子龍編 アレクス観光 奴隷市編


うーむ……キャロ達には魔薬の事は言わないつもりだったんだがなぁ……


【そう言っても、もう喋っちゃったじゃないですか】


だってキャロが泣いてるんだもの!

……キャロの泣き顔を見てたら……ゾクゾクしてきちゃうじゃないか!


【セレナ様ー!この豚龍です!】


おおお!?なに報告しようとしてるんじゃい!?


【それは今のやりとりを……あれ?セイネさん曲がろうとしてませんか?

海猫の肉球亭に行くには、あっちだと遠回りでは……?】


おろ?道を間違えたのかな?




「セイネ!セイネ!」


「ドライト様、どうかしましたか?」


「道が違いませんか?

海猫の肉球亭に行くには今の道を真っ直ぐ行って広場を抜けた方が早いはずですよ?」


「あ、あの……そこの広場は少し大きめの……市がおこなわれているので人出もありますし……こちらから抜けて行こうかと……」


「大きめの市ですか?なら、そこを抜けて行くですよ?

社会見学なのですから、なるべく多くの市を見て回るのです!」


「! は、はい……ドライト様……」


「……?……セイネ、どうかした?

……言いたい事があるなら……ハッキリと言った方が良い」


アンジュラがセイネの頭をなでながら、そう声をかけると半泣きの顔を上げてアンジュラを見ると、何かを決意した顔でドライトを見た。


「アンジェ様……ド、ドライト様!」


「なんですか、セイネ?

あ、たとえセイネの嫌いな奴隷市でも行きますからね!?」


「……は?……え?なんで知って……!?」


「セイネのお母さんが奴隷で亡くなった後にお母さんの主人であり、あなたの父親でもある男に捨てられたのも知っていますが行きますよ!」


ドライトがそう言うとセイネは呆然としてドライトを見つめ、ハッとした表情でキャロリンとアレナムを見ると、キャロリンとアレナムは、


「「奴隷……?」」


っと不思議そうにセイネを見ていた。


『うそ……キャロとアレナムに奴隷の子だって知られた……?

どうしよう……どうしよう!絶対に嫌われた!!』


セイネはうつむき、顔を真っ青にしてガタガタと震えだした、目からは大粒の涙が流れている……

そんな、セイネに頭の上から語りかける人物が居た。


[ガブゥ!]


「ガアアァァァ!?」


「セイネ?あなたはそんなに弱い子でしたか?

ケリルとメネミや孤児院の子供達、トリア院長さんにセアースさんを守られるような大人になるんじゃなかったんですか!?」


いまだにセイネの頭にしがみついていたドライトヒロシ隊長にそう言われて、セイネは弾かれるように顔を上げてキャロリン達を見る。

ドライトヒロシ隊長はそんな3人を見ながら続けて言う。


「それにセイネはキャロとアレナムを信用しないのですか?

トリア院長さんやセアースさんはあなたが奴隷の子だと知っても態度を変えましたか?

それにセイネ?キャロは王族ですしアレナムはマクルイエ都市長の娘です、身分が違うと言うアホが現れたら友達を……親友をやめるのですか!?」


そんなドライトヒロシ隊長の言葉を聞いたセイネは真剣な表情でキャロリン達に話しかける、


[ガジガジ!]


「ガ、ガア!?」


「キャロ……アレナム……

私、奴隷の子供です、こんな私だけど……まだ、友達でいてくれる?」


そんなセイネを見てキャロリンとアレナムの2人は言う。


「セイネは、私が王族だから、友達を止める?

私は……身分とかそんなの関係なく、セイネと友達でいたい!」


「セイネ!そんな弱気なのはセイネじゃないわ!

