子龍編 港湾都市アレクス

翼よ、、、あれがアレクスの光だ、、、!


「いや、ドライトさん。

ドライト丸に翼は無いわ[バコン!]ゲコ!」


あ、ドライトさんですよ!


クロワトル大陸に昨日のお昼過ぎに到着してからアレクスを探して、やっと見つけたんですがもう夜中の12時過ぎなんです。

流石にこの大陸で一番の港湾都市であるアレクスの夜景はとても綺麗で雰囲気を出していたんですがメルクルナさんが余計な事を言ってきたので尻尾で叩いて黙らせたところですよ!


それよりメルクルナさんはヒキガエルにでもジョブチェンジしたんですかね?




「ドライト様、結構ズレてたみたいですね?」


「宮廷魔導士さん達も、頑張ってたんですけどね~」


そうハマリエルとフルが言ってきたので、「しょうがないですよ!」っと答えて続ける。


「まだまだ、この世界の人達には未知の技術とか使ってますからね、、、何にしろアレクスを見つけましたし、魔導士の皆さんも色々勉強になったでしょう!」


そう言うとジェード王国の魔導士と船員を代表して、マンフレッド宮廷魔導士長が前に出てきた。


「ドライト様ありがとうございます、おかげで魔導士達も船員達も船の動かし方とこの新たな技術の知識を身に着ける事が出来ました!」


そう、一昨日の海鮮鍋パーティーが終わった後からクロワトル大陸に上陸してアレクスに来るまでの船の航行はメルクルナにハマリエルとフルからテストも兼てジェード王国の人達に引き継がれていたのである。

その為にクロワトル大陸に着く事は着いたが、目標だったアレクスからズレてしまい探していたのだ。


「しかし、この様な技術もあるのですな、、、これはドライト様がお創りになられたのですか?」


そう言ってマンフレッド魔導士長が指差したのは六分儀だった。

この世界ユノガントに羅針盤は流石にあるのだが六分儀は無かった、と言うか原型とも言える象限儀しょうげんぎ(四分儀)すら無かったのだ。


なら、どうやって自分の位置を確認していたかと言うと、、、魔道具でだった。

この位置確認用魔道具、原理は数か所の魔素の大規模発生地点を感知してそこから位置を割り出すのだが、、、ほぼ当てにならないのだ!


何故か?魔素の大規模発生地点はほぼ変わる事は無いのだがその日によって噴出量が変るのと、たまに別の場所から突発的に噴出する事があったりするので、突発的な噴出があったりするとえらいズレるのだ!


よく、この世界の人達は海の上どころか陸上すら旅する気になったな!?っと思うだろうが、実は古代の地球よりも旅や航海はこの世界の方がしやすい、原因は魔法と魔術で魔法で水を出したり魔術で早く船を動かしたり出来るし、アイテムボックスや魔法袋も有るので食料を余計に持って移動も出来るので逆に科学的な技術の発展が遅れてしまっているようなのだ。




母様と父様が言うにはこのユノガンドの様に魔法や魔術が発展した世界には科学や医学など遅れている世界は結構有るのだそうだ、、、


なんにしろマンフレッド魔導士長に言い返す。


「いえ、その六分儀は異世界の技術です、他の世界には魔法や魔術が発展してない世界どころか、全く使えない世界も有るのですよ、、、!」


「ま、魔法や魔術が全く使えないのですか!?」


「ド、ドライト様、その世界はもしや魔力や魔素が無いのですか!?」


周りで聞いていた魔導士達が驚き問いかけてくる、


「ええ、そういう世界もありますね、、、」


俺がそう言うとハマリエルが慌てて聞いてくる。


「えぇ!?も、もし魔力も魔素も無い世界にメルクルナ様が行ったら、、、どうなるのですか!?」


メルクルナ、神々の本体は精神体だ、もしそんな世界に行ってしまったら消えてしまうのかもしれないと思いハマリエルは慌てたのだろう。

まぁ、神々は実体化するための肉体を持っているから、そこに逃げ込めば問題ないんだが、、、


「なんともならないですよ?逆に世界を壊して力を回復させ始めちゃんじゃないですかね?世界の元は混沌と秩序の塊ですからね!

