第4話 裁定者
鑑定石の準備ができたといことで、俺らは祭服の奴に連れられて砂の広場という鑑定石がある場所に案内された。
「すげー」
「すごいですね」
「きれいです」
「すごっ」
鑑定石というからただの石ころかと思ったが、巨大で透き通るような紫色の宝石だった。
直径30メートルはあるような大きさで、白い砂が敷かれた上に乗っていた。
「きれいだな」
素直にそう思った。
「では、皆様。手を鑑定石に触れてください。」
僧侶っぽい奴がそう言う。
俺らは白い砂の上に乗り、歩いて鑑定石に近づいて触れた。
「では、鑑定を始めます。『すべてを示す鑑定石よ、我が声を聞き届けよ《オリジン》』」
直後、鑑定石が強く光り、俺らを包んだが、すぐに収まっていった。
「えっ、これだけ」
「はい、これで終了でございます。」
これで終わったらしい。
期待したよりもずいぶんあっけなく終わった。
「さっきのなんか呪文みたいなのは何?」
「ああ、先ほどのは『祝詞』でございます。鑑定石から力を引き出すための呪文でございます」
「あれは魔法?」
「はい、魔法でございます。」
ほう、あんなふうにすると魔法が使えるのか。
魔法まであるとか、マジで異世界なんだな。
わくわくが止まらんな。
「では、このカード1枚ずつ受け取ってください。そこに手をかざすと上から『職業』、『レベル』、『HP』、『MP』が印字されます。職業が『勇者』となっていれば大丈夫です。また、勇者様であると『MP』の下に『SP』というのがあるそうです。前に現れた勇者様もあったとおっしゃっておりました。」
俺らはカードを受け取り、手をかざす。
「あった。職業に『勇者』って書いてある」
「僕もあるよ」
「私もあるわ」
「おめでとうございます。どうか、世界のことをよろしくお願いします。ということは……」
俺以外が勇者ということ必然的に分かるわな。
「ちょっといいかな」
「はい、栗原様はどうでしたか」
ちょっとかわいそうな物を見る目をしているが無視無視。
「『裁定者』ってなに?」
俺の職業は『裁定者』だった。
裁定、たしか物事の正否や善悪を決めることだったか。
「ああ、そうですか。それはそれは。」
「なんだよ。その残念そうな顔は。はずれ職なのかよ。」
「いえ、『裁定者』というのはこの世界では稀な職業なのですよ。この世界の住人でも時々持つことがあるのですよ。普通の『冒険者』という『職業』と能力値はほぼ同じですが、クラスアップによって通常職業を変えることができるのですが『裁定者』はなぜか変えられないのです。」
つまりは呪われた職業ってことなのか
「『裁定者』もレベル50まで上がれば『魔獣』を倒すこともできると言われておりますし、MPの回復も通常職よりも早いそうですし、栗原さんなら大丈夫ですよ」
ため息をつくと、どっとやる気をなくした。
しかも、さっきまで栗原様だったのに栗原さんになってるし。
勇者になれるかもしれないと思って浮かれていたらこの仕打ちとかないでしょ。
憧れていた勇者になって世界を救えると思っていたのに。
すると勇者たちが
高橋「まぁ、仕方ないさ。ほら話言うような奴が勇者になっていたら逆に世界が危なかったと思うぜ」
「いや、あれは事実だから」
加山「生前から僕らと違って勇者になれるような行動をしてなかっただよ」
「じゃあ、どういう行動したらなれるの」
加山「善行を積むとか」
「俺だって善行くらい積んでいるよ」
加山「じゃあ、足りなかったんだ」
姫川「まぁ、落ち込まないでください。勇者なんてそんないいものじゃないわ」
俺「…」
姫川、それは勇者になれなかった奴からすれば嫌味だよ。
その後、勇者共と祭服は同情するような目で見ながら、俺を励ましたり見下したりしてくるので嫌な気分にさせられる。
畜生、なんで俺だけはずれ職だよ。
こうして、俺は微妙な職業の『裁定者』になった。
「では、『勇者』と『裁定者』についてとギルドのことを詳しく話したいと思います」
祭服の話を整理すると。
『勇者』に選定されると宝具の力や特殊な能力を使うことができる。
他の武器も使えるが宝具や能力の方がはるかに強い。
伝承によると、
剣の勇者:宝剣を使用可能
槍の勇者:宝槍を使用可能。
銃の勇者:宝銃を使用可能
杖の勇者:すべての基本・応用魔法を使用可能
鞭の勇者:あらゆる魔物を使役する。
楽器の勇者:音色を聴いた者を魅了する。上限あり
他にも勇者は火、雷、風、水、土の5大魔法すべて会得可能で、この時にMPを消費する。
勇者のスキルはSPを使うと使えるという。
さらに、勇者には成長補助というのがあるので勇者の仲間になると早く高レベルになれ、HPやMPも大きく増えるという。
挙句、勇者自身も早く強く成長できるという。
どんだけだよ、もはやチートレベル。
そして、お待ちかね。
俺のジョブ「裁定者」だ。
裁定者は基本戦闘向きではなく、魔法の方に重きを置かれている。
魔法の習得は比較的早くでき、応用にも幅が利く。
MPの時間回復も良い。
また、精霊などから好かれやすい。
これらが利点だ。
精霊はこの世界にいるすごく小さな力を持った妖精で、稀に強い力を持つ個体が現れるが滅多に見られないが出会うこともほとんどないのであまり意味はない。
ただ、これに好かれると厄介で精霊の加護が付く。
この加護がクラスアップによるジョブ変更を阻害するという。
そのため、実際いる裁定者持ちと分かると早期に冒険者を諦め村の役所にいることが多い。
また、能力不明のスキルや『裁定』という固有スキルを手に入れることができる。
使い方は祝詞を言えば使えるらしい。
他にもある一定まで経験を得ると技能スキルを得られる。
だが、総合力としては『聖騎士』『魔導士』などの剣のスキルに特化した『聖騎士』、魔法のスキルに特化した『魔導士』などの方が総合的に強い。
因みに、最も人気がないジョブが『冒険者』なのだが『裁定者』はこの次に当たる。
この話を勇者共も聞いており、話が終わると俺に同情的な視線を向けている気がした。
気のせいだ、気のせい。
次にギルドだが、『職業』はギルドではジョブといい、ギルドでは様々なジョブを持つ冒険者たちがチームを組んでクエストをこなして金を稼ぎながらレベルを上げている。
ギルドの設立目的は魔王に対抗する力を得るのが目的だが、実際の多くの冒険者は金とレベル。
そしてランクを上げるのが目的だ。
ランクとは冒険者のランクでSまである。
Sランクになれば、それこそ多くの優遇や名誉ある称号を得られる。
また、ジョブによって希少なジョブ、重宝されるジョブ、名誉あるジョブなどがある。
そして、ギルドではさっき渡されたカードを使う。
ギルドに行くとこのギルドカードに冒険者ランクが加えられる。
他にもギルドカードはドロップアイテムやお金、必需品などを預けることができ、本人しか取り出せない。
要はキャッシュカード兼身分証明書&道具入れみたいなものだな。
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