第2話

「ア、目、覚めたカ?」

 婆さんに上から見下ろされて目が覚めた。あまりいい目覚め方ではないな。

 ロッカーから引きずり出され、床に転がされている自分の身体を確認して、ゆっくりと上体を起こす。口元と後頭部がズキンと痛む。

 周囲はなぜか配送業者の制服を着た男たちが多数動き回っていた。大きな段ボール箱を4箱運び出すところだ。

 中身は想像したくないが想像がつく。

 この配送業者の制服の男たちも、偽警備員と同じで偽配送業者なんだろな。

 婆さんが偽配送業者に声をかける。

「まだ生きてるから高く売れるヨ。死ぬと臓器もすぐダメになるナ。早く持ってくイイナ」

 イヤだ! 想像したくない!

 ん? ところで先輩は?

 壁際で腕組みして立っている……。

 話しかけづらいなあ。というか、コワイなあ……。眉間に皺ついてるよ……。でも行動は継続中だし、連携をとらないと……。

怒ってるかな……?

「あの……」

「起きた? 今の私達が偉そうなこと言えないけど、法の外で生業を持っている人、普段は見えないだけで、結構多いんだろうね」

 怒られるかと思ってたから先輩の言葉にビックリした。

 先輩の考えていることは解る。僕だって、僕なりの「正しいこと」をするために今の仕事に就いた。その「正しいこと」を行うために、法の外側に踏み出して、法の外側の人たちの力を借りて生き延びた。

 だいたい今回の任務に就いた時点で、一時的にせよ僕らの記録は戸籍や保険、自動車免許などが抹消されている。任務途中で殺されたら身元不明の死体となるわけだ。

 法律って何だろう? 正義って何だろう? そもそも僕らの行動は正しいのか? 何だか足元の大地が急にフニャフニャと頼りないものになってしまったかのような……。


「おーい! 終わったナ! みんな早く出る! 急ぐ急ぐ!」


 婆さんが身振り手振りと大声でビルからの撤収をこの場の全員に指示する。とりあえず今回の任務は終わったみたいだ。

「あ、あんたたち私と一緒ナ」

 婆さんはこっちを見て言った。まだ何か任務が残っていたかな? 奪ったデータは持ってるし?

 僕は先輩と顔を見合わせた。先輩もよくわからないといった表情だ。

「あんたたち買い物つきあういいナ」

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