受話器を取る
ガチャ
『………あれ、繋がるじゃない。ワンタイムパッドじゃなかったんだ。
調度良かったわ。
あなたのお陰で救われたから、ずっとお礼を言いたかったの。
我はマウリンゾミヤの信徒、クリルハリンのインサイドメディスン!
異界の神霊よ、我等への加護を感謝いたします!!
あの時は本当にありがとう!
まさか交信先が精霊じゃなくて異界の神様だったなんてね。
精霊言語しか学んでいなかった私には何も聞こえないはずだわ。
あれから半年。色々あって大変だったんだから。
あなたとの交信が終わってから小部屋の奥に隠し通路は見つかるし、その先で異界から召喚された巨大な船は見つかるし、そこで私の出生の謎は判明するし、ダンジョンの主は巨大な船の一部と融合するし、主を倒したら巨大な船はどこかへ転移して姿を消すし、ダンジョンから帰還したら祭儀長様から「その加護はなんだ!!?」って質問攻めされるし、本当に色々ありすぎて大変だったわ。
でもね、嬉しいこともあったのよ?
色々と落ち着いてから祭儀長様やギルド長達から聞いたんだけど、私の存在とあなたの加護のお陰でクリルハリンは滅亡から免れたみたい。
あのダンジョンの主は今代の魔王に覚醒した魔物だったみたいで、あいつはその魔王の力で勇者を異界に葬ってしまっていたの。
勇者が居なくなった事で魔王を倒せるものがいなくなったんだけど、あの魔王は欲張って自分を強化するために異界の船を呼び出したの。その船に私が乗っている事を知らずに。
魔王と魔物達はあまり船の事に詳しくなかったのか、私は魔物に見つかることなく遺物と一緒にガーデナー達に回収され、クリルハリンで保護された。
そして色々あって私はあの遺跡に行き、あの場所で交信をして、あなたから異界の加護を受けた。
異界の加護のお陰で私達パーテーの皆は魔王に取り込まれずに済み、それに焦った魔王は異界の船と融合した事でこの世界の魔王としての力を失った。
そして、異界の船の精霊と交信出来る私が居た事で、船はその力を示し、私達に協力して魔王ではなくなった主を倒した。
異界の門を潜った事のあった私だから、異界の神霊と交信出来た。
異界の鉄の船の精霊と交信出来る私が居たから、今代の魔王を倒すことが出来た。
ね、ちゃんと私が産まれてきた理由があったのよ。
しかも世界を救うためっていう、とっても重大な理由だったわ!
あの場所であなたと交信しなかったら……ううん、あなたが交信に応えてくれたから、私と、この世界は救われたの。
世界を救ったことは元老院から口止めされているけど、代わりにインサイドメディスンに格上げして貰ったし、もう私を半端物って呼ぶ人は居ないわ。
孤児院の先生も喜んでくれたし、一緒に魔王を倒したパーティーの皆も沢山報酬も貰えたの。
私の両親は異界の船がこの世界に召喚された時に死んでしまったみたいだけど、私が生き延びれたのは両親の必死の行動のお陰だって、あの船の精霊が言っていたわ。
だから、私はちゃんと愛されていたんだって。必要とされていない子じゃなかったって……
これが分かったのも、全部あなたのお陰よ、本当に感謝しているわ!
さっきも言ったけど、もう一度言わせて
ありがとう!!』
ツー ツー ツー
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