第2話 召喚
「うっ、ここは?」
目を焼くような強い光に俺は目を覚ました。
「無事成功しました。勇者召喚が完了です。」
「さて、どやつが勇者かの~。」
勇者?
俺はすぐに仰向けで寝ていた体を起こし、周りを見渡す。
すると、聖職者が来ているような祭服を着た男がこちらに近づき、
「大変申し訳ありません。皆さま方には世界を救って頂きたく、こちらが勝手に勇者召喚の儀式を行いました。どうか慌てずに、私たちの話を聞いてはいただけないでしょうか」
そう頭を下げてくる。
俺も周りを見ると俺のほかにも周りを確認している男女がいた。
茶髪の少年、金髪の若い男それとハーフアップの黒髪美少女だった。
「あなたたちは一体何者ですか。話を聞くにしてもあなたたちの正体が分からなければ話だって聞けないです」
茶髪の少年が言う
「まぁ、そうだな」
「そうですね」
他の2人も同意しているし
「確かにそうだね」
俺も同調した。
「私たちはユグドラシル教会の者です。皆さまに世界を救って頂きたく召喚した次第であります」
「世界を救うとはなんだ。俺たちに何をさせるつもりだ」
今度は金髪の男が尋ねる。
顔を見るとめちゃくちゃ嬉しそうだな。それにさっき質問した少年や俺の隣にいる少女もとても興奮している感じだ。
「それはワシが答えよう」
王っぽい人がそう言うと話を始めた。
話の内容はよくある勇者と魔王の物語だった。
魔王が現れ、眷属の魔獣と共に世界に破壊をもたらす。
それを止めるためにも、魔王を倒せる勇者の召喚をしたと。
召喚される者たちは勇者に選ばれる資格が高い者たちが多く、俺たちに世界を救ってほしいと。
さらに細かく言えば、よくある物語の勇者は4人で魔王も1人だが、ここは少しというか大分違う。
勇者は7人おり、その7人の勇者はそれぞれ剣、槍、銃、杖、楽器、鞭の宝具から選ばれる。
また、魔王は一人ではなく七人おり、それぞれ固有の能力を持つと。
すると、茶髪の少年が思い出したように
「僕はここに来る前に死んだはずなのになぜ生きているんですか?」
とんでもないことを言う。
「え、し、死んだ?」
俺は思わず、尋ねてしまった。
「そうだけど、君は違うの?」
「いや、そんな感じではなかったけど」
「あなたたちはどう?」
茶髪の少年が他の二人にも尋ねる
「俺もたぶん死んだと思うよ」
「私も死んだと思います」
えっ、じゃあ俺はあの時死んだの?
「まぁ、あなたも気づかないうちに死んだんじゃない?で、僕の質問には答えてくれるのかな?」
そうすると、先ほどの祭服を来た男が前に出て説明してくる。
これまでに召喚された勇者たちも前の自分の世界で死んだか、死んだと思われる体験をして気づいたらこのように召喚されていると。
おそらく転生しているのではないかというのが学者の考えであると。
他の奴らも思うところがあって納得しているが、俺はあの時死んだと言われても気持ちの整理がつかない。
しかし、ここが異世界であることは事実であり、納得するしかない。
まぁ、形はどうあれ俺も憧れた異世界。
俺という小さい人間が世界を救うなんてことができると思うとわくわくしてくる。
周りを見ると、俺と同様に召喚された奴らの興奮も大きくなっているのが顔を見れば分かる。
「分かっていただけましたでしょうか。」
「ああ」「はい」「ええ」などと頷く。
「では、遅れてすまぬが自己紹介をしよう。ワシはビザンティン帝国25代国王グレコール=K=ビザンティンじゃ。今おぬしらがいるのはワシの城の中じゃ。次におぬしらの名を教えてはもらえんかの。」
良いぜっと金髪男が言って前へ出る
「俺は
青木は今ここにいる男の中の中では一番整った顔をしているうえモデルのように背も高い。
羨ましいくらいかっこいい。
茶髪の少年も自己紹介を名乗りはじめた。
「僕は
茶髪の加山が言う。
加山も青木ほどではないがイケメンだな。
なんか雰囲気から育ちが良さそうな感じがする。
俺も言わなければ、
「俺は
最後に黒髪美女が
「名前をいう前に少し聞きたいことがあるのだけれどいいかしら?さっきの話7人の勇者と言ったけれど私を含めてもここには4人しかいない。それなのに一人だけ勇者の武器なり力なりが分からないし、あなたはあたしたちを見てどの人が勇者かとも言ったけど。それってここにいる何人かは勇者ではないという意味かしら」
柔らかく微笑みながら美少女は王に尋ねる。
それは俺も気になっていたことだった。
勇者の数と能力が合わない。
また、王が言った今回は何人勇者がいるか。
全員勇者ならいう必要はない言葉だ。
「実はその通りでございまして…」
そう言って従者が補足説明を始めた。
実は、勇者として召喚されても勇者じゃない者がいることがあるらしい。
らしいというか実際はそっちの方が多いということだ。宝具を扱えるかもしれない人材を異世界から手当たり次第に引っ張ってくるのが勇者召喚であるため、王がそういったセリフを言ったということだった。
なるほど。
また、すでに杖、楽器、鞭の勇者はいるので残りは残った3つの宝具の勇者だけである。
そして、一人の勇者の力が分からないのは大昔にはいたと言い伝えで言われているが詳しい資料もなくもはや存在しないと考えられているからである。
ただ、庶民は7勇者伝説としての物語で認知されているからそういう風に広まっているという。
「おい、そんなの聞いてないぞ!俺らは勇者になれないかもしれないのに呼ばれたのかよ。」
まぁ、そうなるわな。
「では、どうやって私たちの中から勇者だと判断するの?まさか岩に刺さった剣を抜くだなんてことではないでしょ」
美少女が尋ねる。
「それには心配及ばんよ。この国には判定石という石があっての、その石に手をかざすと己のレベル、役職が分かる。この役職に勇者という文字が出ておれば勇者だ。また、万が一勇者でなくても最低限の支援はするから安心せい。」
「因みに勇者でないときの役職は何か教えてくれない?」
「良いぞ。大抵は自分が最も向いている役職が表示されるからそこらへんはまちまちじゃな」
なんとも行き当たりばったりだな。
「分かりました。ありがとうございます。私は
そうして最後の勇者候補の自己紹介も終わった。
「では、鑑定石の準備を致しますのでしばし休憩室にてお待ちください」
「ゆっくりするがよい」
そのまま俺らは祭服の奴に連れられて休憩室に向かった。
まぁ、そんな勇者にもなれるかどうか分からないまま異世界生活が始まろうとしていた
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