子龍編 アレクス観光 休憩編

うーん、困りました……


『ちょっとドライトさん、どーするのよ?まさか闇市に……奴隷市に連れて行くの?』


どうするもなにも、アンディ王太子さん達は連れて行くつもりだったんですが、キャロ達にはまだ早い気がしますし……


『でも、キャロちゃんも連れて行かないと、キャロちゃんは納得してくれないでしょ?』


だから、困ってるんじゃないですか……




「キャロ、別にアレクスを嫌っているわけではないんですよ?」


「そうそう、キャロちゃんの気のせいよ!」


「ウソです!普段お優しいドライト様がアレクスをブレスで滅ぼそうとしました!

それにさっきはメルクルナ様と一緒にアレナムちゃんを遠ざけようとしています……

メルクルナ様?アレナムちゃんは信徒として不適格なのですか?トリア院長様やシスターセアース様も認める程の信仰心を持ち心優しいアレナムちゃんを、何故御避けになるのですか?」


「えっと、さ、避けてない……かな?」


「マクルイエ都市長様にしてもそうです、しっかりとした為政者で民の事を考える素晴らしい指導者だとアンディお兄様が言ってました!

なのに……なのにドライト様とメルクルナ様は御認めになっていません!

不敬なのは承知でお聞きします……何故、ドライト様はアレクス滅ぼそうとしたり、占領しようとなさったのですか?私の為だけではないですよね!?

メルクルナ様は何故ドライト様を御止にならないのですか?常に我等を見守り、慈しんでくれるメルクルナ様なのに、今回は放置していました……何故なのですか!?」


「「キャロちゃん……」」


「うーん、ドライト、メルクルナ、これはキャロちゃんの勝ちね?

あなた達2人ともキャロちゃんに祝福を授けてるのに、キャロちゃんを不幸にして良いの?泣きそうよ、彼女?」


「ううう、シリカさん、ドライトさんどうするのよ……?」


「仕方ありませんね……本来ここからはアンディ王太子さん達だけ連れて行く予定でしたが、キャロ、それとセイネにアレナム、あなた達もついて来るのですよ?」


「「私達もですか?」」


「そうです……自分達の街の現状を知るのに良い機会でしょう、ドライト大将と精鋭のドライトヒロシ探検隊が護衛しますが、これらを身に着けていてください私が作った装備です、トリア院長さんにセアースさん達もですよ?

アンディ王太子さん達は依然差し上げた物を身に着けてくださいね?マクルイエ都市長達は……頑張ってください!」


「あ、あのドライト様、私達にこの様な装備をさせて、どちらに?」


「……アレクスの朝市が終るのと同時にスラムで始まるもう一つの市……闇市に行きます!」


こうしてドライト一行はアレクスのスラム街へと向かうのだった。




「あ、あのドライト様……?」


「アレナム、良いですか?あなたがアレクスを愛し、守りたいという思いは素晴らしいものだと思います」


「い、いえ、あのですね?」


「しかし、このアレクスにもスラム街はあります!

そして、そのスラムで行われる闇市は各国の政府と商人達に有名なのですよ……悪い意味でです!」


「は、はぁ……」


「はぁ……じゃありませんよ!?ちゃんと聞いてるんですか?」


そう言ってドライトは左右に居るセイネとアレナムを見ると、2人とも微妙な顔をしてドライトを見返してきた。


「なんで2人して微妙な顔してるんですか?

セイネもちゃんと聞くですよ!」


「そうですよ!大事な話をしているんですからね?」


「水曜特番!ドライト総統に襲いかかる巨大な影!その時何が!!」


「「え、えっと……」」


セイネとアレナムはなんと答えれば良いのか判らずにキャロリンの方を見ると同時に、カーネリアがドライト達を殴った。


[ガン!] [ゴン!] [パフ!]


「パフ!?い、いや、ドライト!

お前達がセイネとアレナムの頭にしがみついてるから、気になって集中できないんだろ!」


そう、キャロリンの頭にはドライトが、セイネの頭にはドライトヒロシ隊長が、アレナムの頭にはドライト大将が1m程のサイズになってしがみついていたのだ!