それに……昔からの友達なんだから、今さら何があったって友達を止める気なんか、私には無いからね!?」


そう言われたセイネは大泣きしながら2人に駆け寄り抱きついた。


「ガジガジ……ゴリィ!」


「ガァ!……アンギャアアァァァ!?」


「キャロ!アレナム!」


周りの皆はそんな3人を暖かく見守っている、


「ふふ……良かったわね」


「うーん……美しい友情……心が洗われるわぁ……

だらだら寝ながら、美味い飯を食べるよりも洗われるわぁ……」


「メルクルナ、あんたのおかげで私の心はガックリときたわ」


「シリカ姉様……私もガックリときましたわ」


「うう、アレナム……良かったなぁ……あと、メルクルナは後で殴る!」


「ガジガジガジガジ!」


「ガオオオン!?」


「ってか!さっきから五月蝿ぇな!感動的シーンが台無しだろうが!」


そう言いながらカーネリアが騒がしい方向、キャロリンの方を見る。




だが、そこにはキャロリンと普通にキャロリンの頭にしがみついている、ドライトが居るだけだったが、


「ガジガジ!ガジィ!!」


「ガオン!ガオオオン!?」


何かをかじるような音がするとドライトが鳴いていた。


「ドラ公!やっぱお前かよ!五月蝿いから、少し黙ってろ!」


「リアの言う通りですわよ?

あなたの祝福を受けているキャロちゃんも関係している話なのですから、ドライトさんもシッカリ見守らないとですわ!」


「サルファの言う通りよ!ドライト、シッカリしなさい!

あと、アンジェはどこ行ったのよ!?セイネはアンジェの祝福を受けているのに!」


「……うーん?」


メルクルナがいぶかしげにドライトを見てると、ドライト大将が口を開く。


「ドライト総統が騒いでる理由とアンジェ姉さんの居場所が知りたいなら、キャロに後ろを向いてもらえば良いのですよ!」


「私がですか……?」


セイネとアレナムと顔を見合わせてからキャロリンは、皆に見えるように後ろを向く、そこには……


ドライトの尻尾にガッツリと噛みついているアンジュラがいた。

アンジュラが口をモゴモゴさせるとドライトは「ガアガア」言っている。


「あ、あんたら何してるのよ……」


皆が呆れてるなかな、シリカそう聞くとドライト大将が答える。


「アンジェ姉さんは、ドライト総統がセイネを泣かした事に怒って尻尾に噛みついたのですよ。

ドライト総統はそれが痛くてガアガアとしか言えないのです!」


ドライト大将がそう言うと、皆は呆れ顔だったが、メルクルナは眉を寄せてドライトを見ながら言ってくる。


「カジカジ!」


「ガアガア!」


「ドライトさん……本当に痛くて鳴いてる?

ガアガア言ってるけど顔はいつも通りなんだけど?」


そうメルクルナに指摘されると、ドライト大将が慌てて言う。


「な、何を言ってるのですか!?

このドライト総統の苦悶の顔を見なさい!痛くて痛くて、仕方がなさそうじゃないですか!」


「え~……そうかなぁ?」


「カジカジカジカジ……ガリィ!」


「ガアアァァァァぁぁあー茶が美味い……ズズズ……」


「やっぱり全然痛くなでしょ!?」


「ノーダメージかよ!」


「なら、なんでドライトは鳴いてるのよ……」


「なんでって、噛まれたら痛いからに決まってるじゃないですか!?」


「あ、あなたねぇ……」




そんな事を言っているとサルファが何かに気がつきアンジュラを見つめている。


「サルファ姉、どうかしたの?アンジェ見つめて」


カーネリアの問いかけにサルファは答えず、アンジュラに注目したままドライトとアンジュラに問いかける。


「アンジェ、あなた何時の間に小型化の術をマスターしたのかしら?」


「「………あ!」」


アンジュラはドライトと同じ位の1m程のサイズになり、ドライトの尻尾にしがみつき噛みついている。

キャロリンが不思議に思い、シリカに聞いてきた。


「シリカ様、アンジェ様が小さくなってるのはなにか特別な方法なのですか?」


「キャロちゃん、私達龍はね、歳を重ねて力が成長するほど体が大きくなるのよ……」


「ガンジス様達は本当の姿だと100m以上ありますわね?