ちなみにメルクルナさんクラスの神や我々龍は短時間である程度なら体内で魔素を生みだせますから、それを使って世界に穴を開けて混沌と秩序の塊を引っ張り出しちゃえますね!」


そう言うとハマリエルとフルは安心していたがマンフレッド魔導士長や魔導士達は引きつっている。


世界を壊して混沌と秩序の塊に戻すのも穴を開けて混沌と秩序の塊を引っ張り出すのも人族や獣人族、精霊族や魔族など普通の生命体にとっては、とんでもない天変地異以外の何物でもないからだ。




そんな話をしていると皆の後ろから声がかかる。


「そう、そんな話をするためにこんな時間まで起きていたのですか、、、」


「違いますよ?アレクスが見えるので気になってですね、、、?」


そう言いながら、ドライトがふり返ると、、、セレナ母様が立っていた。


「よけいに悪いです!もう夜中の1時を過ぎているのですよ!?

ドライト、たしか約束だと夜の10時には寝なくてはいけなかったのではないかしら?」


「か、母様!どうしてここに!?」


「ステラとルチルがね?トイレに起きたらしくてね?「「にーちゃが居ない!」」って泣きながら部屋に飛び込んで来たのよ、、、?」


「なんですって!?すぐに様子を見に『ガシッ!』か、母様?」


「今はキャロちゃんが見ててくれててね?

落ち着いて寝ているわ、、、ステラとルチルが寝てからは絶対に離れない様に言いませんでしたか?」


「き、気になっちゃったんですよ!許してください、母様!」


「ゆるしません、罰を与えます!」


「か、母様!ステラとルチルがあぁぁぁ、、、!」




こうして俺は罰として、縛られて船の外の艦橋の前に棒で吊るされてしまったのだった、、、




『リュージュさん!なんで母様の接近を教えてくれなかったんだよ!』


【いえ、、、実は、、、アレクスに、いえこの世界に転移者か転生者が居るみたいでして、、、】


『ん!?その捜索をしていたのか!?』


俺以外にもこの世界に転移者か転生者が居る可能性は前からリュージュさんに聞いていたが、まさかこのアレクスに居たとは、、、!

是非とも見つけ出して話しをしてみねば!っと考えていたがリュージュさんの次の発言で俺は満天の星が輝く夜空に本気で吠えたのだった。


【いえ、アレクスに転移者も転生者も居ませんがどちらかが創ったと思われるBL本が有ってですね?

中々のできなんで、他にも無いか探していたんですよ!】


『この腐珠マジで砕きたいんですけどおぉぉぉ!!』


【ま、またその名で呼びましたね!?ゆるしませんよ、この豚龍が!】


こうして俺とリュージュさんが言い合っていると、メルクルナが気がついたのか頭をポリポリかきながら起きだして来て、こちらをチラッと見て「ヘッ!」っと笑い、蔑さげすみながら自室に去って行ったのだった、、、


ぬあぁぁ!?あ、あの駄神、絶対ゆるさん!目にもの見せてやる!と、俺はそう心に決めながら寒空の元、アレクスの方を見ながら夜を明かしたのだった、、、




そして夜が明けた、俺は綺麗な朝日が水平線に出てきたのを確認すると、、、


「コッケッコッコオオオォォォォォォ!コケコケエエエェェェェェェ!!」


っと親切にも皆に朝が来たのを教えてあげる為に全力で鳴いた。


「アキヨョオオォォォォ!?」


「メ、メルクルナ様!?」


なんかどっかの部屋のベッドの辺りに偶然にも俺の鳴き声が反響して集中してしまったようで、悲鳴が聞こえたが今日は記念すべきクロワトル大陸に初上陸する日である、皆も早く起きたいだろうと全力でまだまだ鳴く。


