勇者召喚 Again!


「それでは、これで今学期は終わります。

1ヵ月間の夏休みになりますが、ハメを外したりしないようにお願いしますね?」


香織姉が最後に「では解散です」っと言うと、一気に教室内は喧騒に溢れる。


「おーい、星司!」


「ん?弘志、なんか用か?」


「朝日達が例のカフェに行くってよ」


「ああ……悪い、先に行っててくれるか?」


「何よ?なにか用が有るの?

今日は終業式の後に、夏休みの計画を話し合うって、前から言ってたでしょ?」


「覚えてるって、俺はその間に……八八八男って、それはマジでないでしょう!の新刊を買いに行ってくるわ!」


「新しいラノベ……って産みすぎでしょう、それ!?」


「……獣の数字か?」


「朝日君、それは666よ?」


などとやり取りしていると、香織姉がやって来た。


「皆、職員会議が終わったら、連絡するわね?

夏休みの宿題の計画と、自習の計画もしっかり立てておくのよ?」


「香織姉さん、行き先とか決めておきますから、じゃあ……な、なに!?」


「梨花どうし、魔方陣!?」


梨花が真っ先に異変に気がつき、俺も床に現れた魔方陣に気がつく。


「「わあぁぁぁ!?」」


「「キャアァァァ!?」」


そして魔方陣が一気に光輝くと、俺達の姿は教室内から消えたのだった……




「……なんか、見たことあるところだな?」


「……先月ぐらいに、ほんの数時間居たところな気がするわね?」


「2人とも現実を直視しよう、ここはフォルセクス王国に間違いない」


「「ぐぬぬぬ……」」


俺と円が現実逃避してたら朝日に引き戻された。


「おい、フォルセクス王国ってどう言うことだよ?

魔王はあの銀龍が滅ぼしたんだろ?」


「私達を呼ぶ理由は無いですよね?」


弘志と梨花も召喚されたようで、こちらにやって来る。


その2人が言うようにアルレニアは邪神と魔王が滅び平和になったはずなのだ、だが星司達は召喚されてこの部屋に居る、すると香織姉もやって来て言う。


「あれじゃない?エイミリアさんが、今度は観光で呼んでくれたんじゃない?」


「「「それは嫌すぎる!」」」


等と俺達が話していると、部屋の外に気配を感じる。


前回と違いバタバタと慌ただしい音が聞こえ、それが鳴りやんだと思った次の瞬間、扉が開き騎士達と魔導師達が雪崩れ込んで来た!


「魔導師は結界を張って侵入者を封じ込めて!

騎士達は戦列を作るのよ!……って皆様!?」


騎士や魔導師達を指揮していたのは、エイミリアだった、その左右には騎士団長と宮廷魔導師長が控えていたが、俺達を見て驚きに目を見開いている。




とりあえず召喚部屋から謁見の間に移動した俺達は、国王や重臣達と会っていた。


「召喚を……していない!?」


「うむ、邪神が滅んだあと、少し問題は有るが勇者召喚をするほどではないでな?

今回はわし等は召喚しておらんのだよ」


「今、神官達がアルレニス様に神託を得るべく、祈っていますので託宣がおりるまで待ってて頂けますか?」


エイミリアにそう言われて、俺達も顔を見合わせる。


俺達は見慣れた部屋に転移したので、フォルセクス王国による勇者召喚で呼ばれたと思っていたのだが、国王や王女のエイミリアは召喚をしていないと言うのだ。


「……でも、問題が有るって言いましたね?」


その梨花の言葉に国王が答える。


「ああ、その事は問題とは言え問題なんじゃが、勇者召喚をするほどではないのじゃ」


そう言ってフォルセクス王国の国王、ローレオン国王が説明してくれた。


ちなみに前回はあまりにも異世界に居たのが短かったので、国王の名前を聞いたのは今が最初だったりする。


なんにしろローレオン国王が説明してくれた事によると、前回に銀龍ドライトが邪神と一緒に魔王を滅ぼしてくれたので、残った雑魚を討伐しようとして意外な事が判明したのだそうだ。


その意外な事と言うのが魔物、モンスターの事で、邪神とその配下である魔人、魔王が産み出したと思われていたのだが……自然繁殖させていたのだ!