それで問題は小さくなるにはその分、力を弱めないとなのよ」


「「ガンジス様達?」」


「ああ……アレナムとセイネは見たこと無いのか、龍神様方でドラ公の祖父母の事だよ」


「そー言えば、レムリア様がジェード王国で小さくなってなかったっけ?」


「キャロちゃんのステータスの事で行った時の事ですわね」


「バカねメルクルナ、あの時はレムリア様は、ご自分で弱体化して小さくなったって言ってた……って、あなたは気絶してたのか」


「まぁ、なんにしろ力が強ければ強いほど小さくなるのは難しいんだよね、、、」


「けど、さっき見た追い駆けっこではドライト様は小さくなったり大きくなったりしながら、凄い力を出していたような」


セイネがそう言うと、シリカ達が困ったように言う。


「それがね?ドライトはサルファが言った小型化の術って言う、独自の術を持ってるのよ、」


「その術で小さくなると弱体化しないのですよ……

改造した収縮法と重力魔法を使っているのは解っているので、私達も使おうとしたのですが……」


「俺達が使うと、何故か上手くいかないで弱体化しちゃうんだよなぁ……

なんか他にコツがあるみたいだけど、ドラ公は口割らないしさぁ……」


「でも、アンジェさんは弱くなってないわよ?」


そう言ってメルクルナは鑑定しているようで、目を細めてアンジュラを見ている。




「つまり、ドライトは私達には教えないけどアンジェには教えた、ってことよね……?」


シリカが目を細めてドライトをにらむとヤバイと思ったのか、ドライトがタネ明かしをしようとしたが、


「い、いえ、シリカ姉!

アンジェ姉さんに私が教えたんではなく、コネク!?アヒャヒャヒャヒャ!?」


「ど、どうしたのよドライト!?」


シリカ達は突然笑いだしたドライトに驚いたが、よく見たらアンジュラがドライトの尻尾を嘗めていた。

サルファがアンジュラをドライトから引っ剥がして叱りつける。


「何をしてるのあなたは!

レディ足るもの人前で異性の尻尾を嘗めるなんてことをしてはなりません!」


「いや、サルファ姉、叱るところはそこじゃないだろ……んで、アンジェは何がしたかったんだよ?」


「小型化の術の秘密……守りたかった……噛んでもドラちゃんには効かないから……嘗めた……」


「アンジェ、あなたね……何にしろドライト、アンジェ?説明してちょうだい」


アンジェは手で口を押さえるとそっぽを向いてしまった、それを見たドライトが説明を始める。


「スマドでコネクションシステムを調べると、ステラとルチルの教育用ってファイルがありますよね?

その中の『ドライト解説、世界の昔ばなし!』のフォルダの中に一寸法師って言うのがあるんですが、その中に小型化の術の解説が入ってます」


「ほ、本当だわ……」


「普通はこんなの見ませんですから、見逃してたのですわね」


「アンジェ……よくこんなの見つけたな」


アンジュラは解説を見つけられてしまったので、観念して話し出す。


「ステラちゃんとルチルちゃんが……小型化の術を練習してるのを見てたら……

やたらとその一寸法師にアクセスしてたから……気になって見たら、見つけた……」


「はぁ~……それでなんで俺達に教えなかったんだよ?」


「リア姉も憶えれば……分かる……」


アンジュラはそう言うと、またそっぽを向いて黙りを決めてしまった。


「はぁ?何言ってるんだ?」


「まあ何にしろ見てみましょうよ!」


「そうですわね……

え?こんな簡単な事で良いのですか!?」


「……ドラ公、本当にこれで上手くいくのか?」


「はい、皆は小さくなる時に無意識でそれぞれの龍珠も小さくしちゃってるんですよ……

龍珠が小さくなると私達は弱体化してしまいます、龍珠の機能がいちじるしく制限されてしまうからですね。

そこを気お付けて小型化の術を使用すれば良いのですよ!