「コケエエェェ!コッコッコッ、、、コケエエエェェェェェェ!!」


「ウピヨョョョオオォォォォンン!?」


「メ、メルクルナ様!どうなさったのですか!?」


あの声はバルビエルか?わざわざ、また転移陣でお世話に来たのか?船にはハマリエルがいるんだから任せれば良いのに、、、

そう思いながら、また鳴こうと息を吸い込んでると。


「うるせええぇぇぇ!ドラ公!朝っぱらからうるせえぞ!」


っと艦橋のドアを蹴破らん勢いで開けてカーネリアが出てきた、シリカ達も怒りに震えながら出てくるが、


「コケコケコケエエエェェェェェェ!コケエエエエエエエエ!!」


っと全力でまだまだ鳴く、偶然にも反響してしまっている誰かの部屋からはバルビエルの「メルクルナ様!お気をたしかにぃぃ!」っとの叫び声しかもう聞こえてこない。


「だからうるせえんだよ!鳴くのを止めろ!」


「ドライト!何時だと思っているのよ!」


「ドライトさん、、、寝不足はお肌の大敵なんですからね?」


「、、、コケコケ?、、、コォーコッコッコ、、、コケェ!」


そう言ってシリカ姉達が文句を言ってくる、アンジェ姉さん鶏語だと他の人が理解できませんよ?まぁ、理解できない方が良い発言でしたけど!


「リア姉、、、上陸前に起きたいって言ってたじゃないですか!シリカ姉もう7時過ぎですよ?サルファ姉は昨日9時前に寝てたじゃないですか、、、 アンジェ姉さん、、、求愛行動で鳴いていたわけじゃないんですから、そんな事を言われても、、、」


そう言い返すとシリカ姉が


「い、いや、確かに7時過ぎてるけど、、、そ、それよりアンジェは一体何を言ったのよ!?」


っと、シリカ姉が言ってきたが、アンジェ姉さんが言った事を翻訳すると官能小説になってR18タグが必要になるので勘弁してください。

そんな事を考えていると、リア姉が言ってきた。


「た、確かにドライトの言う通りだけどさ!そんなに大きな声出してたらセレナ様にディアン様、妹さん達やキャロにも迷惑だろ!あとサルファ姉、、、何で真っ赤なの、、、?」


「大丈夫ですよ!母様と父様の部屋とステラとルチルの部屋、キャロの部屋にはほとんど聞こえないように鳴いたので!

あとサルファ姉はアンジェ姉さんがなんて言ってたのか理解できてたから真っ赤になってるんです!」


「「、、、へ?」」


俺がそう言うと、シリカ姉とリア姉がサルファ姉を見る。

ますます真っ赤になったサルファ姉はアンジェ姉さんを見ると。


「ア、アンジェ!淑女がなんて事言うのですか!?

ちょっとこちらにいらっしゃい!!」


「、、、コッ、コケェ!?」


そう言ってアンジェ姉さんの首をつかむと引きずって艦内に戻って行ってしまうが、リア姉が、


「なあなあ、サルファ姉はアンジェが何言ってたか分かったの?あたしにも教えてよ!」


と、言いながらまとわりついているので真っ赤なままだった。

アンジェにも、


「お前もなんて言ったのか教えてくれよ!」


と、聞いているが流石のアンジェ姉さんも顔を赤くして、


「ほ、他の人が居ないところで教える、、、!」


と、珍しく焦って答えてそのままサルファ姉に連れられて行ってしまった、リア姉も引き連れて、、、


「本当にアンジェは何言ったのかしら、、、あとで私も聞いてみるか、、、

なんにしろドライト、うるさいのよ!」


「おかしいですね、、、メルゲフン!

誰かの部屋に集中するように鳴いたはずなんですか、、、?」


【ドライト様、例の捜索に私が力を割いてるので少し失敗したみたいですね】


『ああ、、、転生か転移した者の捜索か、、、奴等の気配も有ったんだろ?』


【はい、それは間違いありません。

ただいくつかの気配が有るんですがかなり古いものも有るみたいで特定が難しいんですよ】


『うーん、、、他に移動してる可能性もあるか、、、』


【あれからいくら探しても新しいBL本も見つかりませんし、やはり移動したのでしょう】


『通信終わり!』


【ドライト様!?】


俺は一方的にリュージュさんとの通信を終わらせると、シリカ姉と目があった。


「ずいぶんと久しぶりにあなたの龍珠の気配を感じたけど、、、ドライト? あなた変な事考えてないでしょうね?