「リア姉!護衛ですよ、護衛!セイネとアレナムはキャロを見習って自然体で居るですよ!」


そう、ドライトが言うがキャロリンは別の事が気になり、その事を聞いてきた。


「あ、あの、ドライト様に襲いかかった巨大な影ってなんだったんですか?」


「ああ……キャロがジェード王国の学園に通う初日に、私も巣を抜け出して学園の入学式に向かったんですよ、父様と母様にばれないように飛ばないで向かったのですが……」


「ドライト様が来られたのは入学式が終わってからでわ?」


「ええ、なんとか入学式に間に合うように平原を走っていたのですが……

結局父様と母様にばれて追いかけっこになっちゃって、捕まっちゃったんですよ、つまり私に襲いかかった影とは……父様と母様の事ですよ!」


「「「………」」」


「ドライトさん……それって、面白いの?」


「祖父ちゃん祖母ちゃん達には大好評でした!」




などと話していると後ろからボソボソと話し声が聞こえる。


「ア、アンディ王太子様、あれってドライト様だったのですね」


「ああ……色々調べていたのだが判らなくて当たり前だな」


「ティナさん、アンディ王太子様、あれって何ですか?」


「セアースさん、キャロリン様の入学式の日に魔物の暴走が有ったんですよ……」


「オーガも百体近く確認されたオーク1500とゴブリン1万の大群で、特殊個体も確認されていたのです、王都からはかなり離れた場所だったので王都には警報を出さず、混乱を避けるために貴族だけでなく王族の子弟達にも知らせずに討伐しようとしたのですが……」


「ある地方都市でね?結構な民が逃げ遅れちゃったのよ……

原因は魔物達の進路から外れてた周りの村や防備の薄い町から自分達も襲われるって、民が逃げて集まっちゃったからなのよね、それで防衛のために周りから兵力をかき集めてたんだけど」


「指揮官として私とティナが転移陣で移動して指揮を執っていたのだけど、目視できる所まで魔物達が来たら……報告よりも数が10倍以上に膨れ上がっててね」


「そ、それって相当まずいんじゃ……」


「ええ、どうも周りの別のグループが合流したみたいで、増えたみたいなんですよ」


「御2人とも、よく御無事でしたわね?」


セアースがそう言うと、アンディ王太子とティナは顔を見合わせる。


「正直、死を覚悟しました。

周りの側近や民達にティナは私だけでも逃げてくれと言ってくれましたが……」


「部下や民達を置いて逃げる卑怯者になりたくないと頑として受け入れてくれずに、あと、愛する私を置いていけないとも言ってくれまして……!」


「あらぁ、ティナさん羨ましいです……私も言われてみたいですわ、アンディ王太子様……」


「は、はい、そのうち……っと言うかそう何度も起こられても困るのですが……

何にしろティナや兵士達と城壁で防戦するために魔物達が来るのを待ち構えていたらですね」


「セアースさん、何も私の目の前で言わなくても2人になった時に……あ、そうしたら北西の方角から物凄い土埃が上がって、何かが魔物の集団に突っ込んだんですよ、それはそのまま通過して行って王都の方角に去って行ったんですが……」


「土埃が晴れたら魔物達は……粉々になってました」


「はぁ?え?粉々?ドライト様はブレスで薙ぎ払ったとかじゃないんですか?」


「違いますね、ブレスや魔法の痕跡は一切ありませんでした」


「ドライト様が先程映像記録が有るような事を仰ってましたが、私達も見れないですかね?」


「見てみたいですね……」


そう言って3人はキャロリンの頭にしがみついているドライトを見る、周りで話を聞いていたトリア院長やマクルイエ都市長達にジェード王国の面々も見つめていると、視線に気がついたドライトが振り向いて聞いてきた。


「どうかしましたか?」


アンディ王太子達は顔を見合わせると思い切ってさっきの話をして、映像を見せてもらえないか聞いてみた。


「ああ、その映像ならありますよ!