と言うかそこに載ってる小型化の術は、そこら辺に対応したバージョンですから、そちらを使ってください」


そうドライトが言うと、早速カーネリアが試して小さくなっていく、そして、アンジュラやドライトと同じ1mほどのサイズになると、自分の体やステータスをチェックして満足そうにしている。


それを見ていたシリカは不思議に思った、何故ドライトやアンジュラがあそこまでして隠そうとしたのか?

小型化の術は確かに便利だ、だがそれだけの技なのだ……小型化の術でドライトは何かしらの利益を受けている?

小型化してドライトが何をしているか、キャロリン達の頭に乗っているだけだ。

メルクルナとキャロリンは特にお気に入りのようだが、セレナやディアンにシリカ達の頭に乗った事もある、だがそれがドライトの利益になっている……?


何故そこまで隠そうとしたのか?小型化の術のどこにそれだけの価値が有るのか?

シリカはそれを不思議に思いドライトを見つめているとキャロリンの隣で騒ぎが起きた。


アンジュラがセイネの頭の上にしがみついている、ドライトヒロシ隊長を引き離そうとして引っ張っているが、ガッシリとしがみついているドライトヒロシ隊長を引き離せず、セイネが「ひ、引っ張らないでください!」と半泣きになってしまっている。


それを聞いてアンジュラは引っ張るのを止め、ドライトヒロシ隊長の上に乗っかり頭に噛みついている。

だが、ドライトヒロシ隊長は噛みつかれてもセイネにしがみついたまま離れようとしない……そしてもう片方でも騒ぎが起こる、カーネリアが自分の状態のチェックが終ったのか、アレナムの頭に移動しようとしたようだが、こちらもドライト大将がガッシリとしがみついて離れる気配が無い。


「……おい、ドラ公!ちょっと退けって!私もアレナムの頭に乗りたいんだよ!」


「ドラちゃん……退いて?

セイネは私が祝福を授けたのだから……私が頭に乗るべき……!」


カーネリアとアンジュラがそう言いうがドライト達は聞く耳が無いとばかりに、そっぽを向いてセイネとアレナムの頭にしがみついている。


「これは遊びではないのですよ!?

私はセイネとアレナムを守る為に頭に乗っているのです!

だから、リア姉とアンジェ姉さんは人化して横に居れば良いのですよ!」


キャロリンの頭にしがみついている、ドライト本体がそう言ってアンジュラとカーネリアにセイネとアレナムの頭の近くから離れる様に言う、だがその時にアンジュラが小さく呟いた言葉をシリカ達は聞き逃さなかった。


「……やっぱり気持ち良い……間にドラちゃんが居なければ……もっと気持ち良いはず!」


「へ?……それって、どー言う事だよアンジェ……?」


カーネリアはそう言いながらアレナムの後ろに回り込み、アレナムの頭に着陸しようとした。

ドライト大将は口を開けて威嚇していたが、後ろから来られてしまったのでカーネリアに楽々と着陸されてしまう、間にドライト大将を挟んだ状態だが、アレナムの頭に乗ったカーネリアは驚いて叫んだ。


「な、なんだこれ!?スゲー気持ち良いんだけど!?」


カーネリアがそう叫んだのでシリカとサルファは驚愕の表情で、カーネリアを見ている。


「リ、リア?気持ち良いってどういう事なの!?」


「い、いや、なんか下から気持ち良い物が……何なんだこれ!?」


「アンジェ?もしかしてあなたも……?」


「セイネの頭の上……凄く気持ち良い……」


そこでシリカは気がついた、ドライトが小型化の術の公開せずに秘密にしていた理由……ドライトが受けている利益がなんなのかを……


「ふふふ……ドライト?バレちゃったわね?」


そうセレナに言われるとドライトは悔しそうに言った。


「ううう、ずっと私と妹達で独占するつもりでしたのに……」


「セレナ様はご存知なのですね……ドライト?皆に説明してくれるわよね?」


シリカに言われてドライトは渋々、どう言う事か語りだした。




そして説明を聞いて納得したシリカが言う。


「魂を感じ取れる高位の存在である、私達龍は綺麗で格の高い魂の側に居ると心地良いかぁ……」


「はい、特にキャロやセイネにアレナム、アンディ王太子さんのように祝福を受けた方の側にいると、共鳴して凄く気持ち良いんですよ」


「あら?なら何故ドライトさんはメルクルナさんの頭にもよく居るんですか?」


「メルクルナさんは最上級神ですよ?魂の格は問題ないほど高いですし、龍神の祖父ちゃん祖母ちゃん達が気に入る程に綺麗な魂してますからね……

それと、私とメルクルナさんはキャロに祝福あげてますからね……おたがいに魂を感じやすいんでしょうね」


「……あれ?私はドライトさんが頭に乗ってても気持ちが良くなったりしないんだけど?」


「そりゃ、乗ってるのが私だからですよ」


「ああ、なるほど!」


メルクルナは納得しているが、シリカ達は理解できずに聞いた。


「どう言う事なのよ?」


「そりゃ、心根から何から真っ黒なドライトさんだ、あぶねぇぇ!?」


メルクルナが身を屈めると頭が有った辺りにドライトが放った、レーザーの様なブレスが通り過ぎて行った。


「失礼すぎますよ!?」


「あ、あぶないじゃないですか!当たったらどうするつもりなんですか!?」


「当っても、頭が無くなるだけですから問題ないですよ?」


「そ、そっか……頭無くなったら痛いじゃないのよ!?」


ギャーギャーとドライトとメルクルナが揉めていると、キャロリンが言ってきた。


「あ、あの、メルクルナ様、頭が無くなったら死んでしまうかと……」


「キャロ、こんなんでもメルクルナさんは最上級神ですから、その程度で消滅したりしませんよ?

何にしろ、私が頭にしがみついてても何にも感じないのは家族とキャロ以外はブロックしているからです。

本来ならメルクルナさんの様な格の高い神もブロックしているはずなんですが、初心者のメルクルナさんはブロックしきれていないのですよ」


シリカとサルファが、


「なるほどねぇ……だからあんなに争ってるのか……」


「そんなに良いものなのですね……」


っと言って、セイネとアレナムの方を見ると、それぞれの頭の上でアンジュラはドライトヒロシ隊長の頭をカジって、カーネリアはドライト大将の頭をポコポコ叩いて退かせようとしていた。


「ドラちゃん……あっち行って……」


「アレナムに祝福あげているのは俺なんだから退けよ!」


だが、ドライトヒロシ隊長もドライト大将もガッシリとしがみつき離れる気配がない。

それを見ていたセレナが


「ドライト?祝福を授けた者が優先よ、退いてあげなさい?」


と、言ったのでしぶしぶセイネとアレナムの頭の上から退去したのだった。




ひと悶着あったが奴隷市が開催されていると言う広場からは、活気と喧騒が伝わってきて賑わっているのがよく分かる、広場がよく見える場所まで来ると奴隷市を見てキャロリン達3人だけではなく、アンディ王太子達ジェード王国一行やクロワトル大陸の面々も、呆然としてその光景を眺めていた。


「言葉もありませんか……

まぁ、そうですよね?こんなに狭い公園でもこれだけの人種が、これだけの人数が売られているのですから……

これでもここに居た奴隷商人の3分の1は逮捕したのですよ?

違法と知っていながら騙して奴隷にした、奴隷狩りで無理矢理奴隷にした、などの理由でです!

見なさい……エルフに獣人、フェアリーや小さな子供達まで売りに出されています……

アレクスが何故独立したのか!アサセルム同盟が何故結成されたのかを、あなた方はもう一度よく考えなさい!」


そう言って、ドライトはアレクスとアサセルム同盟の関係者に指を突きつける!

そして、それと同時にドライトはシリカに殴られた。


[ボガ!]「痛いですよ!?」


「ド、ドライト、あれはなんなのよ?」


「な、なにって奴隷市ですよ?」


「そっちじゃないわよ!客よ客!」


そう言って、シリカは客達を指差す。

奴隷市は奴隷商達がステージを造り、ステージの横に奴隷が居てそれを客が見定めて、気に入った奴隷がステージに上がると競って買うと言うオークション方式になっていた。


そして、シリカ達が指差した客達はと言うと、


「金貨5枚です!5枚で買いですよ!」


「なんの!なら私は6枚で買いますよ!」


「そこの小さな子供達をまとめて金貨3枚でどうですか!?」


「まだ、ステージに上がっていないのに奴隷商と交渉するのはズルいですよ!」


「ダークエルフの魔導士ですか!このエメラルドで買い取りましょう!」


「早く!早く次の奴隷を出すですよ!」


「我々は資金だけなら、やたらと有るのですからね!早くドシドシ奴隷を出すですよ!?」


ドライト達しか客は居なかったのである!




「な、なんでドライトさんが奴隷を買ってるんですか……」


サルファがそう言ってガックリとしていると。


「いや……さっき奴隷商を逮捕したって言ったじゃないですか?

ついでに客の方も調べたんですけど、全員犯罪者でして……逮捕したら、お客さんが居なくなっちゃったんですよ……

まさか、客の方が犯罪者が多いい、と言うか、犯罪者率100%とは思わなかったんですよ……」


「だからと言って、なんであなたがオークションで買い取りしてるのよ」


「キャロ達に雰囲気を味わってもらう為ですよ!

あと、意外と面白かったんです……」


等と話していると、メルクルナが突然に目を見開いてステージに向かって行く。


「ぬおおぉぉりゃゃゃゃあ!」


ステージとの間に居た、ドライト商人達を吹き飛ばしながらステージの目の前に行くと、そこには12歳位の女の子が立たされていた。


「え、ええっと……」


ステージに立つ商人は目を皿のようにして、女の子を見ているメルクルナにドン引きしながら固まってしまっていたが、ドライト商人達に早く進めなさい!っと怒鳴りつけられて慌てて説明をする。


「こ、この子は帝国の出で、この歳ながら読み書きに礼儀作法もしっかり教えられています!」


「「お〜!」」


「また、かなりの教養もあり、人に仕える事も仕込まれています!」


「「おお〜!」」


「しかも!しかもですよ……!?この歳にして優秀な剣と回復魔法の使い手です!!」


「「おおお〜!!」」


「しかも、この美しさ!そして奴隷になりながらもこの目の力強さ!どうですか?掘り出し物だと思いませんか!?」


「す、素晴らしいですよ!」


「ほ、掘り出し物です!」


「そりゃ帝国の皇女で、私が聖女の称号をあげた、お気に入りの子だからね!」


「金貨100枚です、100枚出しますよ!」


「私は150!150枚ですよ!」


「あ、こら!オークションを始めるな!」


「五月蠅いですよ?邪魔ですから向こうに居るです!」


メルクルナが何か騒いでいるが、ドライト商人達に囲まれると持ち上げられて、ドライト達の元に放り投げられてしまった。


「おおお!ま、またも尻を打った……ってそれどころじゃないわ!

