第45話封印

蒸し暑い夜の10時ごろオサムオサナイに国際電話が入った。

アンクルジョージからだった。


「実はドナルドから昨年のクリスマスイブに電話があって

『おじさん!大至急ナムストーンを唱えてください!』

というので、会議中30分の休憩をとってトイレで唱えた。


理由は後でわかるということだったが、まさかあのイラク

の事件、原因不明になってはいるが、あのスカッドミサイル

を止めたのは君たちなのか?」


「ええ、たぶんそうだと思います。あの当時は光る石が世界

でまだ数個、ナムストーンメンバーはわずかに6名でしたが、

危機が迫ると石は不気味に輝き始めます。


と同時にみんなでナムストーンを唱えて石がピンク色に落ち

着けば危機を回避できる可能性は高まります。

が、去年の9月11日は警告はあったのですが祈りが

間に合わなかったようです」


「なるほど」


「次回輝いたら直ちに全員で祈ろうと約束して12月24日

にすさまじいバイブレーションが起きました。この時は全員で

祈りに入りました。おじさんにも祈っていただきましたね。


そのあとの政変はわれわれにはあまり関係ないと思われます。

次にまたこのような危機が起きた時には大統領に

陣頭指揮を執ってもらえるといいんですが」


「なるほど、よくわかったよ。いろいろとよく考えてみよう。

個人の努力次第でナムストーンの能力が開化できれば人類の

悪しき宿命も転換できるはずだからな」


今後連絡を密にすることを確認してアンクルジョージは電話を切った。


このころナセルは実業家として東奔西走していた。

それでも天文学会誌には毎月隅々まで目を通していた。


今月号の片隅に先月号の訂正記事が出ていた。ナセルは

なぜかそれがすごく気になっていた。


「先月号の最終ページの三行報告の中でハワイキラウェア

天文台が発表した『3年後の8月に地球に巨大隕石が衝突

かも?』という記事は、再計算の結果全くの誤りであった

ことが判明しました。訂正し謹んでお詫びいたします」


先月号を確認してみると、最終ページの各地方天文台報告

の中で、確かにあった。


「3年後の8月15日に巨大隕石地球に衝突の可能性80%、

ハワイキラウェア天文台」


ナセルは直接キラウェア天文台に電話を入れてみた。なか

なかつながらない。やっとつながるといきなり怒鳴られた。


「今言ったじゃないですか、リック天文台とローウェル天文台

では確認できたといってますが、キットピーク天文台とパロマ

山天文台ではまだ未確認だそうです。オーストラリアのストロ

ムロ天文台も確認してます。英国のグリニッジ、日本の野辺山

とも今連絡をとってます。現在再計算中ということです!」


と言って一方的にガチャっときられた。これは何かある。再度

かけなおしたが二度とつながらなかった。本来なら「ご迷惑を

おかけしてすみません」で済むところだ。


本能的にナセルは何かを感じてオサムオサナイに詳細に報告した。


その数日前にオサムオサナイのところにはレイ、キーツ、

ケムンからの研究報告が届いていた。


レイからは仏教の神髄法華経の中に人の仏性を信じてひたすら

礼拝行に徹した菩薩の話があるとか。東天に向かって「ナムミョウー」

と唱える教団がこの50年間で飛躍的に拡大しているとかの報告だった。


「東天に向かってナムストーンか・・・」

オサムは東の空を見上げた。


キーツからの報告はミイラだった。

過去のミイラの中に先祖返りというのがあって

三つ目のミイラがあったという記録が

ドイツの図書館に残っている。


骨相学の権威ルーマニアのドラアキラ医学博士のところ

には旧石器時代からの三つ目の頭がい骨が三体現存する。


ケムンからの報告では人類が類人猿として猿類と決定的

に分岐した時点から最古の骨格遺跡発見までの間には

数十万年の謎の期間がある。


最終氷河期の時期を挟んで文明発祥の時期との数十万年

の間の遺跡や記録は謎が多く数も少ない。


確かにメキシコやユカタン半島のアステカ、オルメカ

以前の文明、ペルーのマチュピチュ以前の文明、ナスカ

の巨大地上絵や最近続々と発見される海底古代遺跡など、


その遺跡の壁面には謎の三つ目や宇宙線らしき舟の絵柄

が必ずと言っていいほど克明に描かれている。


ムー大陸やアトランティスの物語はプラトンの記述以前から

その事実は数千年にわたり口承されてきたものだ。


とするならばノアの箱舟やリグベーダや中国の古書の

記述から人類は共通の大天変地異を経験しているのだ。


それでも地球誕生からの数十億年に比べれば数万年前の出来事だ。

それが遺跡に刻まれていることは間違いない。


地球を2億年ほど席巻した恐竜は6500年前の小惑星衝突によって

絶滅したといわれている。それは間違いないだろう。

核爆弾数千発分の衝撃だったといわれている。


それでも地球は生き残った。人類は一万年年前の氷河期を生き延びて

この数千年で地球的規模で繁栄しているように見える。

いつ何かで絶滅しても何の不思議もないのだ。

その兆しを今この時見過ごしてはならない。


ケムンの報告を確認しえた時ナセルからの連絡が入った。

「キラウェア?」

オサムオサナイは思わず小声で叫んだ。

何かが地球的規模で起きようとしている!

その時オサムのナムストーンは薄紫に輝いた。


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