後々の凛々しくも凄まじい力で私を捕まえようとする父様と、美しく素早い動作で捕まえようとする母様のメイン部分の導入として、最初の方の他愛もない話として編集してあります!」


そんな話をしているとメルクルナがやってきて。


「あーあの、魔物の大虐殺と怪獣大決戦映像か……

トリアちゃん達も見ときなさい、アスモデル達も神界メルクの街に居るマルキダエル達も見ときなさいよ?

ドライトさんの恐ろしさの一端が見れっから」


「駄神、私の小さな冒険と家族のアットホームな映像に何言ってるですか!噛みますよ!?」


「まぁまぁドライト、小さい子達は疲れたようだし、それって私達も見た事なかったのよ、ちょうど良く広場に出たから休みがてら見ましょう?

アスモデル達はこの後は子供達を孤児院に送るんでしょ?」


「はい、ドライト様とメルクルナ様が小さな信徒様達には教育に悪い場所だからと……」


「ドラちゃん……Screening(スクリーニング)!」


「分かりましたよ、一休みしますか」


こうして上映会が始まったのだった。




上映が始まると世界樹の巣が映し出される、ドライトが日向ぼっこしながらコロコロと転がり、まだ卵のステラとルチルに近づいて行く。


『ステラ、ルチル、起きてますか?』


『『にーちゃ、どうかしたの?』』


『私はちょっとキャロに会いに行ってきますので、待っててくださいね?』


『えーすぐ帰ってくる?』


『怒られるよー?』


『キャロが学園に入学するんですよ!是非この目で見ておきたいのです!

という訳で行ってきますので、見張りの祖父ちゃん祖母ちゃん達の気を引いておいてください!』


『『しょーがないなー……じいちゃー!ばあちゃー!』』


「ん?急にどうしたのじゃ?」


「拭いて貰いたいのかしら?」


そして祖父ちゃん祖母ちゃん達がステラとルチルに集中した隙に、ドライトは結界に小さな穴を一時的に開けて抜け出したのだった。




「うへ!結界に一瞬だけ気づかれない様に穴開けやがった!」


「ディアン様とセレナ様が構築した多重結界をあっさりと突破しましたわね」


「まだ子龍になりたてなのにね」


「……続き見よ?」




そしてドライトは龍神達に気づかれない様に飛ばずに凄まじい勢いで世界樹の幹を駆け降りて行く、途中に有ったクイーンビーとキングワスプの巣に近づくと速度を落として止まり、魔力を渡してクリーンや回復の魔法をかけて蜂達が元気になったのを確認する、するとクイーンビー達が蜂蜜をドライトに捧げてきた。


それをドライトが亜空間にしまうと、数千の蜂達も亜空間に入れてまた駆け降りて行き地上を目指す。


ほんの数分で地上に近づくとドライトは1度だけ羽を広げ一気に速度を落とす、そして地上に降りると凄まじい勢いで走り出す、そして10分ほど走ると綺麗な花が咲き誇る場所に出た。


その花畑は不思議な事にそのシーズンには咲かない花や、一緒には咲きにくい花々が共に咲き誇っている、そこは蝶やフェアリー達も飛んで蜜を吸って遊んでいる幻想的な風景だった、そんな花畑の中にドライトは入り込むと立ち止まり花を幾つか摘まんで観察する、その間に亜空間を開くと次々と蜂達が飛び出して花から蜜を集め始めた。


ドライトは観察を終えて花畑中に魔法で雨を降らせるが不思議な事に蜂達や蝶には雨粒は当たらない、フェアリー達はドライトが来たのを見ると葉っぱの傘を取り出して今か今かと待ち構えていた、雨が降り始めると雨の中を飛び回り遊んでいる。


そんな中、本来キングワスプは餌場を守る為に蝶やフェアリーに攻撃するのだが、まるで蝶やフェアリー達を守る様に飛びまわっている、そして雨が止むと少し元気のなかった花々が元気になり綺麗に咲き誇っている。