あまりセレナ様やステラちゃんとルチルちゃんにキャロちゃんに心配かけるんじゃないのよ?」


そう言われて俺はドキッとした、やはりシリカ姉は鋭い、、、

シリカ達4人の中で一番力が弱いとか卵から孵化したら弱くなった。なんて言われてるけど上手く力を隠蔽してるよな、、、一番力が有るのに、、、

とにかくシリカ姉を安心させるために何でもないと答える。


「龍珠さんに頼んで面白い物がないか探してるだけですよ?

気配を感じなかったのは、最近までスマドの増産やら魔導飛行船の建造で手が離せなかったからでしょう!」


そう言うとシリカ姉は眼を細めてこちらをみながら、


「もちろん私達も心配なんだからね?ドライト、、、覚えておいてよね?

さて、私もサルファとアンジェに何て言ったのか聞いてくるとしますか、、、じゃあ、また後でね!」


そう言ってシリカ姉も艦内に戻って行った、、、縛られて吊るされたままの俺を置いて、、、




シリカ姉は縛られた俺を解く事無く艦内に戻ってしまった。

仕方ない朝日も出て来たし母様達もそろそろ起きてくるだろう、起きてくるのを待つか、、、

そう考えて母様が起きてきてロープを解いてくれるまでアレクスの様子を見る事にした俺は、足をブラブラさせてアレクスの方に向きを変えると、メルクルナが神剣を大上段に構えて突進してくるのが見えた。


「ぬおおぉぉぉぉ!よくも私を惰眠から覚ましてくれたわね!神罰を食らえぇぃぃ、そいやあぁぁぁ!!」


俺に向けて振り下ろされる神剣!それを俺は、、、!


[ガチィ!]


噛んで防いでみた。


「何をするんですか、メルクルナさん、、、」


「ウピョ!?剣噛んでるのにどうやって喋ってるのよ!?器用な事しやがって!

それに、私の部屋って言うか私だけを狙って音波攻撃までするし、、、ドライトさんって本当に器用よね!それはともかく大人しく神罰を食らいなさい!」


「腹話術を応用すればこれぐらいできますよ!」


「ぬぅぅ、、、相変わらず器用な、、、って言うか私の神剣を放せええぇぇぇぇ!」


そう言うとメルクルナは俺に片足を乗せてグイグイ引っ張り始める、、、ちょっ!顔は止めて!


「顔を土足で踏まないでくださいよ!ご褒美だ?メルクルナさんだとご褒美にならないです!いや、本当に顔を踏まないでくださいって!、、、おりゃ!」


メルクルナは「私みたいな美女に踏まれてるんだからご褒美でしょ!」などと意味不明な事を言って片足どころか両足で俺を踏みつけて神剣を引き抜こうとしている、止めてと言っても止めないので俺は仕方なく神剣を噛んでいる歯に力をこめた、、、すると、、、


[パキン!]


っという小さな音と共に神剣は砕けてしまったのだった!


メルクルナは驚き目を見開くが彼女は大事な事を忘れていた、俺に両足を乗せて神剣を抜こうと踏ん張っていた事に、、、

神剣と言う支えを失ったメルクルナは力を込め過ぎていたのか俺を足場にジャンプした感じで吹っ飛んでいく、そこに何時の間にか龍の姿に戻ったセレナ母様が立っていて、、、


「メルクルナさん?私の息子を足蹴にするとは良い度胸ですね?」


そう言って飛んできたメルクルナを尻尾で叩いてさらにふっ飛ばした。


「あぎゃああぁぁぁぁ!いでえぇぇぇ!?

ああぁぁぁぁ、、、神剣が!私の神器があぁぁぁ〜!あ、ちょっと!食うな!このデブ龍うぅぅ〜!!」


メルクルナは痛みに耐えながら刀身が無くなってしまった、柄つかを呆然と見つめながら吹っ飛んでいくが、俺が『ボリボリ、ゴックン』っと神剣を噛み砕き飲み込んだのに気がつき文句を言いながらドライト丸から落ちていく。


