第14話 加護

 お母様への面会予約を取り付け、部屋に向かいます。

 今日は、青いドレスを身に着けていらっしゃいます。


 思わず「今日はどちらにかにお出かけですか?」と聞いてしまいました。

 それに対してお母様は「別に出かける予定はなかったのだけれど、たまには家でも着てみようかと思って。」と返事をされます。


 お母様はお茶会とか舞踏会に出席される場合は大体、青か水色を基調としたドレスを身にまとわれます。

 一度理由を聞いたことがあるのですが、一種のトレードマークのようなもので、常に青(水色)を身に着けていると、遠くからでも一目でわかるなど、いろいろ便利なことがあるそうです。


 なんでも、おばあ様の時から、グーテンベルグ家は青を身に着けるということをされていたそうで、これも一つの伝統と言えるでしょう。

 別にこれはグーテンベルグ家だけがこうしているわけではなく、ほかの貴族も同様のことをされておられるところはあります。

 実際、我が家以外でも青を身につけて舞踏会に出ることが伝統になっておられる家もあるそうです。


 そんなことを考えていると、「要件は何ですか?」と聞かれてしまいました。

 私は精霊を助けて、加護をもらえる約束をしたこと、魔法を使えるようになったこと、魔法を使って花壇の花を元気にさせたことなどをかいつまんで話ました。


 最初、お母様は信じられないという顔をしておりましたが、花壇に目をやると異様に生き生きとした花が5本嫌でも目につきます。

 お母様の花壇ですから、お母様の部屋からは花壇がよく見えるようになっております。


 お母様は大きく息をついた後、「魔法を使ってみせて。」とおっしゃったので、指先に光を集めて見ました。

 すると、「本当なのですね。」と頭を抱えながら、明らかに困ったような表情を浮かべておられます。

 「お父様と相談しますので、このことは誰にも言わないように、部屋で少し待っていなさい。」と言われて、部屋に戻ります。


 部屋に戻ると、ハルがいました。

 話かけようとするとハルが「僕は既に君にミッションを出した。これに君がどういう答えを出すかを見たいだけなんだよ。当然、誰かに頼るのも自由だよ。」と先に言われてしまいました。


 どうやら、私がこれまでアーノルド先生に頼ったり、お母様に相談したことは既にお見通しの様です。

 しばらくして、メイドが「ご主人様がおよびです。」と言ってきたので、お父様の部屋にいきました。


 お父様の部屋にはお母さまもいらっしゃいましたが、二人して何やら難しい顔をしておられます。

 そして、お父様が「精霊の加護をもらうことになったのは本当かい?」と聞いてこられましたので、「精霊とそう約束しました。」と答えました。


 そのあと、詳しく話を聞きたいというので、これまでのことを説明しました。

 そして、私が魔法を本当に使えるかどうか確かめた後、一段と難しい顔をなさいました。


 「もしかして、以前意識を失った時に言っていたハルというのが精霊かい?」と聞かれたので、私は頷きました。


 「幻覚ではなかったのか・・・」とつぶやいた後、「精霊の加護はおまえが思っているような良いものではない。」と明らかに苦悶の表情を浮かべておっしゃられました。


 そして「『異能の才』という言葉を知っているか?」と聞かれて、私は首を横にふります。


 「精霊の加護を受けたものは、皆、素晴らしい才能『異能の才』を与えられる。」

 「しかし、良い商品を買った場合にそれなりの代金を支払わなくてはならない様に、『異能の才』とまで呼ばれるすばらしい才能をもらった者はそれなりの対価を支払わなくてならない。」


 そう言って、「これはあくまで極端な例だが」と断ってから精霊の加護を受けたある画家のことを紹介してくださいました。

 その話は、私にはあまりにもショッキングなことでした。

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