夢の先/夢の形(300字SS)

 ニュースに映る女性の顔を男はまじまじと見返した。

『――魔法使いだと思ったんです』

 男は二三度瞬きすると画面の脇でePUGアプリを起動する。水を熱する簡易な魔術書を選択した。

『事故に遭いまして』

 女性は語る。失血死の危機、電子魔術に救われたこと。第一回電子魔術医学賞の文字を引き連れ、思い出を。

 男はカップに即席珈琲の粉を落とす。鍋にはメスを鉗子を針を投げ入れ。

 タブレットの充電を、空間MANA量をチェックして。

『命と夢を貰いました』

 まだ熱い珈琲を呷る。

「行きますか」

 ニュースを閉じる。タブレットを取りバラックを出る。

 乾いた砂風に煽られる。男は笑みを浮かべたまま。

 硝煙漂う悲鳴の地で諦念蔓延るテントへ向かう。

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