第34話2度目のダンジョン
フローラを置いていきオレは一人でダンジョンへと向かった。
進化して跳上がったステイタスをフル活用して走る、凄まじいステータスのせいか走ると地面には大きなクレーターが次々の出来てしまう。
だがそんなことに構っている余裕はなかった。今すぐにでもダンジョンへと行きレベルを上げたい、がすぐに着くわけもなくオレのステイタスを持ってしても、ダンジョンにつくまで数時間という時間を要した。
ダンジョンは外装はただの洞窟にしか見えない、だが一つだけ普通の洞窟と違う点は入口に大きな半透明な結晶があるところだろう。
なんなんだ? この結晶は?
こういう時は、魔眼を使ってどのようなものか調べる。
《物体名:転移結晶
効果:特定の場所に転移可能となる。また転移結晶を移動させると効果は無くなってしまいただの石に変わってしまう
獲得可能能力、特定転移(決められた1ヶ所の場所に転移することができる)》
また新しい能力をコピーしておいた。
この能力が戦闘でどれだけ役に立つかは分からないけどオレはできるだけ能力をコピーして自分を強くすることに専念しよう。
「よし。入るか」
オレは自分に言い聞かせるように呟き自分に気合いを入れる。
今すぐにもで強くなりミラたちの仇を討ちたい、だがはやる気持ちのまま、がむしゃらに敵を殺しまくって死んでしまっては意味がない。
それにミラに貰った恨みを軽減させてくれるアイテムのお陰でなんとか怒りを押さえ込めている、だがこのアイテムがなかったら今にも怒り狂ってしまうだろう。
「速くレベルを上げないと………」
オレは気合いを入れると共にダンジョンへと足を踏み入れる。
中に入るとダンジョン特有のジメッとした空気が喉にまとわりつく、その空気は前に感じたものより濃くここにいる魔物の強さが伺えた。
「速く、もっと速く強くならないと」
一人でダンジョンへ入るのか初めてかと少しだけ寂しくおもう。
前にダンジョンへ入った時はアイリスと共にミラによってダンジョンに無理矢理転移させられてなくなくダンジョンを進んだけど今回は自分の意思でダンジョンにいる魔物を倒そうとしている。
「よくも、私を置いてきやがって! 追いかけるのに苦労したじゃねぇーか。はぁはぁ」
どうやらフローラが追いかけてきたようだ。
でもなぜ来たのだろうか?
待っていてもオレはずっと幻覚を掛けられたままだからフローラはレベルが上がり続けるはずだからついてくる意味はないと思うんだがな。
「なんで、来たんだ?」
「え? そりゃー………なんでなんだ?」
おいおい! 本人が分かってなくてどうするんだよ!
美女の姿のままアホなことされるともったいないなと思う、オレはフローラのアホさ加減に張り詰めていた緊張の糸は一気に緩んでしまった。
「ははは、アホだな」
「うっせぇ~笑うな。そうだ! 助けに来たんだよ。私が来たからには………っていつまで笑ってんだぁ~」
最後にはフローラも怒りだしオレへ向けて幻覚で長く見え綺麗な足で蹴りを放つ、その綺麗な足から放たれる蹴りをオレは笑いながら避ける。
「避けるんじゃねぇー」
「避けないと痛いだろう」
「くそ! なんであたんねぇ~」
何度も蹴りを放つがオレは後ろへ横へ飛び、蹴りを避けていく。
幻覚で惑わせれているとはいえ元々の力の差があるから蹴りが遅すぎるほどに見えている。
ちょっとフローラのステータスを確かめてみるか。
名 フローラ・クロウリィー
称号 忌み子
レベル 36
HP 572
MP 814
ATK 121
DEF 183
INT 409
RES 243
HIT 163
SPD 104
《個体名:フローラ・クロウリィー
種族:幻魔 忌み子 (幼体)
種族能力:幻覚魔法 幻覚魔法強化 近接戦闘脆弱
個体能力:なし》
うっわぁ~完全に魔法戦闘系じゃないか。
もし仮に一緒にダンジョンに入るとしても後ろで魔法を使って援護しか出来ないな。
「どうするんだ? ついてくるのか?」
「はぁはぁ………。あったりめぇーだろ」
美女の姿のフローラは肩で息をしていた、どうやらオレに蹴りを放つだけで疲れてしまったようだ。
おいおいスタミナもないのかよ。これは本格的に後ろにいてくれないとフローラが危ないな。
「まぁ~いいや。でも1つだけ絶対守ってほしい条件がある」
「あ? んだよ。条件って」
「それは。オレが死にそうになっても助けようとするな。一人で逃げろ」
そう、たとえオレが死ぬとしてもフローラを巻き込んでまで死ぬわけにはいかない。
守れるとは限らない、まぁ~死ぬ気はまったくないが。
「なっなんで! 見殺しみたいなことを………。」
「これは絶対だ。守れないのなら連れていかないし、幻覚も今すぐに打ち消す」
「わ、わかったよ」
フローラはオレに圧倒されたのか渋々ではあるがなんとか了承してくれた。
よし! これで心置きなくダンジョンでレベル上げができる。
「よし! じゃー行くか」
「私がいるんだ。お前に危険はねぇー」
フローラは腰に手を当てて無駄に偉そうにしている。まったく、その自信は何処から来るんだか。
さっきまでオレに蹴りを避け続けられていたことは既に忘れてしまったようだ。
「とにかく行くぞ。言っとくができるだけなら助けるがお前は一切オレを助けようなんて思うな、危なくなったら逃げろよ」
「わ、分かったよ。そんな何度も言わなくても……」
オレはフローラへと確認を取るとダンジョンの奥へ足を進める。
今まではダンジョンの入口で立っているわけにはいかない。
それにオレは出来るだけ速く強くなりたい。