それを見てドライトはうなづくと蜂達に向かい、


「蜂さん達はすいませんが、帰りは向こうの転移陣で帰ってください。

魔力と魔素は十分補充してありますので心配ありませんよ!では、行ってきます!」


そう言って、また走り始めたドライトを蜂達や蝶達は羽ばたいて、フェアリー達は手を振ってを見送るのだった。




「ドライトさんたら、あの凶暴なキングワスプまで飼い馴らしたのですわね」


「フェアリー達……可愛かった……」


「ってか、前にはあの場所に花畑なんか無かったから、ドライトが造ったんだろうな」


「ドライト、あなた何時から巣を抜け出してたのよ……それにあそこ、かなり巧妙に隠して結界を展開してるでしょ?」


「あそこ、私がたまたま見つけて近づいたら、蜂達の特殊個体が襲ってきたんだけど?

ドライトさんが、すっ飛んで来たら蜂達はパトロールに戻って行ったけどさ……まさかあの特殊個体も飼い馴らしたの?」


「ハハハ……メルクルナさんたら何言ってるんですか!偶然ですよ!そう、偶然!」


「あ、キングワスプがオークやらゴブリンやら狩って持って来ましたわね?」


「クイーンビー達が肉団子にして、蜂達の幼生体に与えてるんだけど……」


「ああやって……特殊個体を育ててる……誰かが教えた……」


「早送りして続きを見るですよ!」




ドライトが早送りすると映像の中でドライトは平原に飛び出していた、途中の世界樹の森でブラックオーガやレッドラインスネークなどの、特殊個体の魔物を見つけると木の弓を取り出して射貫いて倒すと亜空間に収納していたようだったが……


とにかく平原を爆走するドライトは更に速度を上げて行く、途中の小山に近づくと何やら街らしきものが見えてくる。

小山を囲むように柵が造られて、中心部の小山の頂上には宮殿らしき建物まで有るそれは、オークの大規模な街だった、オーク達の数は数万はいて使役されているゴブリンにトロルも数多く見える。


もはや国家で対応する規模になっているが幸い強敵の多いい世界樹の森には入らず、人里からもかなりの距離がある為に不幸な女性は居ないようだ。

だが、このままでは何時かは被害が森に住むエルフや近くの集落に及ぶのは間違いない規模になっていた。




「そうか!ここから弾き出されたオーク達やゴブリン達が暴走してあの街に来たんだな!」


「なるほど……世界樹の周りは魔素と魔力が豊富にありますからね、それで増えてしまったのでしょう」


「アンディ様!セアース様!そんな事言っている場合ではありません!早く王国に伝えて討伐軍を組織しなければ!」


「いや、ティナ……たぶん、ほら、ドライト様が向きを変えた……」


「あ……」




映像の中ではドライトが向きを変えてオーク達の方に向かう、手には世界樹の枝葉で作られた弓を手にしている、そして上空に向けて矢を放ち始めた。

その速度は凄まじく1分間に数万本の矢が放たれている、そしてドライトはオーク達の近くに来ると周りを回り始める、矢はまだ一本も降りて来ていない……


そしてドライトの後ろには転移陣が何時の間にか幾つも現れ、中からクイーンビーの特殊個体でメイジやプリーストタイプに、キングワスプの特殊個体のナイトやガーディアンなどに、珍しい指揮個体であるジュネラルが数万の蜂達を引き連れて待機していた。


ドライトが矢を放つのを止めてオーク達に向かうと同時に蜂達も侵攻を始める、オーク達も気がつき騒ぎ始めると同時に矢が降り注いだ……


それは矢の雨、しかも豪雨と言っていいほどの量が降り注いだのである、矢の雨が終ると数千まで減らされたオーガやトロルの一部にオークやゴブリンの上位種と残ったオークとゴブリン達に蜂達が襲いかかる、同時にドライトは短槍を取り出すと一瞬で数百本を投げつけた。




「す、凄まじいですね……」


「あ!オ、オークエンペラーだ!」


「伝説の個体だぞ、短槍で頭を打ち抜かれて倒されたな……」


「なんか、ドライト様はワザと数残してません?」


「ああ、上位種や特殊個体にオーガやトロルを一定の数残しているみたいだな」


「蜂達の……訓練に使ってる……」


「オーク共が可哀想に思えてきたぜ」


「メルクルナさんが魔物の大虐殺って言ってた意味が分かりましたわ……」


「偶然って恐ろしいですね!

