弱点の多い女の子は可愛いよねシリーズ。

 美緒奈みおなが住む、埼玉と東京の境界……所沢市は自然の残る街である。

 夏のある日、仕事帰りの美緒奈パパが、マンションに帰るなり元気な声で、


「ほら美緒奈! 外で大きなカブト虫見つけちゃったよ!」

「あのねーパパ? あたし女子高生だよ、カブト虫なんかで大騒ぎするわけ……うぉでけー!?」


 と、いうわけで。

 翌日の百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」のバックヤード。


「見て見てー! でっけーカブト虫だよ♪」


 赤毛ツインテールを揺らしてロリメイド美緒奈、瞳を輝かせて。

 虫かごに入れたカブト虫……艶々した茶黒の装甲に、強そうな角の大物を自慢しに来た。


 たくましい角を見て、季紗きさのコメント。


「わぁ、黒くて太くて堅そうな角だね♪」

「……季紗ねえ、わざと卑猥な言い方してるでしょ」


 ぽっと赤くなる美緒奈の羞じらいを見て、季紗は満足そうにぺろっと舌を出す。

 一方リズは、縦ロールを揺らしながら難しい顔。


「美緒奈ちゃん、せっかくのカブト虫さんだけど、ホールには入れちゃだめよ?」


 ぴっ、と指を上げた、可愛らしい仕草で、


「うちのお店は! 男子禁制なんだからっ!!」

「昆虫だよ!? メスならOKなの!?」


 苦手な子もいるだろうから、とかの理由を想像した美緒奈びっくりである。

 ちなみに「リトル・ガーデン」は、犬猫もオスは入れません。


「まぁ、ホールは冷房効いてるし、カブト虫には辛いだろうから? 入れないけどさー」


 美緒奈、虫かごを頭の上に掲げて。

 次は学校のクラスメートでもあるメイドさん達へ。


「宮野ちゃん、早乙女ちゃんも。ほら、でっけーカブト虫だよ♪」


 彼女達も、虫は平気らしい。わぁ、すごいねー等の声が上がる。


 そしてそして、美緒奈の視線は。

 リズの背中に隠れてるあの子へ。


「……由理ゆーり、なんで隠れてんのさ」

「無理です」


 泣きそうな顔の由理。青ざめて首を横にふるふる。


「死にます」


 意味不明なセリフを絞り出しながら、リズの後ろでガタガタ震えている。

 そんな由理の反応に、美緒奈が眼に小悪魔な光を浮かべて。


「あっれー、もしかしてぇ♪」

「……美緒奈ちゃん、いぢめっこの顔してるわよ?」


 由理を背中に庇ってあげながら、リズが指摘。

 でも、獲物を見つけた狩人の表情の美緒奈は、虫かごを前に突き出して。


「由理ってばぁ、カブト虫が怖いのかなー♪」

「ば、ばかばかっ! わ、私が虫なんて怖がるわけないでしょうがぁぁぁっ!?」


 強気な態度で腰に手を当てる由理だが、美緒奈が楽しそうに、カブト虫を見せ付けると?

 泣き出した……!!


「うわぁぁぁぁぁんやっぱり無理ぃぃぃぃ!! 脚多いの嫌いぃぃぃぃぃぃ!!」

「こ、これは……!」


 わんわん声を上げる由理の泣き顔に、季紗が興奮した。


「S心を刺激するね♪ ねっ美緒奈ちゃん!?」

「や、やばいね。あたしドキドキしてきたよ!」


 床に座り込んで泣いてる由理。

 嗜虐心を刺激されてにじり寄る美緒奈へ、いつも見せないしおらしい表情で、赤く泣き腫れた目で訴える。


「い、嫌っ、そんなの近付けないでぇ……」


 虫かごから視線を逸らしながら、ぽろぽろ涙を零し、唇を震わせる。


「許してぇ……。キスでも、なんでもするからぁ……?」

「か、可愛いぃぃぃー♪」


 ギャップ萌えにきゅんと来たー!

 美緒奈は虫かごを置いて、由理を押し倒しキスをした。

 ちゅぷ、ずぷっと唇を貪り吸いながら慰める。


「ちゅぅん、ぬむぅ……ずぶぷぢゅぷぅ♪ ごめんね由理ぃ♪ もういぢめないからぁ♪」


 喫茶店バックヤードの床で、ケダモノちっくな濃厚百合キスが始まった。


「ふむにゅ、ちゅむぅ……。ホントに? ホントにもう、虫近付けない……?」

「ずぶぅ、ずぷずぶ……♪ うん、やらないからぁ。だから、あたしとこのまま……♪」


 抱き合って床を転がり、ハードな接吻を交わす美緒奈と由理を見て。

 季紗がハァハァ息を荒げつつ、唇を舐め濡らす。


「うわーいいなー美緒奈ちゃん。私も、カブト虫たくさん捕まえてこようかな♪」


 メイド服を着乱し始めた美緒奈たち、パンツ丸出しになってる。

 それを見て赤くなりながら、リズ。


「……もうっ。美緒奈ちゃんも季紗ちゃんも、由理ちゃんをいじめちゃ、めっ、よ?」


 そして、カブト虫のオスが虫かごの中から見守る中。

 人間の♀同士のキスは、たっぷりねっとり続くのでした。

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