徒然きゃっと
しゃろん
第1話 わかれ と であい
〖 北海道 札幌市内 某病院 病室〗
「22時26分、ご臨終です..残念ですがお亡くなりになられました。」
担当医だった飯尾先生が俯きながら僕にそう言った。
その日、僕の唯一無二の家族である祖父が亡くなった。戸倉 秀一 享年75歳、男手一つで僕を育て、独り立ちした僕を誰よりも愛してくれていた人だった。
祖父や祖母、両親が入る墓前に立つとあの日の感情が不思議とこみ上げてくる。あの時は涙も出やしなかったっけ…。
僕、戸倉 圭護 は二年前から独り暮らしをしている、祖父が倒れたのは一年前、職場になれていた時突然の出来事だった。
墓参りを終えて地下鉄に乗りバスに乗り帰路についた。
「あら圭ちゃん、おかえんなさい」
「あぁ...由紀おばさん、ただいま」
この人は隣の家のおばちゃん、祖父の友達だったようでいつも気にかけていてくれる。
「ちゃんとご飯食べなきゃダメよ?」
「はい、ありがとうございます。でも大丈夫です。ちゃんと食べてるので」
玄関を開け、寝室へ向かい、いつものようにそのままベットに倒れ込んだ。
「あ、忘れてたトイレの電球切らしてたんだった」
ふと思い出した僕はその足で近くのコンビニへと向かった。電球を買いコンビニを出る頃、雨が降り出していた。
「はぁ......」
僕はため息をつき、近道をするために細い路地を入る、少しすると目の前に黒い塊が現れた。
「んー??」
(見るからに毛糸??もふもふしてる。触っても平気だろうか…)
僕はその黒いものに近寄り人差し指でつついてみる。
⦅........つんつん⦆
つつくと黒いものからピョコっと二つの耳が現れた
(耳!?.......猫か猫だったのか!)
だが、様子がおかしい。鳴き声もしないし目も開かない、元気がないのである。
(首輪無いし、野良猫だろうか、うちで預かってあげよう)
元々猫が好きな僕は元気の無いそいつを家に連れて帰ることにした。黒い黒いまるで何の色も持たない僕のようで親近感が湧いたのかもしれない。
とにもかくにも、降り出した雨のおかげで僕はこれから大事な"友人"になるこいつに出会ったのである。
これは僕とこいつとの別れと出会いの物語。
----次回へつづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます