3日目・アイテムチェック
俺達は朝になり起き出して、朝食を取り終えると今後の相談をしていた。
「ヒロさんは拠点を変えた方が良いと思うんですか?」
「ああ、昨日ドライト様が近所でヒャハァしてただろ?
他の場所でも良いのに何でこんな住宅街でやってたか不思議に思ってたんだが、俺達がここに居るからこそ、来たんじゃないかと考えてな」
ヒロさんにそう言われて俺達は顔をしかめる、すると百合ちゃんがテレビをつけて見始める。
「緊急特番!学校で一体何が!?
現地から人気レポーターが緊急レポート!」
「……何事だ?」
「……アニメは?」
テレビから流れてきた音声に、朝日と百合ちゃんが反応する。
そしてテレビのなかではドライトヒロシ隊長とエイミリアがメインキャスターとして座り、その対面に軍事評論家としてドライト大将が、防災学の教授としてドライト教授が、最後に何故か淑女代表としてロッテンドライヤーが座っていた。
皆で観ていると、エイミリアがドライト教授に質問をしている所だった。
「ドライト教授、学校では一体何が起こったのでしょうか?」
「はい、昨夜急に火災ボタンが押されたようでして、消防団が向かったのですが、突入の連絡を最後に連絡が無くなったようなのです」
「それで後から到着した消防隊と警察にドライトポリスはガス漏れか何かと考えて、突入は止めて封鎖したんですね?」
「ええ、良い判断だと思います」
そこまで話したところでドライトヒロシ隊長が、ドライト大将に質問する。
「しかしドライト大将、別の情報筋からだと火災ではなくテロではないかとの情報も有るのですよね?」
「ええ、先程流れた火災報知器が鳴った時の監視カメラ映像をまた見れますか?………………ここです、ここ!この3階の窓を見てください!」
「これは……人影ですね?」
「ええ、火災報知器はこの部屋で押されたと、コンビュータに出ているようなのですよ?」
するとその映像を興味深そうに見ていた教授が発言する。
「手に入った地図によると……生徒会室ですか?」
そう言う教授の手元を見て大将が発言する。
「そうみたいですね?
ですが学校の生徒や教師なら何かしらの反応を示すか、窓を開けて助けを求めれば良いのですが、この人物はそういった行動を示さないのです」
「ふーむ、大将、これから考えられるのはどの様な事ですか?」
「ボタンを押した人物やこの人影は、ガスか二酸化炭素中毒になってて動けないか、罠ですね……」
「わ、罠ですか?」
エイミリアが驚きながら聞くと、大将は深刻顔をして話す。
「はい、ここに救助を求めている人が居ます!っとみせかけてやって来た消防隊や救急隊員を捕らえて、身代金や捕らえられている仲間の身柄の解放を要求するという、テロ行為ではないかとも考えられるのです」
「「「なるほど……」」」
ドライト大将の言葉に、隊長に教授、エイミリアが驚愕しながら頷くのだった……
「……この人影、岡田だろ?」
「岡田で間違いないわね」
俺と円がそう言うと、朝日が桐澤さんに向き直り電話してみろと告げる。
「頼子、岡田と連絡取れるか?」
「い、嫌よ!?私の番号がバレちゃうじゃない!」
だが桐澤さんは絶対に嫌だと拒否する。
「ね、ねえ弘志くん、消防団が突入して連絡がないって……」
「ステラ様とルチル様がトレインでゾンビを学校に閉じ込めてたから、それにやられたんだろ?」
「や、やっぱり……」
「あ、あの野郎、ろくな事をしねえな……」
俺達が頭を抱えていると、クミさんが疑問を投げ掛けてきた。
「ねぇ、それならそれで、何でその岡田君ってのは出て来ないの?」
「……あ」
「星司さん、何か分かったんですか?」
クミさんの問いに、嫌な考えが思いついた俺に気がついた梨花が聞いてくる。
「思いつきだけど……あいつ、消防団が襲われてる間に逃げたんじゃね?」
俺の言葉に全員が驚き俺を見てくる、そんな皆の顔を一度見回してから俺は続ける。
「実は昨日からドライトヒロシ探検隊長のテレビでの言動に違和感があったんだ、エイミリアがドライト・オブ・ザ・デッド開催って言ったのを聞いて驚いてただろ?」
「そう言えばそうね?」
香織姉が思い出すように首を傾げてるのを見て、俺は続ける。
「多分、こいつ等分身体も全部は聞いてないんじゃないか?
