中編
すき焼きは締めのうどんまでとても美味しかった。これからより寒くなっていくし、定期的に鍋物を食べていきたいな。
僕が夕食の後片付けをする間に、美来にコーヒーを淹れてもらうことに。
淹れるタイミングを考えてくれているのか、食器や鍋を拭いているときにコーヒーのいい香りがしてくる。
後片付けが終わってリビングに戻ると、テレビの前のソファーに美来が座っていた。テーブルには2つのスイートポテトと、コーヒーの入ったマグカップが2つ置かれている。
「智也さん、後片付けありがとうございました」
「いえいえ。コーヒーを淹れてくれてありがとう、美来。おっ、美来も今日はコーヒーなんだね」
「砂糖をたっぷりと入れましたけどね。今日は何だかいけそうな気がします」
「そっか。着実にコーヒー街道を歩んでいるね」
僕は美来の隣に腰を下ろした。
美来は今年中にコーヒーを普通に飲めるようになることを目標にしている。今はカフェオレなら缶1本を飲めるようになり、お気に入りの銘柄を見つけたとのこと。
カフェオレを美味しく飲めるようになってきたので、今度は砂糖入りのコーヒーにチャレンジするってことかな。
「では、食後のデザートに、智也さんのスイートポテトをいただきましょうか」
「どうぞ召し上がれ。いただきます」
まずは美来の淹れてくれたコーヒーを飲むことに。甘めのすき焼きを食べた後にはちょうどいい。温かいコーヒーが本当に美味しいと思える季節になってきた。
美来もまずはコーヒーを飲んでいるようで。砂糖をたっぷりと入れたそうだけど、果たして美来の口に合うかどうか。
「やっぱり、カフェオレよりも苦味が強いですね。砂糖を入れたこともあってか、以前よりも美味しく感じられます」
「コーヒーに慣れてきた証拠だね」
「ふふっ、何だか嬉しいですね。智也さんも飲んでみますか?」
「うん、いただきます」
僕は美来のコーヒーを一口いただくことに。
「砂糖をたっぷりと入れただけあって、甘味も結構あるけれど、それと同じくらいに苦味もしっかり感じられる。この味を前よりも美味しく感じられるなら、あとはこの苦味に慣れていくだけじゃないかな」
「そうですか。智也さんに近づけて嬉しいです」
「前に比べれば結構飲めるようになったね。凄いよ。微糖やブレンドの缶コーヒーはたくさん売っているから、そういったものを飲んで慣れていくのもありだよ。銘柄とかによって、苦味や甘味、ミルクのコクも幅広いから、カフェオレのみたいにお気に入りが見つかるといいね」
「はい!」
この調子なら、今年中に僕と一緒にコーヒーを楽しむ目標を達成できるんじゃないだろうか。それこそ、クリスマスのときは、ケーキと一緒に楽しんでいるかも。
「うん、苦いコーヒーを飲んだ後だからか、スイートポテトの甘味がより引き立ちますね! とても美味しいです!」
「そうだね。僕もコーヒーだけなら砂糖を入れることがあるけれど、お菓子があるときはブラックにしてる」
「なるほどです。あと、コンビニのスイーツって本当に美味しい……あっ!」
美来ははっとした表情になる。大きな声だったので僕もビックリした。
「思い出しました!」
「どうしたの、美来」
「智也さん、ちょっとここで待っていてください。スイートポテトを食べちゃっていいですから」
そう言うと、美来は足早にリビングを後にする。さっき、はっとした様子になっていたけど、何を思い出したんだろう? それもあと少しで分かるだろうから気にしないでおくか。
僕は自分のコーヒーを飲む。美来のコーヒーを飲んだり、スイートポテトを食べたりした後だからかかなり苦く感じる。僕はこの苦味が好きだけ
ど、苦手な人は本当に苦手だろうなと思う。美来も以前、コーヒーは香りだけが好きだったのに、よく砂糖入りのコーヒーを飲めるようになったと思う。
「凄い子だな、まったく」
苦味に慣れて、良さが分かってきたのか。それとも、僕への愛情がそうしたのか。
「智也さん! トリックアンドトリートです!」