たまたま放った矢と短槍が魔物達に当るとは……蜂達も突然現れて……本当に偶然とは恐ろしいものです!」


「ドライト、黙って」


「はい」




オーク達が壊滅すると、クイーンビーがオークとの戦い……オークの駆除の後始末として肉団子を大量生産し始め、魔法袋にドンドン詰め込んでいる。

ドライトはそれを見てニコリと笑うとそのまま元の方向に走り始めるのだった。


そして、ドライトがまた早送りすると、時々魔物の討伐をしながら平原を爆走していくドライトの映像が少し流れる。

そして問題の地方都市の防衛戦へと映像が切り替わった。




「……あれ?アンディ王太子さんですかね?」


ドライトはジェード王国の軍が集結しているので、地方都市や暴走している魔物達をスルーしようとしていたのだが、アンディ王太子が居るのに気がついたようで向きを変えた、地方都市の方向に。


「まったく!今日はキャロの入学式ですよ!

アンディ王太子さんが居ないとキャロが悲しむじゃないですか!一言怒ってアンディ王太子さんも連れて行くですよ!」


そうドライトは言うと地方都市に向かってさらに加速する。

だが、魔物達がドライトに向かって吠えると、ムッとして魔物達を見る。


「なんですかコイツらは?

私はアンディ王太子さんに大事な用がある……あ!アンディ王太子さんはコイツらと戦う気なんですかね!?

あの地方都市に軍が集結してますが、民も結構居ますね……アンディ王太子さんの性格だと逃げるのを良しとせず、迎え撃とうとしてるんでしょうね」


ドライトはそうつぶやくと、目を細めて地方都市を見つめる。


「ティナさんも居るようですね……あの2人なら勝てるでしょうが怪我をする可能性が高いです。

そして、2人が怪我をするとキャロが泣きます!

と、言うことで魔物達には私の新たな技で粉々になってもらいましょう!」


ドライトはそう言うと魔物の集団に向きを変え加速する。


「必殺!グリ◯走り!」


ドライトはそう叫ぶと同時に何かを食べ、手を広げ腕を上に向けて姿勢は真っ直ぐになり走り始める。

明らかに腕を振って走ってた時より走りにくそうなのに速度が上がる。


「一粒で時速3675Kmですよ!」


色々おかしいがとんでもない速度で魔物達に向かうドライトは突入する寸前にさらに何かを2つ食べる。


「そ~れ、マッハ9!」


ドライトは魔物の集団の中を縦横無尽に走り回る、そして1分も経たずに飛び出すと、そのまま王都に向かい走り始めた。

そして、ドライトが走り去った後には粉々になった魔物達が残っているだけだった……




「そう言う事か……」


「剣術でソニックスマッシュと言う技が有りますけど……あれの大規模番?」


「ティナさん、大規模すぎますよ」


「ドライト様が何かを食べたらスピードが上がりましたが、何かのポーションみたいな物なのでしょうか?」


「キャロちゃん、速度の宝玉と言う素早さが上がる物があるそうですから、似たような物なんではないですか?」


「え~、あれって食べ物じゃないじゃん?」


「セイネ、だから似た物って言ってるじゃない!」


「いや、アレナム、ありゃただのキャラメルだな」


「「「ええぇ!」」」


キャロリン達だけではなくアンディ王太子達も驚いてる。


「ドライトさん印のキャラメル、美味しいですわよ?」


「いやサルファ、そう言う事じゃなくてね」


「……それより私は……あの走り方であの速度が出る方が……気になる」


「なぁ~ドラ公、お前どうやったらあの速度出せるんだよ?」


「速く走れば良いんですよ?」


「「「………」」」


「何にしろ、ここからがメインの家族のアットホームな映像ですよ!