ドライトさん金!金貸して!」


そう言っていまだに呆然としている一向、キャロリンの頭にしがみついてるドライトに手を差し出す。


「おや?メルクルナ様ではないですか……何時もご贔屓にしてもらっています、ドライト商会の会頭、ドライトです」


そう言うドライトは、何時の間にかドジョウ髭が生えて、イスラム商人が巻くような白いターバンを頭に乗せていた。


「いやな予感がするけど、金貸して!あの子を私の手に取り返すのよ!」


「よろしいですが……何か担保はございますか?」


「ちょっと!私は最高神で最上級神たるメルクルナよ!信用貸しでお願いします!」


「申し訳ありませんが、神に対しての信用貸しはしないように、ユノガンド様に言われているのですよ……ですから、担保を出してください」


「だああぁぁぁ!ユノガンド様のアホゥ〜……!

わ、分かった!世界の管理維持権限の1週間の譲渡でどう!?」


「よろしいですけど……一体いくらお借りしたいのですか?」


「……ちょっと聞くけど、あそこに群がっているドライト商人達っていくら位持ってるの?」


「今の所一番多く持っている者で、金貨1000枚はいかないですね」


「金貨1000枚でお願いいたしゃす!」


メルクルナがそう言いながら手を出すとドライトは重そうな麻袋を手に乗せた、それを持ってステージに突進するメルクルナ、またもやドライト商人達が吹き飛ばされていく。


「メルクルナさん、ついでに日頃の恨みでわざと私達が多い所を通っていませんか!?」


ドライト商人が何か言っているが、それを無視してメルクルナはステージの端まで来ると、


「ええぃ!金貨850枚で「金貨1000枚よ!」!?」


特に身なりの良いドライト商人の言葉を遮って、メルクルナはステージに金貨の入った麻袋を叩きつけた。


「「おおお……!」」


「き、金貨1000枚です!1000枚が出ました!」


「大台に乗りましたよ!」


「これで決まりですね!」


ステージの上に立たされている少女はメルクルナを見て驚愕の表情をするが、すぐに嬉しそうに跪き頭を垂れる……

メルクルナもこれでこの少女を引き取れる!と満面の笑みでステージに立つ進行役の商人を見る。


「え、えっと……金貨1000枚!金貨1000枚です!これ以上の方はいらっしゃいませんか!?

……では、この少女はこち「金貨1100枚ですよ!」え!?」


そう言って、別の麻袋がステージに置かれる、そして置いたのは何時の間にかキャロリン達3人とシリカ達を連れてステージの側まで来ていた、ドライト会頭だった!




「……へ?」


「……え?」


メルクルナもステージの上に立つ少女も驚き固まっている。

キャロリン達はドライトを諫めている。


「ド、ドライト様!

この方は、メルクルナ様に聖女と認定されているのですから、メルクルナ様にお譲りするべきかと!」


「キャロちゃんの言う通りです、ドライト様、メルクルナ様がお可哀想ですし譲ってあげてください!」


「ドライト様、メルクルナ様が完全に固まっていますよ!石化したレベルです!」


等と言っているがドライトは龍の眼で視ているのか、目を細めて少女を見ながら


「何を言っています!ここはオークション式の奴隷市です!お金をいっぱい出した人が購入する権利があるんですよ!

剣術と回復魔法の高い適性が有って、メルクルナさんの加護に聖女の称号とシリカ姉の祝福を受けている、レアな……あれ!?」


っと突っぱねようとして、自分が言った言葉に驚き、ステージの上の少女を見直している。

そこにシリカが龍の姿に戻ると同時に小型化の術を使い、1m程のサイズになってステージの上に立つ少女の頭に着陸して言った。


「ごめんね、ドライト、メルクルナ、視たらひと目で気に入っちゃったのよ!

これでこの子……レイナ・イム・フシャスは私の者ね!あ、支払いはドライト、旦那様に任せるわ!」


「あれ……?」


「ふへ……?」


「「「流石はシリカ(姉様、姉御、姉)!」」」


ドライトとメルクルナは何が起こったのか解らずに呆然として、サルファ達は流石!っと尊敬の視線をシリカに向けているのだった。

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