「、、、母様、おはようございます。まだ夜が明けたばかりですよ?」


「うるさくて目が覚めたのよ、、、ステラとルチルやキャロちゃんも起きだしたわよ?」


「え?母様達にはほとんど聞こえない様に鳴いたはずですが、、、?」


「あなたじゃなくってメルクルナさんの珍妙な悲鳴がうるさかったのよ、、、」


「それは、、、盲点でしたよ、、、!?」


こうして高度5000メートルから「私の神器が〜!」っと落ちていくメルクルナの叫びを聞きながら俺はセレナ母様からお説教と罰を受けたのだった。




母様に30分ほどお説教とお尻叩きされてから、ロープを解いてもらい艦橋に入るとメルクルナがバルビエルに尻を撫なでられていた。


「どうしたんですかメルクルナさん?変な性癖に目覚めましたか?『ゴチン!』痛いですよ!?」


俺がそう言うと母様に拳骨を落とされた。


「ステラとルチルが変な事覚えちゃうでしょう!?、、、それでどうしたんですかメルクルナさん?」


そう母様が聞くと、バルビエルが答えた。


「それが船から落ちて地面にお尻から落ちたらしいんですよ、、、」


「なんで飛ばないの、、、」


母様はそう言うとメルクルナは俺が来たのに気がつき、詰め寄ってきた。


「いてて、、、あ!ドライトさん!吐け!吐いて私の神器を返せ!」


「神器なら魔素を通せば自動で修復しますよ、、、教えたじゃないですか、、、」


「へ?そうだっけ?、、、おお!なおったわ!剣が生えてきた!、、、ショックで地面に尻から落ちたのは何だったのよ!?」


メルクルナは柄から剣が生えてきたのを確認して小躍りして喜んでたがどうやらショックで飛ぶのを忘れて地面に激突したらしい。

それはそれとして日も完全に出たので魔導飛行船はゆっくりと動き出し、アレクスに向かっている。




「ああ、尻が痛かったわ、、、

それにしてもあの都市は相変わらずにぎやかねぇ、、、形は昔と変わってないけど、、、城壁が1枚増えたかしら?」


そうメルクルナが言うと皆が港湾都市国家アレクスを見る、するとキャロリンが聞いてきた。


「ドライト様、上から見るとアレクスは面白い形で区画が整理されているんですね?」


「ああ、、、あの都市の歴史を調べると分かるんですが、あれはあれで要塞都市としては理想的な形なんですよ?」


港湾都市アレクス、その歴史の始まりは帝国のクロワトル大陸に対する植民支配が始まりである。

最初にこの大陸を植民地化するために帝国がこの地に港湾要塞を造ったのだ、港として最高の条件の湾を発見して海から見て左側にあった小さな半島部分を要塞化した。


半島の付け根の部分に城壁を造り、その後に湾を港湾として開発してからさらに半島の第一の城壁と港湾を覆うように第二の城壁を築いたのである。


その後ここ、アレクスを起点として植民地となる城塞都市を次々と建設したのだが、きつい税と現地人や獣人達を奴隷化していたために反乱が起きてしまい、そこに小国の集合体でウアス魔導大国に対抗するために作られたダラムアデ連合国家やウアス魔導大国が介入して城塞都市は次々と独立した、だが帝国も重要な収入源だった植民都市をそう簡単に諦める訳が無く、独立した都市を奪還するためにこの港湾都市の規模をさらに拡大して第三の城壁を造り都市自体を要塞化したのである。




だが、そこでこの港湾都市にも反乱が起きた。




港湾都市の反乱の首謀者はアレクスと言う奴隷だったが市民や地元軍も加わり大規模な反乱となった、そしてその他の城塞都市全体の軍の指揮を執っていた指導者アサセルムはこの港湾都市の反乱がこの“独立戦争”の決めてになると考えて反乱軍の全軍を持って支援した。


そして5年に渡る大規模な攻城戦に勝利した反乱軍はこの港湾都市に解放のための戦いの途中で無念にも戦死してしまったアレクスの名を着け、そして10年をかけて全力で海側も要塞化をしてしまい帝国のクロワトル大陸の玄関を塞いでしまったのである。


