新しい生活スタイル(300字SS)

 囲炉裏でぱちりと火が爆ぜる。鍋から香りが広がっていく。

 幻のような割烹着が木彫りの椀を差し出してくる。

「伝統的」

「新しいでしょ?」

 彼女は笑む。


 道も消えそうな廃村だった。

 裏の畑は家庭菜園。藁葺き屋根にはソーラーパネル。

「水は井戸で、お米はたまに買いに出る」

 野草、山菜、放置果樹園。ニワトリもいると笑顔が続き。

「メンテナンスフリーなの」

 星空の下、見上げた屋根で。光の粒がパネル表面を撫でていく。


 *


 ――電書魔術によるメンテナンス機構を備えた太陽光発電システムは、インフラに囚われない生活スタイルを可能としました。消耗品現出や廃物分解の魔術書を多数揃えたライブラリを――

 和服美人の手の中で、三〇秒のCMが謳う。

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