……何が違うのか分けが分からなかったのだが、エイミリアの説明によると邪神やその先兵たる魔人が産み出した魔物は、神々や龍の殲滅対象になるのだが、自然発生した魔物はただの自然災害にしかならないらしいのだ。


さらにローレオン国王の説明によると、邪神等に産み出された魔物は知性や意識等が希薄で、例えばオークだと殺す事と食う事、そして犯す事しか考えないのだそうだ。


しかし自然発生したオークは知性や意識が有り、獣人の1種と考えられているのだそうだ、実際にこの国に仕官しているの者も居たので、ローレオン国王に紹介してもらったら普通に良い人で綺麗好きだった。


ただ魔王や邪神に使える者達もおり、そのオークさんも言ってたのだが種族の恥だが、数だけはアホみたく居るのだと。


あ、どうでも良いけど知性の有るオークの人達はオークって呼んじゃ駄目なんだって、猪人族って言うらしい。


何にしろその自然繁殖させた魔物の数が……思ったより多かったらしいのだ。

ただそれで世界が滅びるほどではなく、現在は他の人族の国にエルフ族やドワーフ族、猪人族を含む獣人族と連携して殲滅戦を行っているのだそうだ。




「つまり、魔物の数が想定よりかなり多かったが、頭となる魔王や邪神が滅んでおるので討伐は順調に進んでおるのじゃ!」


「それにですね、前回に見たと思いますが、ドライト様やユノガンド様を捕まえた龍神の方々に、ハザ様が注意されたそうなのです」


そう言ってエイミリア王女が引き継ぐ形で説明してくれたのが、勇者召喚についてだった。


この間に見たドライト達を捕まえたデカイ龍は、ガンジス、レムリア、モリオン、ヌーマと言い、銀龍ドライトの祖父と祖母だと言うのだ、そしてかなり高位の存在らしく、ハザ達が行う勇者召喚を余りしないようにと注意されたらしい。


と言うのも、早い話が拉致に近いので、された世界を管理する原始の神と揉めるから許可を取ってからするか、止めるようにと言われたのだそうだ。


「なので私達が勇者召喚を行ったとしても、ハザ様もアルレニス様も答えてくれないので召喚されるはずがないのです……」


「でも実際に俺達はここに居るぞ?」


俺がそう言うとエイミリアは視線を玉座の後ろに有る、アルレニスの神像に向けて言う。


「ええ、ですから今は神託を得るべく祈りを捧げているのです」


「なるほど……」


そう言って俺達もアルレニスの神像を見ていると、神像が輝き……どっかで見た気がする爺が現れた!


「ハ、ハザ様!?」


「その名前、なんかどっかで聞いた気が……」


「それに、あのお爺さんどっかで見たよね?」


「と言うか、アルレニス様は来ないのですね?」


「美人の変わりに爺が出てくるとは、納得ができん!」


俺、円、梨花、弘志の順でそう言うと、朝日が信じられないものを見る目でこちらを見て言ってきた。


「お、お前ら、本気で忘れたのか!?」


「あら、朝日君は知ってるのですか?」


「な!香織姉さんまで!?」


香織姉にまで知らないと言われてガックリとしている朝日と、呆気にとられているエイミリア達に俺達は見つめられながら、この爺さんが誰なのか思い出そうとしていたが、爺さんが俺達に向き直り自己紹介してくれた。




「わしがこの世界、アルレニアを創造した原始の神、ハザじゃ。

皆の者、楽にしてよいぞ」




なんか創造神が来たっぽい。

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