それぞれに役割を与えられていて、その役割にそって行動をしているだけなんじゃないか?」
「有り得るわね……」
俺の言葉に円も賛同してくる。
「んで、消防団はドライトゾンビの存在を聞いてなくって、校内に入ったら襲われてさ……そのドサクサに紛れて、岡田のバカは逃げたんじゃないかな?」
「あいつならやりかねんな……」
「間違いなく、灰谷君の言う通りだと思うわ」
俺の話に朝日と桐澤さんが同意してくる。
そうこうしていると、テレビの中でも動きがあった。
「ちょっとお待ちください……はい、はい……現場に動きが有るようです!
現場のハマリエルさん?ハマリエルさん、現場に動きが有るとか!?」
エイミリアがそう言うと画面が切り替わり、天使の様な羽を持った美しい少女が映し出される。
「はい、こちらは現場のハマリエルです!
先程からドライトポリスの動きが激しくなっています!どうやら機動隊と特殊部隊に救急隊の合同チームで突入を図るようなんです!」
それにスタジオに居るドライト大将が答える。
「うーん、これはあれですね、突入した消防団の事を考えてではないでしょうか?」
「なるほど、負傷者がいる事を危惧したんですね?」
「ええ、怪我の度合いにもよりますが、治療は早い方が良いですからね」
そう教授と大将が話している間に、突入隊は校門を開き玄関から校舎に入り込む……そこには!
「あー」
「うー」
「メ◯ソレータムをー」
ドライトゾンビが待ち構えていた!
「痒!本当に痒!」
「ドライト様!本当に他の人を噛めば痒みが楽になるんですか!?」
「ダ、ダメだ!素早く動こうとすると痒みが増す!」
……消防団の服を着た天使達と竜人達も居た!
「な、なんですかこいつ等は!?」
「消防団の人達です……や、止めなさい!噛もうとしないでください!?このこの!」
「お、お前等!どうしたんだ!?」
「お前らドライト様の分身体を噛もうとするな!
腹を壊すぞ!?」
「と、とにかく引き剥がせ、か、噛むな!」
「お、おい要救助者は……ん?向こうからも来た……か、噛まないでくださ……痒い!なんだこれ!?」
どうやら特殊部隊はドライトポリスで、機動隊と救急隊は竜人族と天使族で構成されているらしく、ドライトポリスで構成された特殊部隊はフルプレートの様なボディアーマーで噛まれる事を防ぎ、トンファー型の柔らかそうな特殊警棒で、寄って来た天使や竜人達をポコポコ殴っている。
だが機動隊はボディアーマーに隙間があり、そこを狙われたりヘルメットを取られて噛まれている。
救急隊員は後方に居たので助かっていたが、この地獄のような光景に頑張れば見れるかもしれない光景に呆れて、固まっている。
そこにドライトゾンビが新たに現れて、あっという間に噛まれてしまったのだった!