まぁ、アンディ王太子さん達は戦闘シーンが見たかったみたいですから、ここからは退屈かもしれませんね……飛ばしてしまいますか?」


「アンディさん達に天使達も!

ここからのは絶体見ときなさい!?さらに恐ろしい物が見れっから!」


「……メルクルナさんは見た事あるんですか?」


「夜にドライトさん一家が制御管理室で見てたのよ……

当番だった、アドナキエルとバキエル、それと竜人達の幹部は見てたわね?」


「竜人達も見てた……?聞いてない……」


「フルがドライトさんに上映会するって聞いて、ハマリエルと竜人達を呼んだらしいのよ、見終わったら青ざめて見なかった事にしようって言ってたけど……」


「皆で失礼ですね……まぁ、この映像を観ればほっこりすると思いますよ!」


そう言ってドライトが再度早送りをすると、平原を爆走する映像が少し続いた、そして。




「この調子なら早めに着きますね……キャロ、待ってるですよ!」


そうドライトがつぶやいた瞬間、ドライトは影に覆われた。


「……あれ?雲ってきましたか?」


ドライトはそう言って上を見る、そこには黒い龍と白い龍が飛んでいた。


「おお、父様と母様によく似た龍が飛んでいますよ!

……父様と母様じゃないですか!な、なんでここに居るのがバレたんですか!?」


「ドライト!勝手に何処に行こうと言うのだ!

先程お前の力を感じて急いで飛んできたのだ、さぁ!巣に帰るぞ!」


「まったく!お父様とお母様達からドライトが消えたと報告を受けた時はビックリしましたよ!

さぁ、帰ってお仕置きです!」


どうやら先程マッハ9を出した事で感知されてしまったようだった。


「や、やはりマッハ9は出し過ぎてしたか!?マッハ8.9位に押さえとくべきでした!

