英雄になった事に彼はまだ知らない
ガルディアスとの戦闘を終えて再びゼルネラの霜降薬草とベルタルの苔草を採集し終えたシキは黒ローブに着替えてギルドへと戻っていた。
「(はぁー、かなり時間がかかったな。中部に戻っても一個も無かったけど最深部は見つかったな……)」
その二つを採集するのに約3時間もかかってしまったが成果はちゃんと得られた。
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ゼルネラの霜降薬草×5
ベルタルの苔草×3
ヒーラ草×62
強化草×17
ボッカの実×6
薬応茸×8
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どれもポーションに必要な素材だ。
今回は中々いい儲けになるだろうと内心ウキウキ気分でギルドへと入っていくシキだった。
ギルド内へと入るといつもはわいわいガヤガヤと賑わっている時間帯だが今日は冒険者の数が圧倒的に少ない。
何処か寂しい感じはするがシキはミリィの所へ行くと採取した薬草等を渡した。
「お疲れ様でした。報酬額は小金貨8、大銅貨1、中銅貨2です。加えて、他の素材の買取金額は大銅貨2。合計報酬小金貨8大銅貨中銅貨2になります。」
金を受けとると今のギルド状況について聞いてみる。
「冒険者達が少ないがどうしたんだ?」
「それはですね、約2時間前に緊急クエストがあったんですよ。」
「緊急クエスト?」
「はい、どうやらAランクモンスター『ギガヴィゴス』が森に出現したみたいで、殆どの冒険者達はその依頼に行ったんですよ。加えて騎士も出撃するみたいです」
それを聞いてシキは理解する。
おそらくあの御嬢様、レリーヌかその親が依頼に出したのだろうと。
「(倒しちゃったんだよな……多分行ってもガルディアスの亡骸しか無いから無駄足だな。いや、ガルディアスの素材は多分だが高値で売れるか……本人がそれで良いって言ってたから……いいか。)」
「どうしましたか?急に黙っちゃって」
「あー、いや、何でもない。」
そう言うとシキはギルドを後にする。
加えてガルディアスから貰った牙をどうしようか考えていた。
そしてこれからどうするかと。
「(ガルディアスの牙は……槍にしようか。でもこんなデカイのを出すには不味いな。下手すれば俺がホワイトだとバレる可能性もあるか……。資金も貯まってるし、違う国に行くか!)」
そう決めると後日、この国から出ることを決意する。
そんな事を考えているシキだったがまさか『ホワイト』という存在が英雄にされてしまっている事は全く知らなかったのだった。
~~~~~
エリルレの森では騎士と冒険者達が最深部へと向かっていた。
別段ランクの高いモンスターは存在せず比較的に危険性が低い場所でもあった。
そこを越えると隣国がありエルディンテ王国とは協定を結んでおり、国同士も仲が非常に良く商人や貴族の馬車等が行来している場所でもあるのだ。
だがそんな比較的安全な場所にある情報が舞い込んだのだ。
Aランクモンスター『ギガヴィゴス』の出現。
Aランク以上のモンスターは様々いるがその中でもSランク(災害級)と遜色無い『ギガヴィゴス』が現れた事に上層部は荒れていた。
王宮に住んでいる『勇者』達は全員レベル10前後でステータスやスキルが高いとはいってもとてもじゃないが戦闘に出すわけにはいかなかった。それに『ギガヴィゴス』なら尚更だ。
今いる騎士の平均レベルは80、一番高い者で180の隊長だ。
一方冒険者達は平均レベル95、一番高い者で150のSランク冒険者だ。
誰もが死を覚悟して来ている者達だったが、彼等が戦闘を行う事は無かった。
「なっ……何だ……これは……」
隊長達の目の前にあるのは巨大な山……ではなく『ガルディアス』の亡骸だった。
「たっ……隊長…これが……『ギガヴィゴス』……なのか?」
「馬鹿言え……俺の前の部隊で『ギガヴィゴス』を殺った時より……倍以上は……確実にある」
「隊長さんの言う通りだ……俺も『ギガヴィゴス』と殺りあった事はあったが……冒険者人生でこんなデカイモンスターは……初めてだ……」
「……!?……みっ……皆さん……これは『ギガヴィゴス』より……更にヤバイやつです」
「ステータスを確認できたのか!」
「はい……ですが……これは……」
鑑定玉でこの『ガルディアス』のステータスを確認した騎士が隊長達へと見せる。
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名前 ガルディアス
種族 ギガヴィゴスエンペラー頂異種・魔王種
ランク Unknown
性別 雄
職業 魔王
状態:死亡
レベル 2647
体力 0/20963500
魔力 0/6259500
筋力 25382400
耐久 31826250
俊敏 9001400
ーーー
[絶対固有スキル]
古代種
狡滅消無
ーーー
[固有スキル]
魔王
王の威厳
頂異種
ーーー
[スキル]
強化.10
突進.9
魔装.9
耐震.9
金剛.10
豪腕.10
超嗅覚.10
予測.7
槍術.9
石頭.10
ーーー
[称号]
朱十槍大猪魔王
太古の魔王
孤島の存在
魔王殺し
勇者殺し
最強と唄われた存在
暴走野郎
覚醒獣
チート殺し
災害をもたらす者
ーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「「「なっ!?」」」
そのステータスを見て全員が同じ反応をした。
「『ギガヴィゴス』ではない『ギガヴィゴスエンペラー』だとっ!?」
「しかもこのステータス……高過ぎる!SSSランクを遥かに越えている!」
「それに『魔王種』だ……」
「だ……誰が倒したんだ?」
「……ホワイト」
一人の女騎士がポツリと言う。
彼女はホワイト(シキ)に怪我を治して貰った人物だ。それに盗賊達を瞬殺したのを目の当たりにしている。
だがこれはモンスターに殺られたのでは?と思うかもしれないが『ガルディアス』の身体には刃で斬られた後や10本の牙全て綺麗に斬られていたのだ。だが一本だけ根元から巨大な包丁な様なもので野菜を切る様に荒々しくない切断面だったのだ。
人で無いとできないだろう。それに『ガルディアス』以上の強いモンスターはいない筈だ。
そんな中それが出来る人物は一人しかいない。
底知れない実力を持った美しい純白の髪に新橋色の人物。
それがホワイトだ。
隊長達にその経緯を既に話していたので隊長である人物はその『ホワイト』という人物について考えていた。
「(『魔王』であるモンスターを倒す力量はかなりのステータスを持っているだろう。レベルは恐らく3000を越えている。まず1000を越えている時点でも化け物だ。歴代の『勇者』でもレベル1000はいって無かった……まさか!『勇者』をも越える存在だというのか!)」
「隊長、『魔王』ってこんなヤバイレベルなんですか?」
「……いや、これはイレギュラーだ。種類によっては低くても90位。俺が知ってるこいつ意外の最高レベルは250位だ。それ以上は確認されていなかった。」
「そうなんですか……」
「でも、よかったです。この2000越えの魔王が攻めてきたら……」
「あぁ、恐らく滅んでいただろう。彼『ホワイト』のお陰様、だな」
「エルディンテの英雄ですね!」
だが彼等は考えてもみなかっただろう。
これから『ホワイト』という人物がこの世界の英雄となるということを。
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