「撤収!撤収です!」
「負傷者の回収を急ぐのです!」
「あれ~?ハマリエル~突入班が戻ってきたよ~?」
「へ?戻ってくるのが早すぎない?」
「でも~あれ~」
「ほ、本当だ!?フル!撮影を再開するわよ!」
「了解~……なんか変なのも来たよ~?」
「変なのって……な、何あれ!?」
どうやら撮影していたのは竜人族の筆頭ロリのフルだったようだ、ハマリエルとコンビで撮影していたようで、今は休んでいたようだった。
そしてフルが校内から撤退してくる突入班に気がつき、その言葉にハマリエルも突入班に気がつく。
そして慌てたハマリエルの指示で撮影を再開するが、フルが変なのも来てると言いハマリエルも学校の方を見てゾンビに気がつく。
「……ゾ、ゾンビだ!お茶の間の皆さん!見えますか!?ゾンビが出ました!メチャクチャショボいメイクですが!」
「ハ、ハマリエル~!こっちにも来るよ~、逃げようよ~!」
ハマリエルは失礼な事を言い、フルは怖がって逃げようと言っている。
だがハマリエルはチャンスだから撮影を続けるのよ!っと言っている。
「良い?ここで凄い映像を撮りまくって……他局に高額で売り付けるの!
そうすれば視聴率0のDTVを辞めて、自分達の局を持てるかもしれないのよ!?」
「え~、ドライト様を裏切れないよ~?
それにお金だけは有るから、凄い機材が揃ってて~幸せ~!って言ってたのはハマリエルだよ~?」
「バカね!機材なんか辞める時にチョロマカセば良いのよ!」
「え~それはまずいよ~……」
「バレなきゃ問題ないって!」
「でも~……」
「でも何よ!?」
「後ろにロッテンドライヤー女史が~居るよ~?」
「……はぁ?……ギャー!?じょ、女史!軽い冗談です、ドライト様を私が裏切る訳……は、離してください!そっちにはドライトゾンビがワラワラと……ギャー!か、噛まれた!?……痒い!痒すぎる~!」
フルの言葉にハマリエルが後ろを恐る恐る振り向くと、スタジオに居たはずのロッテンドライヤー女史がジッとハマリエルを見て、たたずんでいた。
そして無言のままハマリエルの首根っこを掴むと、ドライトゾンビの方に連れていき1番多く居そうな場所に放り込むのだった。
「ハ、ハマリエル~!薬が有るから~!ま、待って~!?」
ゾンビに全身を噛まれてしまい、全身が痒くなってしまったハマリエルが駆けて逃げ出す、それをフルが薬片手に追いかけていくのだった。
「コントは終わりみたいだな」
俺の言葉に唖然としてテレビを見ていた面々が再起動する。
「よし、現状確認だ。
この家は捨てる、別の拠点を探そう。
それと同時に出来るだけ物資や武器防具を手に入れる、ここまでは良いか?」
ヒロさんの言葉に俺達は頷く。
「よし、あとは仲間探しだ、数は力だからな?信頼できるやつは仲間に入れていく方向でな!」
「「「了解!」」」
ヒロさんの言葉に俺達は頷くと、自分のリュックに手をかける。
それを見たクミさんが待ったをかけてきた。
「待って、そのリュックには役に立つアイテムが入っているのよね?」
「はい、ドライトが学校の全員にそう言って渡してきました。
1人に2、3個のアイテムを入れてあるそうです」
「それのチェックをしときましょう?
武器や防具が入ってるかもしれないわ、それに追い詰められて調べるより、出来るだけ安全な時に調べた方が良いわ」
クミさんの言う通りなので、俺達8人は自分達のリュックを調べて、朝日、桐澤さん、弘志、百合ちゃん、円、梨花、香織姉、俺の順でアイテムを取り出す。
「人参!」
「玉葱!」
「ジャガイモ!」
「鶏肉!」
「オールスパイス!」
「リンゴ!」
「お米!」
「オデンの素!なんでだよ!?」
俺は怒りに任せてオデンの素を床に叩きつける!