何にしろ帰るのは嫌ですよ!一目だけでもキャロを見るのです、諦めませんよ!」


ドライトがそう言うと更に加速して逃げて行く、それをディアンが捕まえようと急降下して来た。


「ドライト、諦めて帰るのだ!」


「加速ですよ!」


ディアンがそう言って捕まえようとした瞬間ドライトは急加速ししてスルリと逃げる。


「こら、ドライト!大人しくなさい!」


加速して逃げた先にはセレナが待ち構えていて、捕まえようとしたが


「右に曲がりま〜す!」


セレナの手の届く寸前で右に直角に曲がる、速度は一斉落とさずに。


「まったく、ちょこまかと……それぃ!」


ディアンは逃げ回るドライトに向かい爪から斬撃を放ち、周りの地面ごと空中に吹き飛ばす。


「なんの、ですよ!」


ドライトは周りに吹き飛んだ岩を蹴ると、ディアンの手から逃げ地面に着陸する、そして15m程のサイズになりドタドタと地響きを響かせて逃げる。


的が大きくなれば捕まりやすい、セレナは諦めたのかと思い一気にドライトに近づくと、抱き抱える様に捕まえようとした。


「バックしますよ!」


だが、ドライトはいきなりバックした、しかも一気に体を縮めて、1m程になりながら。

セレナはいきなり変わったサイズに目測を誤り、ドライトを取り逃がす。


バックしながらも速度は変わらずに逃げて行くドライト、そこにディアンが忍び寄ったが再度ドライトは大きくなりながら一気に前進した。

ディアンも目測を誤り逃げられるが、そこにセレナが上空に舞い上がり拡散型のブレスを放った、再度地面が吹き飛びドライトも一緒に舞い上がる。


「キャホーイ!」


だが、ドライトはここでも縮んだり大きくなったりしながら、舞い上がった岩や土くれを利用して逃げる。


「そら!」


ディアンが掛け声と共にドライトの進行方向の地面をシッポで叩くと、地面は吹き飛び数キロは有りそうな谷になった。


「ウヒョー!」


ドライトは谷に向かってジャンプすると舞い上がっている、地面を巧みに足場にして向こう側に向かう。

しかし、谷底から凄まじい勢いで上がって来たディアンに、とうとうドライトは捕まってしまった。


「ウキャー!」


ディアンはシッポで地面を叩き割ると同時に出来た谷間に素早く入り込み、舞い上がる岩などの影に隠れてドライトが上を通るのを待ち構えていたのだ。


「あなた!凄いわ!」


「ハッハッハ!ドライト帰るぞ、ステラとルチルも待っているからな!」


そうディアンが言って手の中のドライトを見ると、キラキラとして瞳でディアンとセレナを見上げてドライトが言ってきた。


「父様!もう一度!もう一度です!」


「ん?」


「もう一度、追いかけっこするですよ!」


そうドライトは興奮しながら言い、シッポや手足をジタバタさせている、それを見たディアンは……


「そーら!行くぞ!」


ドライトを凄まじい勢いで投げたのだった。


「あなた!?」


「ウホホーイ!」


ドライトは地面に着地すると、チョコマカとあっちこっちに走りまわる。


「あ、あなた何故ドライトを放したのですか!」


「ハハハハハ!セレナ!ドライトと、息子との追いかけっこは楽しいな!」


「……!ドライト!今度は母が捕まえてみせますよ!」


「ウキャー!母様、捕まりませんよ!ウキャキャー!」




音声だけなら、父と母が公園の芝生をチョコマカと逃げる子供を追うアットホームな家族団らんな映像が思い浮かぶのだが、映像の中ではディアンとセレナが腕やシッポを振るいブレスを放つ度に、直径数キロはあろうかと言うクレーターや谷が出来て平原は焦土と化していく。


その中を時には大きくなり、時には小さくなりながら無傷で走りまわるドライト、たまに父と母のブレスを自分のブレスで相殺しながらドライトは逃げ回る、龍のシリカ達やステラとルチルは大興奮して見ているが他の者達はドン引きだった。


「ディアン様とセレナ様のブレス、当ったら私達でも一発で死ぬわね?」


「アスモデル、嫌な事言わないでよ……」


『幹部達が集まれば、ディアン様とセレナ様のブレスも1、2発なら防ぐ事が出来るんじゃ……げぇ!う、うそだろ!?』


神界メルクで見ていた、マルキダエルが驚きの発言をするが他の者達は声も出せない程に驚いていた、シリカ達だけは、


「あら!良い逃げ方だわ!」


「なるほど、ああ言う移動方法もあるのですわね……」


「流石はドラ公!やるなぁ!」


「ドラちゃん……大興奮……むふぅ~!」


何があったかと言うと、ディアンがけん制のために少し離れた所に放ったブレスに、ドライトは自分から当ったのだ、そしてドライトはブレスに当った衝撃で吹き飛ばされ、ディアンとセレナの包囲から逃げ出したのだ。


『な、なんで無傷なんですかね……ハマリエル、見るの2回目なんでしょ?理解できますか?』


「ハハハ……ガムビエル、分かる訳ないでしょう!」


映像の中でドライトは吹き飛びながら


「アヒャー!流石は父様のブレスですよ!一気に吹き飛びました!」


そうドライトは楽しそうに叫び、着地すると無傷で走り出す。


「な、なんでドライト様はあんな楽しそうなのよ……アドナキエル!あんたも2回目なんでしょ!?説明して!」


『ハ、ハナエル、俺にわかる訳ないだろ!

って言うか2回見てますます理解できなくなってるんだからな!』


「メ、メルクルナ様なら……同じ様な事が出来ますか?」


「……全力出せば10回位なら完全に防ぐ自信は有るわ!」


「「「………」」」


こうして映像の中でドライトは大興奮で笑いながら逃げ回るのだった。




「左に曲がりま〜す!」


「ふふ、ほら!」


ドライトは直角に左に曲がるが、セレナはそれを読んでいてドライトが曲がるより先に動き、ドライトが曲がった先で待ち構えて居て突っ込んで来たドライトを抱きとめて捕まえた。


