第2話「混乱」

不思議なところを発見しました。



どこの世界にも「治外法権の地」は存在するものです。


ここでは「ある一つの目的」のもと、皆が協力しあって暮らさなければならないルールがあるようです。


やることはいっぱいです。



けど、安心なのは、様々な種の生物がいることです。


これだけ多くの生物がいれば、心強いですね。



狩りの時間になりました。


ライオンやチーターは、当然のように狩りにいく支度に取り掛かります。


大勢の「命」を預かる責任重大な役目。


仕事にも一層熱が入ります。





その時です。


ねずみの集団が声をあげました。


「やい!ライオン!!お前らはいつもカッコイイ役目ばかりでズルいぞ!これからは俺たちが狩りにいく!」



ライオンが言いました。


「いやいや。俺たちには、大草原を颯爽と駆けられる早い足と鋭い牙がある。多くの命を守るためには、俺たちが出ていかなければならないだろう。」



ねずみは引き下がりません。


「誰がそんなことを頼んだ!そういって、いいところを横取りするつもりだろう。お前らにできることが、俺たちにできないはずがない」




とうとうねずみたちは、ライオンの静止をふりほどき、狩りに出かけてしまいました。





今日の成果は、


小さな「くり」と「どんぐり」が20個ほどしかありません。



ですが、小さなねずみにとっては、食べきれないほどの量です。


だから、ねずみは気が付きません。



「ほらみろ。こんなに食料をとってこれたんだから、今日から狩りは俺たちの仕事な!」



得意気な表情で叫ぶ「ねずみ」を前にしては、


気の優しい「ライオン」たちは何も言えません。





ねずみとライオンには、歴然とした「力の差」があることを、ライオンはよく知っています。


力の強い自分が、力の弱いねずみに対して対等にものをいうのは、フェアじゃない。


ライオンは強い。だからこそ強いものには、むやみやたらに「力」を振りかざしてはいけないという責任がある。


そう考えていたのです。




ライオンは困惑しながらも、


ねずみのはじめての狩りを、一緒にお祝いしてあげました。






しかし、皆がお腹を空かせている状況はなんとかしなければなりません。


仕方なく、ライオンは足りない分の食料を探しまわり、


皆の部屋にコッソリと置くことにしました。









水浴びの時間となりました。



多くの動物たちと一緒に、ゾウは張り切って、湖に向かいます。


(得意の鼻がようやくみんなの役に立つときがきた!頑張って水をかけてあげなきゃ!)


ゾウは使命感に燃えていました。





湖に到着すると、カバは言いました。


「ゾウばっかりズルいや!今度からは俺がヤル!」


ゾウは困惑します。


この中で一番で適任なのは自分です。


けど、それを自分からいうのはなんだか気が引けるのです。



そうこうしている内に、


カバに役目をとられてしまいました。



当然ながら、渋滞の嵐。


ゾウは自分の弱さと、カバの強引さに、


なんだかとっても疲れてしまいました。







この世界では、こういったことがアチラコチラで起こり始めます。



当然、食べ物は困窮し、生活に支障が出始めましたが、


ライオンやゾウなど、本来の立ち位置を奪われた生き物たちが、


多種のあずかり知らないところで、必死に皆の生活を支えていました。



だから、この危機的状況が表には見えにくく、多種は全く気が付きません。








自然の摂理に従い、分相応に役割を決めて協力しあえば、


こんなことにはなりませんでした。




ですが、ここでは「多数決」が、なによりものをいいます。



食物連鎖を思い浮かべてください。



力の強い肉食動物よりも、力の弱い生き物の方が、はるかに数は多いのです。




力の弱い生き物たちは、肉食動物たちにコンプレックスがありました。


「自分だってできるさ!」


多種のことなんて考えてはいません。


(自分が1番目立ちたい。)


その気持ち一つで、大切な役割を次々と決めてしまいました。







キリンをさしおいて、木の実をとる係になったウマ。


ウサギはなぜか、水泳のコーチになりました。


手先が器用なはずのサルは、荷物番のお仕事です。


ライオンの表向きの役割は、山菜採り。





おかしさが更におかしさを呼び、


皆も、何が合ってて何が間違えているのか、


もはや誰にも分かりません。




1か月もたつと、発言権の強い「ねずみ」に、こびる多種もあらわれました。


ねずみはますます有頂天です。






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