補給線を失った帝国軍と帝国側の城塞都市は次々と降伏して帝国軍と官僚や帝国貴族は帝国に帰り、城塞都市は都市国家として独立した訳である。

そして同盟を結び、指導者であったアサセルムの名を取りアサセルム同盟として協力体制をとる事で帝国に対抗したのである。


「ですから、よく見てください?海の岩礁や小島にやたらと灯台が有りますよね?あれは灯台と共に見張り台や砲台としても機能してます。

それに第三と新しく造られた第四城壁を見てください、第一と第二との違いが判りますか?」


「、、、?ドライトさん、第一と第二とはなんか違うの?」


「メルクルナ様、私も違いが有る様に見えないです」


そう、メルクルナとキャロが言い他の皆も首を傾げている。


「第三と第四の内側を見てください、城壁に登る階段が無いですし櫓やぐらと出し狭間だしはざまに胸壁きょうへきが外側だけでなく内側にも造られているでしょう?あれは海側から港湾都市が落とされても、外に出れない様にしてあるんですよ。

さらに半島の要塞部分が落とされても港湾都市部分が独立して機能する様になってますし、港湾都市側が落ちても要塞部分だけでも長期間籠城できる様になっています。

あの要塞都市を完全に落とすには要塞部分だけとか都市部分だけではなく、城壁も含めてすべてを落とさない限り攻略されない様に造られているんですよ!」


そう答えを教えると、メルクルナとキャロだけでなくアンディ王太子やマンフレッド魔導士長らジェード王国の面子も「なるほど、、、」っと興味深く見ている、すると次代の宰相になるであろう、ライアン王子が聞いてきた。


「ドライト様、参考までに聞きたいのですが、もしドライト様がジェード王国の軍を使って落とすとしたら、どの様に攻略しますか?」


ジェード王国の面々だけでなくメルクルナやシリカ姉達に母様と父様まで興味深そうに見てくる。


「、、、先程も言いましたがあの都市は城壁、都市、要塞の3つが連動して防衛しているんです、ならそのどれかを無くしてしまえば良いんですよ、、、つまりどこかの部分を攻略したらそこを徹底的に破壊してしまえば良いのです。

そうする事で連動が無くなり、そこで負けても次に攻めた時には楽に落とせます、、、ですが、、、」


「ですが?」


「占領したら、破壊してしまった部分を私達で再建しなければいけないのですよ?資材や人員をジェード王国から、、、レムリア大陸から運ばなけばいけないのです、その労力とかかる費用を想像してみてください?

あの都市はその事も考えて造られているのですよ?ですからこそ、あの港湾都市アレクスはクロワトル大陸の各国から大規模な支援を受け、各国に入国する際の優遇措置が取られているのですよ」


そう答えると、聞いてきたライアン王子だけでなくジェード王国の面々はあの港湾都市の本当の機能を理解した。


海側から攻めるにしても、別の場所に上陸して陸側から攻めるにしても時間をかけて全てを落とそうとすると、アサセルム同盟やクロワトル大陸の他の国から援軍が来るだろう。


ドライトの言う通りに連動している防衛機能の1つを破壊して次で落とすとしても、早急に軍を再建するか別の軍団を用意してすぐに攻めなければ破壊した部分が再建されてしまう。

仮にアレクスを落としたとしても同盟などから軍が来るまでに破壊した部分を莫大な労力と財力を使って早急に再建しなければいけないのだ、しかも海を越えて、、、


そこまで聞いてアンディ王太子が思い出したようにぼそりと呟つぶやいた。


「港湾都市アレクス、クロワトル大陸の玄関、、、別名は、、、要塞都市アレクス、クロワトル大陸の防壁、、、」


魔導飛行船は徐々に高度を落として巨大な要塞都市であるアレクスに近づいて行く、、、


港湾都市アレクスは開かれた玄関の様な雰囲気を出しているがその実態は帝国や他の大陸からの巨大な防衛拠点なのであった、、、




「あ、でもですね?キャロがこの大陸を支配して女帝になりたいと言うのでしたら、私がアレクスをブレスで吹き飛ばして1時間で再建して侵攻拠点にしてみせます!

キャロどうですか?女帝にな「わ、私はドライト様の御側で使えるのが生きがいなのです!」そうですか、、、残念です、、、」


こうして俺達は港湾都市アレクスに到着して、クロワトル大陸に初上陸したのだった!

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