受話器を取る
ガチャ
『………おいおい……本当に繋がるじゃないか。
管制塔、管制塔、こちらJD。応答求む。
ってな。
俺はアジア連合共和国の軍人だ。
今は極秘の任務中でもなんでもないので名前は言えるが、今やあんたのせいで世界一有名になっちまったんだ。名前が分からなくても声で分かるだろう?
まさか本当に繋がるとは思わなかったが、ちゃんと通じるとはな。
あれからずっとあんたに礼が言いたかったんだ。
ありがとう。
あんたのお陰で、この世界は救われた。
そして、俺も救われた。
本当に感謝している。
あの日、俺は適当に繋がった回線に俺が犯してしまった罪を告白した。
単なる機械の故障か無人の施設に繋がっていたと思ったんでな、これも神様の思し召しかと思い、懺悔のつもりだったんだ。
だが、実際はちゃんと人が居て、あんたがそれを聞いていた。
そして、俺の懺悔を聞いていたあんたは俺との回線をそのまま生きている人工衛星に繋ぎ、電波を受信できる全世界の設備へと中継した。
まだ通信用の人工衛星が生きてるなんて誰も思っていなかったから、急に電波が届いた事は世界中の生き残った人間の中で話題になった。
しかも、いきなりこの世界を崩壊させた大罪人の告白が流れてきたんだ。ご丁寧に録音してリピート機能も付けて垂れ流しでな。
通信を切ってから直ぐに管制塔から連絡があったさ。
「お前は一体何をした?」
独り言を言っていたつもりの俺にはなんの事だか分かるわけが無い。
しかし、次の言葉で俺は確信した
「世界中から通信が来ている。
『我々が囮になる。神を堕としてくれ』
と」
これが、奇跡って奴なんだとな。
元々、あの作戦は俺一人で行う予定の作戦だった。
成層圏まで上がれる戦闘機に乗れるパイロットが俺一人しか居なかったから。
だが、それは俺を解放した大隊だけの都合だったんだ。
次々とレーダーに映る、世界中から集まった生き残りのパイロットと戦闘機達。
中にはレシプロで飛んでる奴も居たし、ジャンボジェットや自作のよく分からない飛行機の奴や、本当に飛ぶかどうか怪しい見た事も無い形で飛んでいる奴も居た。
他にも気球や風船を上げて少しでも奴から俺の注意を反らすよう工作している人間も居たらしい。
これは夢なんじゃないのかと思ったさ。
空を飛ぶこと自体が危険だというのに、あんなにも大勢の人間が一斉に空に上がったんだ。
俺を恨んでる奴、俺に同情してくれる奴、俺に感謝する奴、色んな奴が居た。
だけど、全員の心は一つだった。
神から空を取り戻す。
あの時、あんたのお陰で世界中の人間が一つになったんだ。
そして、いくつもの犠牲を払いながらも、俺達は神の怒りを破壊した。
仲間が何人も撃墜され、それを支援していた基地も沢山破壊された。
だが、俺達が勝ったんだ。
あんたには本当に感謝している。
俺に罪を償わせてくれただけでなく、衛星通信が使える事と、人類はまだ諦めていなかった事、そして…………俺達は一人じゃないって事を教えてくれたんだ。
突然通信が入ってこの周波数があんたの連絡先だといわれた時は半信半疑だったが、きっと本当なんだろう。
俺にはそんな確信がある。
あんたの事を世界中の人間が探しているが、名乗り出るつもりは無いんだろう?
あんたのその技術を使えばいつでも俺たちに連絡を取れるはずだが、そうじゃないって事は秘密にしておきたいって事のはずだ。
………安心してくれ。
復興に忙しいのもあってか、影のヒーローのあんたを無理に探そうとしている奴はいない。居たとしてもきっとあんたを捕まえれないだろう。
こうして礼を言わせて貰えるだけで十分さ。
先ほども言ったが、もう一度言わせてくれ。
この世界を救う手伝いをしてくれた事、
この俺を救ってくれた事、
本当に感謝している。
ありがとう。』
ツー ツー ツー
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