11話「領地相続戦争③ー犬さんの本当の父親ー」

ぶろぐvar

http://suliruku.blogspot.jp/2016/10/11k.html


そろそろ夜になりそうだ。太陽は地平線の彼方へと落ちる寸前である。

叔父が率いる傭兵達は、少ない盾を動員して密集陣形を作る事で、辛うじて防御に成功していた。


『火力がしょぼいお』『弓矢持って来い!なにやってんのー!』


……投石ってさ。投石紐で回転させるから、狙った標的に当てるのが大変なんだ。

つまり、火力を集中し辛いって弱点があるから、遠距離攻撃方法としてはかなりショボイ……。

投石紐をブンブン振り回す時点で、投石兵と投石兵との間を広く空けないと運用できないし、必然的に弾幕が薄くなるんだ。

でも、このままだと叔父達は1分もせずに全滅だろう。残りたった十人しかいない。


「えいっ!」


だから、僕が投石紐を使って、石を投げてやった。爽快感たっぷりに全力で。

石の弾丸は、盾を貫通して三人の人間を殺傷する。

そのまま、陣形は崩壊し、叔父達は雨のように降ってくる投石の餌食となった。

獣人達は一方的に、人間を痛めつける事ができて楽しそうだ。

うん……確かに……物量で圧倒した状態でやる弱い者虐めって楽しい……。

長年、大物量で虐められてきた僕としては、感動しちゃう光景だ。

ようやく虐め返す事ができた、そんな気がする。


『犬さん1人よりも役にたたない投石兵×400な件』

『安全のために距離を取りすぎたせいだお……』


しかし、このまま勝利できるかと思ったら……生き残った傭兵達が大盾を上に置いて、地面に寝転がっている。

本当に……投石ってショボイ……。

鈍器だから貫通力ってもんがないぞ……。


『犬さん、お前が言うなお』

『盾を貫通する弾丸を投げていた人の発言です、これ』



~~~~~~~~~~~

獣人達が手持ちの石を全部消費した。

生き残った3人の傭兵に農具の刃先をプレゼントしてトドメを刺して、戦いは終わる。

今、数人の獣人が、叔父を縄でぐるぐる巻きにして引き摺っている。

一応、領主である僕に処遇を聞いてきたが……今回の騒動の元凶だから、煮るなり焼くなり好きな方法でOKと答えといた。

なんで話の分かる領主なんだろう、僕。

きっと、名君と呼ばれて、可愛い獣娘からモテモテになるに違いない。


「た、助けてくれぇー!謝るから許してくれぇー!」


「大丈夫だ!貴族様!」 


この声を上げたのは、可愛い娘さんを傭兵達にレイプされた父親さんだ。

獣人だから、とっても外見が若くて20代前半にしか見えない。


「……やった?」 叔父が助かると思って、希望に満ちた声をあげている。


「今日中に死ねるから!安心するだ!」


「そんなぁぁー!?」


「貴族様といえども娘を強姦するのは許せねぇだ!たっぷり苦しめて殺してやるだ!」


「そんなー!おーい!クソガキ助けてくれぇー!ワシは叔父だろー!?」


叔父が死に物狂いで、顔をこちらに向けて懇願してくる。

……何様のつもりなんだろうか。

父親殺して、母親殺して、獣娘を強姦殺人未遂事件に巻き込んで迷惑すぎる……。

だから、僕は、虫けらを見るような感覚で叔父を見た。


「糞叔父を生かしておいて……僕に、何の価値がある?」


「ち、血が繋がった家族じゃないかぁー!ワシは肉親じゃないかぁー!」


「は?」


「お、お前の母親を孕ませたのはワシだぁー!

つまり、お前はっ!ワシの子供なんだぁー!だから助けろー!」


え?まじで?

こいつ、僕の母さんまでレイプしたのか?

邪神たち、お前らなら真相知っているよな?


『母親さん、色んな人間に頻繁にエッチな事をされてましたお』

『正直……犬さんが、誰の子供なのか分からないのが現実なのだが……一応、貴族の子供という立場は便利だから捨てない方がいいな……』

『獣人の遺伝子は優性遺伝だから、母親の特徴しか発現してないですぞ』


酷い……酷すぎる。

母さんが可哀想すぎる。一度も会ったことがないけど、享年17歳で人生を終えた彼女の無念を晴らしたくなってきた。

こんな酷い男のために、幸せになれる可能性をゼロにしたなんて……許せない。


「……僕の父親はアナタではありません。

アナタが殺した『アナタの兄』が僕の父親です。それ以外の真実はありません」


「薄情者ぉー!このクズぅー!獣人の分際で逆らいおってー!

ワシがいなかったら!この世に生まれる事もできなかった癖にぃー!」


「それに叔父さん。

僕を殺そうとしたでしょう?

血が繋がっていようが、繋がってなかったろうが、そんなもんは家族じゃない。

ただの――排除すべき敵です。

敵だから苦しんで死んでください」


殺気を込めた僕の声に、叔父が絶句した。

僕は再び殺気を込めて、言葉を続ける。


「可愛い母さんを殺した事を――地獄で懺悔しろ」


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


その後、叔父が……子羊達に足をペロペロされて削り取られ、6時間ほど苦しんで苦しんで死んだのは言うまでもない……。

あ、今日中に殺してやるっていう約束破っているや……。

まぁいいかな。約束を一つ一つ守っていたら切りがないし……。


『なんて酷いオチだ!』

