。



「水瀬さん達はまた裏庭で食べるの?」

「うん!その予定だよ」



初めはどこでお昼を食べるか悩んでいたわたし達も今では裏庭という日差しの心地いい絶好のスポットを見つけた。

それからは雨でない限り、その裏庭で昼食をとることが定番となっていた。



「俺らコンビニで何か買って行くから先に食べててね」

「うん、わかった!先に行ってるね」



三上くんと別れると女の子三人で裏庭に向かった。



「恭弥は昔から本当にだらしなくて…」

「でも幼馴染という存在は羨ましい」

「本当に仲良しだね」



幼馴染かぁ。懐かしい記憶が蘇る。



『おれぜったいハルとけっこんする〜』

『だめだ!おまえらにはまだはえー』

『ふふ、——くん、やくそく!』

『だぁ!おれはみとめねぇからな!』



幼い頃の記憶はなんとも可愛らしい。

思い出に浸っていると、



「そういえば、二人は今日放課後委員会あるんだっけ?」



美久ちゃんが思い出したかのように質問をしてきた。わたしは図書委員になり、郁ちゃんはクラス委員を務める。



「わたしは当番だから図書館で受付やらなきゃだよ」

「私は確か今日は集まりもない。美久は部活か?」

「そう!新入生だけど次期エース目指して頑張っていかなきゃ!」



美久ちゃんがふんっと鼻を鳴らすと、ちょうどコンビニに行っていた二人が帰ってきた。



「オレも頑張らなきゃなー。負けてられねーし」

「バスケ部張り切ってるわよね」

「新入生でのレギュラー争いがなー。

二年の翔先輩がめちゃくちゃ強くて毎日シゴかれてるよ」

「へー、そんな人いるの?こっちのコートからだと気がつかなかったわ」



神宮寺くんと美久ちゃんの会話から、やはり運動部は厳しい世界だと痛感する。



「それに姉妹校の星月学園せいげつがくえんはサッカー部に今回強いやつが入ったみたいで盛り上がってんだってよ」

「俺は委員会あるからなんだかみんなバラバラだね」



神宮寺くんはバスケ部に加入しており、三上くんは保健委員になった。



「委員会どうなんだよ」

「んー、なんかキラキラした女の子がいるんだけどその子が可愛いってもう一人の委員の子が言ってた。名前は…忘れちゃったけど」

「委員関係ねーじゃん。それにその様子だと三上は興味なくて流したんだろ」



神宮寺くんと三上くんの話が聞こえてくるが何だか男の子って感じがする。



「にしてもこの学校の規模がすげー」

「あたしもついていけないわ」



神宮寺くんと美久ちゃんは二人してため息をついているが、確かにこの学園はスケールが違う。

学園行事も豊富で今からたくさんの楽しみがある。



「皆と仲良くなれてよかった…」



つい心の声が出ると、一斉に皆が振り返りわたしを見てニコリと笑った。



「それはあたし達も同じよ」

「会えてよかった…と思う」

「水瀬ってたまに恥ずかしいことさらっと言うよな…」

「はは、本当だよ」



こんなに温かな人達に囲まれて過ごすお昼休みはあっという間に過ぎていった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る