美来がそんな言葉を言って、リビングに戻ってきた。美来はかなり露出度高めのサンタコスチュームをしている。胸元もかなり露出しているし。
「可愛いサンタさんが来たね」
「えへへっ、美来サンタです」
「2ヶ月早く来てくれたんだね、嬉しいな。でも、どうしたの、その服」
「去年、家族や友達とのクリスマスパーティーのときに着たんです。今年はきっと智也さんと一緒にクリスマスを過ごしますから、そのときは絶対に着たいと思いまして。ですから、引っ越しのときに運んだのです。それをすっかりと忘れていました。あと、ハロウィンも近いことを思い出して。さっきはクリスマスの話をしたので、2ヶ月早くサンタさんになりました」
「そういうことだったんだね」
スイートポテトを食べたことをきっかけにハロウィンを思い出したんだな。あと、家族や友人だからこそ、こういった露出度高めのサンタさんになったのかな。
「美来、せっかくだから写真を撮っていいかな」
「もちろんです! その代わり、智也さんはこのネコ耳カチューシャを付けてください。ハロウィンも近いので、ちょっとコスプレしましょう」
「分かったよ」
僕は美来から受け取った黒いネコ耳カチューシャを頭に付けて、美来サンタのことをスマートフォンで撮影する。そのことが嬉しいのか、美来は色々なポーズをしてくれる。
「いい写真がたくさん撮れたよ、ありがとう。写真でもこうして見てみると、かなり露出度が高いね。特に胸のあたりとか」
「去年のクリスマス以来ですからね。あれから、智也さんのおかげで胸がかなり大きくなったのでキツくなってしまい、ここまで服を下ろしてようやく楽になって。去年のクリスマス写真がスマホにありますので、ちょっと待ってくださいね」
美来は僕の隣に座って、スマートフォンを弄っている。メイド服姿のときとは打って変わって肌を多く露出しているからか、こうして隣り合っていると美来から甘い匂いがする。
「ありました。去年のクリスマスパーティーのときの写真です」
「どれどれ」
去年のクリスマスの美来もかなり可愛いな。
今と同じサンタの服装をしているけれど、今よりも露出度が低いな。去年の時点で確かな膨らみはあるけど、少し谷間が見えるくらいだ。この10ヶ月くらいで……大人っぽくなったな、美来は。
「ふふっ、視線が写真と胸に交互に動いていますね」
「ごめん。ただ、本当にこの10ヶ月で成長したなと思って」
「さっきも言ったでしょう? 智也さんのおかげだって。智也さんと再会して、数え切れないほどにキスして、その先のこともたくさんして。このときはCカップでしたが、今ではEカップで収まりがいいです」
「そうなんだ。大きくなったんだね」
「ええ。ですから、この胸は智也さんと一緒に作り上げたものですよ」
そう言うと、美来はニヤニヤしながら僕に胸を押し当ててきた。メイド服よりも薄手なのか、普段よりも胸の感触をしっかりと感じるよ。
「普段とは違う服装だからか、こうしていると気持ちがいいですね」
「薄手みたいだし、露出度高めだしね。今の季節ならまだしも、クリスマスの頃にその服装はまずいかな。風邪引きそう」
「ですね。これは智也さんとの夜の行い用として取っておいて、今年のクリスマスには新しいサンタコスチュームを買うことにします」
「それがいいと思うよ」
ここまで肌が露出しているとかなり艶やかだし、夜の行い用に取っておくというのは賢明な判断だと思う。12月になったら、美来サンタとベッドの中でイチャイチャする日が増えそうだな。
「でも、せっかく着たのですから、このままスイーツを楽しむことにしましょう」
「そうだね。でも、寒くなったら無理しないでメイド服とかに着替えてね。風邪引いちゃうから」
「分かりました。でも、こうしていれば温かいですから、きっと大丈夫です」
そう言うと、美来はより強く僕の腕を抱きしめて口づけをしてきた。そうしている美来はとても嬉しそうで。何だか2ヶ月早いクリスマスプレゼントをもらったような気がしたのであった。
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