「カレーのルウの流れだったのに……しかもオデンは昨日食ったしな?」
「絶対にわざとよね?」
「せ、星ちゃん、まだ何か入っているみたいだから、出してみましょう?ね?」
ヒロさんとクミさんに可哀想な人を見る目で見つめられ、香織姉に慰められながら俺達はさっきと同じ順で次のアイテムを出す。
「剣!」
「槍!」
「薙刀!」
「薙刀!弘志くんとお揃い!」
「弓矢!」
「棍棒!」
「警棒!」
「綿棒!あの野郎、殴ってやる!」
「ドライト様はどっかで見てるのか?」
「あり得ない流れよね?」
「星司、なんかお前のだけ説明書が有るぞ?」
朝日が俺がリュックから取り出した時に、リュックから落ちたのに気がついたようで拾って渡してくる。
「何々?綿棒で耳を刺すと……血が出る、つまり立派な武器です!」
「もう良いから、町を調べに行こうぜ?」
「ま、まあまあ、他には何にも入ってないの?」
「ってかこの剣……段ボールだよな?」
「槍と薙刀の刃の部分もそうだわ、皆の武器も役に立たないわね」
「役に立ちそうなのは棍棒と警棒だけかしら?」
「待った、柄の部分は何かに使えるから持っていこう」
ヒロさんがそう言って、弘志と一緒に武器を解体し始める……今気がついたけど、宏彰さんと弘志ってヒロヒロで同じだな、人としてのでかさだと宏彰さんの圧勝だけど!
なんて事をしながら移動の準備をしていると、現場ではさらに動きがあったようだ。
「このこのこの!」
「ダメです、特殊警棒で殴ってるのに全く怯みません!」
「一体どうなってるんですか!?」
ドライトポリスで編成された特殊部隊は必死に警棒を振るって、ドライトゾンビと天使と竜人達の感染者を学校から出さないようにしていた。
「……あの、本当に特殊警棒なんですか?やたらと柔らかい気がするんですか?」
ポコポコ殴られていた天使の1人が、あまりに痛くないので質問してくる。
「ちゃんとした警棒ですよ!中身はシリコン製です!」
「それでどうやってダメージを与えようと思ったんですか!?」
「チャンスです、突撃ですよ!?警備線を突破して自由への翼をつかむのです!」
ドライトポリスの警棒の攻撃力が大した事が無いと分かった天使や竜人の感染者は驚いているが、ドライトゾンビ達はチャンスだと詩的な宣言で防衛線の突破にかかる。
「うう……このままでは……!」
「仕方ありません、撤退、撤退ですよ!」
なんとか校門で支えていたドライトポリスだが、ドライトゾンビの攻勢が強くなり仕方なく撤退を開始する、そしてドライトポリス達は亀甲陣を組んで逃げ出した。
逃げ出したのは良いのだかこの陣形、盾で前後左右と上を守る陣形なのだが問題は上にゾンビが乗り、前後左右の盾にはゾンビがしがみついている事だった。
そして―――
「おお!速い!速いですよ!?」
「あ!無事な人です、それ![ガブゥ!]痒みが収まりました!」
「痒い!ってかドライトポリス、ゾンビを撒き散らしながら移動しないでください!」
そう、素早く動くと痒みが増すために、素早く動けないドライトゾンビ達をドライトポリス達は積んで高速移動し始めたのだ!
「ちょ、ちょっと善君、あれ!」
「どうしたんだ……げ!?」
テレビの映像に気がついた桐澤さんが朝日にテレビを観るように言い、朝日もテレビを観て驚きの声を上げる。
「うお!なんつー迷惑な事を!?」
「これって、感染地域が一気に広まるんじゃ……」
朝日の声に俺達も何事かとテレビ観て驚きの声を上げる、そして梨花の言葉を聞いたヒロさんが慌てたように言うのだった。
「皆、急いで家から出て学校から離れるぞ、途中のコンビニ、スーパーやホームセンターでは状況をみながら物資を補給する!」
こうして10人増えた俺達はヒロさん達の家を出て、学校から離れる方向に逃げ出したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます