あなたにささやかな幸せを

一花カナウ・ただふみ

第1話

 そいつは、誰かからの届け物だった。

 自分の身長より頭一つ分ほど小さい箱の中にきっちりと梱包されて、そいつは俺のもとにやってきた。

 はじめは人間かと思ってびびった。

 しかし、そいつの手首には刺青が、いわゆるバーコードがあったし、耳たぶにはピアスに似せたICチップが填め込まれていたから、すぐにそいつが自立型自動人形であると分かった。

 とても可愛らしい少女型の人形。

 色素の薄い、ウエーブのかかった長い髪。白い肌はやや赤みががった温かな色をしている。フリルのついた真っ白なワンピースはネグリジェにも似ていてとても薄い。

 まるで天使。

 そいつは箱の中で眠ったようにして収まっている。下手したら棺桶だ。

 誰が何のために送りつけてきたのかは分からないが、住所も宛名も俺宛であることを主張している。起動させる気は全くない。とはいえ、送り主の名前がないので、返品のしようもない。 

 他に何かないかと探っていると、運悪くスイッチを押してしまった。


 逃れられないと思った。

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