先見の鳥

遠き地で先見の鳥が告げた。

時は来たと。

終焉を迎えるための、時は来たと。


終焉を迎えるためには、さまざまな障害があるだろうと。

それを乗り越えるためには悲しみも怒りも、喜びも愛しさも、全てが必要だと。

たった一人で乗り越えることはできぬと。

己を、思考も感情も全てを分かち合える人々が必要だと。


先見の鳥は告げる。

険しい道が続こうとも、終焉の地は穏やかな場所であると。

心安らかであれる場所だと。

愛しき人、心分かち合える人、己が愛しいと思えるもの全てと暮らせる場所だと。


さまざまな苦難が待ち受けていようとも、先を信じて進むしかないと。

くじけた時、信じることをやめた時こそ、お互いを信じて立ち上がるしかないと。

全ての苦難、全ての苦痛、それらもまた、必要なものであると。


全ての苦難、苦痛、苦渋、喜び、愛しさ、人としての感情全て味わってこそ辿りつける場所だと。

たどり着いたその時こそ物語りは終わると。

終焉の地にたどり着けば、その後の物語など有りはしないと。


すべては、終焉の地に付いたときに終わると。

先見の鳥は告げる。

全てを見通し、全てを知る鳥は、たった一羽。

ひそやかにひそやかに、全てを見ている。

その静かな瞳で、人々の生活を、その人生の先、すべてを。




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2006/7/31 mixi初公開

2016/11/6 カクヨムに転載

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