第42話 まだ足りなくて死ねるかも





一体どれだけの時間が経ったんだろう。





何も無い天井を見つめながら、俺はぼんやりと思う。



「ハァッ…ハァッ…」


「…絶倫野郎」



荒い息遣いに、ため息が出る。


体中に弘樹の精液がべったりとくっ付いていて、さすがに気分の良いものではない。



もう昼か…。

窓の外を見ると、明るくなっている。



「まだ足りねー・・・」


「…冗談じゃない」



俺に覆いかぶさった弘樹の呟きに、ぎょっとした。


ちょっと待て。

昨日の夜からずっとヤってるんだけど?

まだ枯れないその精力に、僅かに冷や汗が出る。



「…そんなことしても、俺の気持ちは変わんないんだけど?」


「…黙れよ」



呆れた俺の言葉に、弘樹は気分を害したようで。

グッと両手で首を締め付けられた。



――痛い。苦しい。苦しい。苦しい。



「…ハァッ…。ひ、ろき…っ」


「…何でお前は、またどこかに行くんだろうな」


「く、るし…」


「俺の元から消えるくらいなら、このまま殺してしまおうか」





何それ。笑えない。


滲んでいく視界の中で、弘樹の表情を読み取ろうとする。

でもやっぱり無理で。

何を考えてるのか、俺にはわからなかった。




――あ。このまま死ねるかも。






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