もしかしたらミラやリーズ、アイリスも殺された訳ではなく石化されてしまっただけかも知れない。
いや、可能性的に言うと石化させられた可能性の方が高いだろう。
「気を抜くなよ」
フローラは黙って頷く。
さすがのフローラもダンジョンに入る緊張のせいかいつもの偉そうな態度が嘘のようにない。
オレとフローラはダンジョンへと入ったには入ったがまだ魔物の気配は一切感じない。
オレは聴覚鋭敏化の能力を使い魔物達がどこにいるか探る。
≪ゴソゴソ≫
たくさんの音が同時に聞こえるようになるが一番近くにいた魔物でも1つ下の階層にいた。
「下に降りるぞ。フローラ」
「あ、あぁ」
フローラの口数は減り、額には緊張のためか汗が流れている、レベル的には危なくないが、ステータス的には一撃ですら危うい可能性がある。
まぁ~出てくる魔物の強さによるが、オレはフローラを連れ階段を探す、探すこと数分後に見つけることができる。
オレとフローラは階段を見つけるとすぐさま降りる、聴覚鋭敏化の能力を常に使っておいて魔物の位置を把握しておく。
「右の通路を曲がると魔物がいる。オレが行くから待ってろ」
「私も行………」
フローラは大きな声を出しかけたがオレはフローラの口を塞ぎ声を出すことを阻む
一瞬魔物がこちらに気づいてしまうかもと焦ったが魔物の様子から見るにまだ此方には気づいてはいなかった。
「し! 静かにしてくれ。出来れば不意討ちで終わらせたい」
「わ、分かった」
オレはフローラにここで待っててくれと合図をだし魔物に近付く
そこにいたのはどんな生き物にも例えることが出来ないほど不格好な生物が眠っていた。
頭はワニように平べったくなっており、目は閉じられていてよく分からないが多分鋭いと思う。
体は鱗で覆われており背中からは棘? 角? のようなものが飛び出している。
どんな魔物か一応魔眼で能力をコピーしておくか、なにか戦闘で使える能力があるかもしれないし。
《種族名:サーギ・ダバソン
個体能力:顎力強化 瞬脚 天眼 空間把握 呪術魔法カースマジック
注意点、強靭な顎に1度噛まれてしまうと引きちぎるまで離れることはない。
また、固有に進化する種族なため魔法を使う者、
剣を使う者、能力を使う者、拳を使う者さまざまである。
獲得能力:顎力強化 呪術魔法カースマジック 天眼 瞬脚 空間把握 》
ステイタス平均値 900~1300
という具合に持っている能力は多彩だった。
こいつの持っている能力で注目すべき物は呪術魔法カースマジック、天眼、瞬脚この3つだろう。
魔法は遠距離で攻撃ができ今後の戦闘で役に立ってくれるはずだ。
しかし忌まわしきハースグレードは魔法解除マジックキャンセラーという厄介な固有能力を持っていたから、呪術魔法は直接ハースグレードには効かないだろう、ならば魔法はコピーしない。
あとは天眼と瞬脚か………。
瞬脚は身体能力増加の能力と重複する形になってしまうからあまり効果はないだろう。
だとすると残るは天眼か、どういった能力かは分からないという危険性はあるが先程の二つよりは期待できる。
オレは散々迷った末に天眼の能力をコピーしておいた、能力もコピーしたしコイツにはオレの復讐の最初の糧となってもらおう。
「アースランス」
オレは気づかれないように4つのアースランスを頭上に作る、魔法を多重起動の能力がなければ今頃無茶な使い方に体を壊していただろう。
オレは出現させた4つのアースランスを寝ているサーギ・ダバソンの心臓に向かって発射させる。
オレは一撃で仕留めるつもりだったがもし外して反撃をうけてフローラに危険に晒すくらいなら行動不能にした方がいいだろう。
オレはサーギ・ダバソンの心臓に向かって発射させたアースランスの軌道を変え、4本の手足を壁へと固定させる釘がわりにする
4つのアースランスは狙いを一切狂うことなくサーギ・ダバソンの手足を突き破り壁に突き刺さる。
《ギャファ?………ギャゴーギゴゴ》
サーギ・ダバソンは一瞬何が起きたのか理解できず変な声が出てしまっていた、だか己の状況が理解するとなんとか抜け出そうと激しく動く、だか激しく動くことによって生じる手足の激痛によってサーギ・ダバソンは苦痛に満ちた顔へと変わる。
四肢はアースランスという大きな釘が楔となり、壁に固定された姿はさながら生け贄のようにも見える。
「やり過ぎじゃねぇーのか?」
「危険がないやり方はこれなんだ。俺だってやりたくない」
そう、俺だってこんな残虐なことはしたくない、目の前で苦しむサーギ・ダバソンはいきなり襲われ、殺されそうになっている。なんて憐れなんだ、だがオレはレベルをあげるためにやめない。
己の自己満足に過ぎないのは分かってはいるが一瞬で殺すのが望ましいだろう、せめてオレの手で………。
そう思い、オレはサーギ・ダバソンの目の前に姿を現す。
《ギゴゴ……ゴギャーーーーーー》
サーギ・ダバソンはオレの姿を見るなり血走った目でオレを一睨みしありったけの憎しみという感情を込めて威嚇してきた。
「すまんな………アースランス」
オレはそっと1本のアースランスを作る、そのアースランスには出来るだけ硬質化させ簡単にサーギ・ダバソンを突き抜けるように作る。
作ったアースランスを今までにない速度で発射し胸に命中させる。
アースランスは1㎜のズレもなくサーギ・ダバソンの心臓を串刺しにする、1度だけ体を震わせると物言わぬ屍へと変わる。
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