第48話かつての仲間
洞窟型のダンジョンなのに視界に困ることはなく壁自体が発光している、またダンジョンの壁はどれだけ壊そうが勝手に再生し強度を増す。
どういった原理なのかは全く想像もつかないが異世界だ不思議がたくさんある。
「なぁ~それって何なんだ?」
「そうですよ主様! 教えて下さいよ」
後ろから階段をおりながら聞いてくる………教えた良いものか、はっきり言ってあれの効果は凄まじい。
あれだけの効果のあるものがどれだけの被害を生むかわからない、この果実の効果は最大で三回しか使えない………能力をコピーしようとしたが、何故か分からなかったけどコピー出来なかった。
「ん? 非常食だよ………食べるだけで腹がふくれるらしいぞ」
やはり、フローラ達には伝えないでおこう、そのうちバレると思うがその時までは秘密にしておくか。
最大のピンチに出した方がカッコいいだろうし。
「へぇー意外と大したことねぇーな………なんかわりぃーな私たちだけ良いもの貰っちゃって、なんなら残り一種類覚えられる魔法があるし見るか?」
「私も与えてもらってばかりでは申し訳ないです。
やはり、これは主様がお持ちください」
レムもフローラも持っていた物をオレに渡そうと差し出してくるがどちらも今の俺にとっては必要の無いものだ、それに嘘ついてるし。
貰っちゃったら罪悪感が凄いことになりそうだ、今だって騙してる罪悪感で辛いのに。
「いや、いいよ………どっちもいらないし、今のオレよりお前らが持った方がいいだろ。
オレは魔法ならコピー出来るけどフローラには新しい系統の魔法なんて覚えられる機会なんてそうそう無いだろ!
それにレムのそれだって剣を使わないオレからしたらただの腰布だ、それなら活用出来るレムが持つべきだよな?
な! だからお前らが持ってろって」
レムとフローラは差し出した物を戻すが顔はどこか暗い。
「なんだ? なにか会ったのか二人とも」
正直、速くおりてしまいたいだのが二人の顔を見たら気になって聞かずにはいられなかった。
「私たちにくらい正直になったっていいじゃん!
そろそろ、私たちにくらい教えてくれよ。
お前が強くなる執着は異常だ。
何がお前をそこまで駆り立てる?
私に出来ることなら言ってくれ!」
「そうです! 初めてお会いした時からそうでしたけど、教えてくださいよ!」
いや、たしかフローラには教えたはずだよな? あれ言ったよな………あっそういえばしっかり話したことは無かったんだっけ………あっなんか言わなきゃいけない雰囲気だ、でも今さらって感じがするし恥ずかしいな。
しかも階段に立ち止まったまま話す内容でもないし………適当に誤魔化すか、いや無駄だな。
「………はぁ~、分かったよ。
話すからそんな顔すんなよ
でも、階段で立ったままする話しじゃねぇし。
戻るか、そのまま進むかどうする?」
秘密にしてたわけじゃねぇーし、別にいいけど少し言いたくない思いもある。
あんな情けない自分の話をするとかどんな羞恥プレイだよ………まぁ~情けないのは仕方ないか。
「では戻りましょう! 未知の魔物がいる場所よりも倒しなれた魔物がいる階層の方が安全安全なのは明白でしょう!」
レムとフローラは引き返すべく振り返り戻る。
まぁ~オレもそっちの方が話しやすい。
レムもフローラもなんか神妙な顔になってるし………そんな大層な話じゃねぇーのに、弱く醜くバカな男の話しだ。
「よし! ここなら問題ねぇーよな?」
フローラは階段のある側に座り、オレに話せと促してくる。
レムも同様、フローラの隣に正座しオレの話しを待つ、1人だけ立つのもおかしいからオレもフローラ達の前に座る。
「最初から話すべきだよな………オレはこの世界の人間じゃない、ある吸血鬼によってここに来た。
そしてその吸血鬼のせいでオレは半分だけ吸血鬼になり、生きてきた。
普通の魔族なら人間の敵側になるんだろうけど、あいつは変わっててな共存したいとか言っててな………オレはそいつの願いを叶えるべく頑張ったんだよ
でもそんな幸せな日常は奪われた、理不尽な力で、オレには何も出来なかった。
ひたすら怯え、足手まといになり、逃がせられ………1人の女の子も守ることの出来ねぇ~んだよ、オレは
だからオレは転移させられたこの場所でアイツより強くなり取り戻す! ミラを…アイツから奪い返すまでオレは止めない」
少し長くなってしまったがレムとフローラはしっかりと聞いてくれた。
思い返す度アイツの見下すような顔を思いだし殺意と憎悪が湧いてくる。
「そんなことが………だから最初会ったときあんな酷い顔だったのか。」
それって顔色のことだよね? 顔の造形のことじゃないよね? ………もし後者でも仕方ない気がするけど辛いな。
異世界の人って美形ばっかだし、パッとしない顔だったオレからしたら顔を隠したくなる。
あっでも半分だけ吸血鬼なったとかで少し顔が美形寄りになったとかミラに言われたことがあったな。
「私が最初に会ったときは影があった感じかしたのですが………そういうことだったのですか。
では、主様は魔法を覚えようとはしませんよね?