「母様!もっと!もっとですよ!」


「ふぅ……ドライト?もう暗くなってきたわ?今日はこの位にして帰りましょう?」


「そうだな……いやしかし、楽しかったな!ステラとルチルが孵化したら家族全員で追いかけっこするか!」


「あら!良いわね!父様と母様達も入れてチームを組んでやるのも良いわね!」


「ハハハハハ!良いな!家族全員でやればさらに楽しそうだ!」


「……あ!」


「どうしたのドライト?」


「キャ、キャロの入学式忘れてました!一目見たかったです!」


「あら、だから巣から抜け出したのね……」


「そう言う事なら、入学パーティーをしているみたいだから、帰りがてら寄って行けばよかろう!」


「い、行っても良いのですか!?」


「ドライト?キャロちゃんはあなたの祝福持ちなのよ?行っても良いに決まってるでしょう?」


「ああ、だが巣を抜け出すのは良くないぞ?これからはちゃんと許可を取る様にな?」


「は、はい父様、母様!」


「じゃあ、行きましょう……しっかり捕まっているのですよ?」


「帰りは俺が抱っこしてやるからな!」


「あ!ちょっと待ってください!」


「あら、どうしたの?早く行きたいのでしょう?」


「むにゃむにゃ……むにょーう!」


ドライトがよく解らない呪文を唱えると、周りの地面が波打ち始める……そしてそれが終るとクレーターや谷間が出来て焦土と化してた土地が平らになっていた、しかも道路や水路まで出来ている。


「ここら辺を焦土のままではまずいですからね……何時でも耕作出来るようにしときました!じゃあ、行きましょう!」


「そうだな、なら俺も……そら!」


「私も……ほら!」


ディアンが魔法を放つと、森が生まれてセレナが放つと湖が生まれた、ドライトの造った水路に水が流れ込み道路の両脇には木が整然と並ぶ。


「今度追いかけっこする時は暗黒大陸でやるか」


「そうね?あそこなら周りを気にしないで思いっきりできるわ!」


「今から楽しみですよ!」


そう言って3頭の龍達は和気あいあいと飛んで行くのだった。




「アットホームで心温まる映像でしたよ!……あれ?どうしました?」


「怪獣大決戦……」


「あの不毛地帯がいきなり豊穣の地になっていたのは龍様方の力か……」


「ははは……」


「お、恐ろしい物を見てしまいましたわ」


「ドライト軍団は今のに比べたら遊びに近い物だったのか……」


『ドライト様や龍様方は俺達の訓練では相当手を抜いてくれてたのだな』


「マルキダエル、あなたがリーダーなんだからこれからは訓練には率先して参加してよね」


「ア、アスモデル!勘弁してください……!」


天使族やジェード王国の面々にアレクスの面々は真っ青だがシリカ達は


「良いわぁ……」


「我が子と楽しく追いかけっこ……良いですわね……」


「憧れるよなぁ……」


「将来のドラちゃんと……私達と子供達の……予行演習に見えた……」


などと言って上の空になっている。


「なんで、皆変な反応なのですかね?」


「ドライト様、え、えっと皆感動してるのですよ!」


「おお!アレナム、そうなのですね!私たち家族の団らんですからね……!次はステラとルチルも含めて追いかけっこですよ!」


「「「ドライト様!やる時はメルクルナ様かキャロリン様に相談してからにしてください!」」」


「? なんでですか?」


「「「どうかお願いします!」」」


「変な人達ですね……」


「ドライト様、そろそろ行きましょう、休憩も十分取れましたし……」


「そうですね、なんか納得いかないですがそうしますか……」




こうして、ドライト達は孤児と天使族の女性幹部達と別れてアレクスの闇市に向かうのだった。


「スゲーな怪獣大決戦だったな!」


「おもしろかったー!」


「えほんのじぇーどのだいぼうけんみたいだったねー!」


「子供達は素直ですね……」


「アスモデルさん、どう言う意味ですか?」


「ドライト様!?キャロリン様について行ったんでわ!?」


「アスモデルさん、説明を「ドライト様!みんな待ってますから早く行きましょう!」キャ、キャロ……今行きますよ!」


こうしてドライトはキャロリンに連れられて今度こそ闇市に向かうのだった!

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