~~~~~~~~~~~~~~~~






叔父の処刑が終わり、宴の時間がやってきた。

僕が投石スキルを上げるために、森の中の動物を練習ついでに殺しまくったから、肉がたくさんある。

難民ゴブリンとか、猪っぽい生き物の肉を鍋に放り込み、ささやかな宴会が繰り広げられていた。

レイプされて心に傷を負った獣娘も、楽しそうに歌って踊っている。

……そうだよなぁ……滅多に妊娠しない、病気にかからないから、特に気にする必要ないよなぁ……。


「新しい領主様万歳ー!」

「鬼謀の軍師様だぁー!」

「オラ達を導いてくだされぇー!」

「お嫁さんにして欲しいのですー!」


……三歳児に頼る時点で、獣人って種族は駄目かもしれない。

損耗ゼロの戦を要求され続けるのが、獣人の戦だ。

正直、ストレスでお腹が痛くなりそう。

人間の物量って、本当はこんなもんじゃない。

十万や百万規模の大軍を動員して戦争できる国民国家が誕生したら、その時点で獣人の天下は無くなるのだ。

今は良い。指揮官を優先して殺しまくれば、敵軍は混乱して、最小限の手間暇で勝利できる。

だが、戦意に燃える国民軍は違う。

上官が倒れたら、その仇を取るぞー感覚で、指揮権がどんどん譲渡され、国によっては全滅するまで戦闘を続行するから手に負えないのだ。

いや、小さい戦をたくさん繰り返して、死人を出し続けてもおしまいだ。

早く妊娠デキール薬を完成させないと未来がない……!

僕が死んだ後も、同じ薬を再現できる技術力がなかったら、どっちみち獣人は絶滅だっ……!

責任感で心臓が脈動して痛いなぁ……。


『犬さん犬さん、勝敗が着いたみたいだから言うお』


「ん?」


『東から40万人規模の略奪共同体が、こっちに向かっているお。

たぶん、一ヶ月か二ヶ月もすれば、この地に到着するお』


「あの、え?」


略奪共同体――膨れ上がった組織を維持するために、都市と地域を食いつぶしながら進む集団の事である。

現代の地球でも定期的に発生して、周辺の国々を脅かすから、大問題になっているのだ。

被害者が兵士となり、新しい被害者を量産するという悪魔の無限ループが行われ、根絶させるのも大変という問題っぷり。

全く嬉しくない存在だ。

心臓が激しく脈動して痛いなぁ……。今日は良い日なはずなのに、なんでこうなるの……。


「……一ヶ月先の出来事か……、なら、とりあえず、今は勝利を祝おう。

モーニャン、お酒を持ってきてくれるかな?」


「はぁーい!わかりましたー!」


狐娘がそう言って遠ざかっていく。大きな黄金の尻尾がフリフリ動いて可愛い。

……あ、そうだ、叔父達が酒を飲み干していたっけ。

なんて酷い奴なんだ。叔父は許せん。


『おいこらwwwww無駄な用事をプレゼントするなよwwww』

『ちょおまwwwwwwwひでぇwwwww』


【とってもお得な殺害カウンターが作動しました。

殺害数95を新たにカウントします。これで合計殺害数は105人です】


あれ?おかしいな。

モーニャンをレイプしようとした傭兵5人。

獣娘達を集めてエロゲーやってた奴が39人

謎の密偵1人

傭兵+叔父の集団50人。

合計95人になるはずなのに、殺害した人数が多すぎるぞ?


『教えてあげますお……』


これから宴だから、後で頼む。

モーニャンの尻尾をモフモフしないとダメな気がするんだ。


『……酷いですお!?』



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「安全自転車を、安価な移動手段にしてチートする!」20世紀

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