なぜですか? 主様の魔力量ならば魔法があればかなり使えるじゃないですか?」
こいつ……鋭いな! 確かにオレは意識的に魔法を覚えようとはしなかったが、敵の能力を知れているのはオレだけだ、オレがどの能力をコピーしたかなんて教えてもいない、それなのにレムはオレの能力コピーの傾向を読みやがった。
「それは、相手に合わせてだな。
オレが復讐しようとしてる相手は魔法が効かないんだよ。
特殊な能力だとかでな。
だから、オレはアイツに効かない魔法よりアイツとの戦闘で役立ちそうな物をコピーしている。
だからオレの能力スキルの量は豊富だ
正直使ってねぇーやつある」
「そうですか、でも魔法が効かない相手ですか………もしかして復讐の相手ってハースグロードとか言う男ですか?」
レムは平然とオレの復讐相手の名前を出す………オレはレムの前で1度も名前を出していない、名前を出すだけで殺意が湧くからな! でもなぜ知っている!?
「そんな怖い顔しないでくださいよ………一応私も魔貴族の娘です。
そういった話はよく聞くのですよ。
なんせ、魔王軍の幹部ですよ、彼」
レムは焦って言い訳するが、まぁ~レムの場合は知っていても不自然ではないか。
こういったことは魔貴族だとよく聞くのか、奴の居どころとかも知っているのだろうか。
「じゃーアイツのいる場所とか分かるのか!?」
「えぇ~知ってますけど………遠いですよ。
魔王の一角である、バアル様の配下ですので魔王城にいるのでは?」
それだけの情報が貰えるとは思わぬ誤算だった………意外にもレムがハースグロードのことをいる場所を知っていたのは驚いた。
やっぱり、話せるっていい………自分の存在が認められた感じがする。
「そうか! じゃー他に知っていることは?」
「え!? そうですね………石化魔法を使うとか
あとはぁ~魔王様の配下になる前はとある凶悪な吸血鬼の配下だったとか」
「あーそれなら知ってる! 血に塗られた吸血姫ブラッディー・ヴァンパイアプリンセスだろ! あんまり暴れすぎて異世界に飛ばされたっ奴」
絶対にミラのことだ………アイツが配下だったとかって話は聞いていたし。
でもやっぱりオレの知っているミラとフローラ達が知っているミラは別人なのだろうか………オレが知っているのは少し大人な雰囲気を出そうとしている子供みたいな奴だ、オレのために色々なことをしてくれたり、守ってくれたり優しかった。
「その凶悪な吸血鬼がオレのパートナーはんだけど………ミラは眷族にしたとか言ってたな」
「眷族って………配下よりも存在は上の奴じゃん!
あんな、大物の眷族って………通りで最初からオーバースペックな訳だ」
「そんな! 主様の知り合いだったとは………知らぬこととはいえ失礼を」
レムは謝ってくるが今さらって感じだった、ミラがもっと酷く言われているのは知っていたし、むしろ余り酷く言わないでくれてありがたかった。
「いや、別に大丈夫だ。
アイツがどんなことやってたのか知らないし。
みんなにそれだけ言われるんだ相当なことやってるんだろ?」
オレの問にレムとフローラは顔を合わせて無言になる。
「そんな顔すんなって良かったら聞かせてくれないか? ミラのこと」
「主様が望むのならば………私が聞いた話によると
1人で国を滅ぼしたとか
魔族を率いて魔王様達の条約を破り不必要に人間を殺し回ったとか
歯向かった魔族を一族まとめて皆殺しにしたとか
ぐらいしか聞いたことがありません」
何やってんだアイツ! まさしく厄災みたいなことやってるじゃねぇーか! 昔はヤンチャしたとか言ってたけどヤンチャのレベルじゃねぇーよ!!
「ふっ………アハハハハハ
バッカだなぁ~アイツ………そんなことやっといて人間と仲良くなりたいとかどうかしてるよ。
でもそんなバカな夢を叶えるって決めたんだよな、オレ
頑張んねぇーとな」
二人とも呆気を取られた顔のまま固まってしまっている、さっきまでシリアスな雰囲気で話していたのに笑っている男を見たらそうなるのも当然か。
「だ、だな」
「そう……ですね」
「じゃー話したし! 強くなるため次の階層に行こう!」
オレは次の階層へと続く階段へ進む、呆気を取られたままの二人をおいて
かつての仲間の話を今の仲間にして更に復讐の炎が燃え上がる。
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