魔術殺しの結界魔術

七四六明

結界魔術師

弟子入り志願

 すべてはこの日から始まった。

 それは、まだ桜が散り切っていない春上旬。新入生の入学式からまだ一週間しか経っていない頃。

 二年生、六錠扉りくじょうとびらはまもなく始まる前期試験のことを考えながらも、さっさと帰ろうとしていた。調度下駄箱で、靴の踵を踏み潰しているところだった。

「六錠先輩!」

 だがそんな彼を、一人の女子生徒が呼び止める。

 六錠扉はどの部活にも所属していないので、なんで来ないのとか𠮟りに来た部員仲間やマネージャーなどではない。

 六錠扉は基本ぼっちなので、一緒に帰ろうとか言ってくれる友達でもない。

 ならば相手は女子。告白か? ——いや、それこそ一番あり得ない。六錠扉という男は女子には一番冷たい人間だ。好かれるなどありえない。

 ならば一体何のようで、彼女は呼び止めたのだろうか。まるで想像がつかない。強いて想像するのなら、先生か誰かに伝言でも頼まれたか。それは気の毒なことだ。同情はしないが。

「り、六錠先輩!」

 彼女は緊張した様子で、スカートの裾を強く掴む。そして次の瞬間、このとても背の小さな桃髪の後輩は、六錠扉の想像もしなかった言葉を投げつけてきた。

「私を弟子にしてください!」

「……は?」

 それが六錠扉と古手川姫子こてがわきこ、二人の師弟関係の始まりだった。

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