学園祭編⑦ 間接キスなら、学校でも問題ない。

 学園祭の出し物、由理ゆーり達のクラスのメイド喫茶にて。


「そっかぁ、バイト仲間ね。そういえば、夏のプール掃除にも見学に来てたよね」


 クラスメート達へ、由理が簡単に、美緒奈みおなとリズを紹介。

 ただしメイド喫茶でバイトしてることは秘密で。


 由理のクラスメート達へ、美緒奈が愛想を振りまく。


「えへへ。由理お姉さまには、お世話になってますぅ♪」


「いつまでネコかぶってんのよ、あんたは」


 ともあれ美緒奈、由理にもっとご奉仕してほしい様子。


「お姉さま、オムレツ食べさせてくださいな♪ 口移しでもいいですよ♪」


「するか学校で!?」


 口移しはしないけど、あーん♪はしてあげることにした。


「ほら、美緒奈お嬢様、お口を開けて? はい、あーん」


「あーん♪」


 オムレツ乗せたスプーンを、由理の指が美緒奈の口元へ。


「かぷっ♪ ちゅぱちゅぱ、ぺろぉ……♪」


 美味しそうにスプーンの先ごと、ふわふわ卵をしゃぶる美緒奈の表情に……。


(う、なんでエロい舐め方すんのよ)


 由理、ちょっぴりドキッとした。


「由理、私も、私も♪」


 日本語分からない演技に飽きたらしいリズ、美緒奈の隣に座って、可愛らしくにこり。


「リズさんまで、子供っぽいんだから。ほら、あーん?」


「あーん♪」


 そのまま同じスプーンにオムレツをすくって、由理はリズの唇へ……。

 美緒奈が赤くなる。


「……そのスプーン。あたしが舐めたやつ」


「……あ」


 間接キス。

 美緒奈の唾液が付いたスプーンを、お口に含んだ後でリズ、頬を染めた。

 少し考えた後、嬉しそうに。


「……ちゅぽっ♪ れろれろ、るちゅぅぅ……♪ 美緒奈ちゃんの味♪」


「リズさんちょっとは自重して!?」


 ここは「リトル・ガーデン」ではありません。

 学園の、文化祭のメイド喫茶なのです。


「でも、とっても美味しかったわよ。由理もどう?」


 えへ、とはにかむリズ。

 2人分の美少女唾液が付着したスプーンを、今度は彼女が指に取り、由理へ向ける。


「いや、どうって言われても……」


 困る由理だけど、美緒奈がぽっと顔を赤らめて。


「メイドさんと間接キス……♪ メイド喫茶らしいハプニングかも♪」


 リズも美緒奈も期待の視線。由理にスプーン舐めて欲しいみたい。


(か、間接キス、そんなにしてほしいの? いつも、直接キスしてるじゃない)


 そんな風に心で抗議しつつ、リズと美緒奈の舐めたスプーンが美味しそうに見えてしまった由理は、もう末期症状なのでした。


「わ、分かったわよ、これもご奉仕なんでしょ。……んむぅ、れぷ、ふぅ……♪」


 両手でスプーンを持って。

 とっくにオムレツ乗ってない……かわりに美少女の唾液でぬるぬるな先っぽに、ピンクの舌を這わせる。


「んちゅぶ、ぬぶぅ……♪ はふ、れろれろぉぉ……♪」


「ふぁぁ、由理お姉さまったら、えっちなお顔です……♪」


「……私、なんだか照れてきちゃったわ」


 美緒奈とリズも、サービス精神旺盛な由理のご奉仕に、かえって羞じらっちゃうのだった。


「い、いいの、委員長? なんか、普通じゃないサービスが始まってるわよ!?」


 まともな感覚を持ったままのクラスメートが、風紀委員でもある季紗きさへ告げるけど。


 季紗は、なんだか寂しそうな顔で。


「……羨ましいな。学校で、あんな風にできて」


 ぽつりと呟くのだった。


 ※ ※ ※


「この先が2年生の教室ですよ。どうぞ、こちらへ」


 生徒会書記で風紀委員のたつみ千歌流ちかる、生徒の家族を案内。


「……姉貴、怒るかな。群馬から、黙って来てさ」


 がりがり頭を掻く、中学生くらいの少年。


「ふふ、ごめんね、春斗はると君?」


 楚々とした美人さんが、のんびりな調子で微笑み返す。


「……でも、こんな時でもないと、由理ちゃん逃げちゃうかなって。私、ずるいかしら」


 そう首を傾げる女性……西城さいじょう冬華ふゆかの耳に、教室からの元気な声が飛び込んできた。

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