第43話イラク2
米国大統領ジョージブッシュはナムストーンと低くつぶやいて
どっかと椅子に腰を下ろした。一呼吸おいて再び立ち上がると、
唖然として立ち尽くしている高官たちをゆっくりと見回して、
おもむろに威厳をもって指令した。
「イラク攻撃態勢は直ちに解除し通常配備に戻すこと。次に
サダムフセインの死亡を確認しこのビデオを全世界に公開
すること。イラクの民主化勢力を支援し速やかに新政府を樹立
すること」
そして小さくつぶやいた。
「ふーむ、これだったのか、ドナルド」
ーーーー
そのころオサムオサナイはひたすらナムストーンを唱えていた。
石は真夜中に激しくバイブレーションを起こしたままで
ずっと不気味に輝いていたからだ。
ところが明け方ピカッと閃光を放って振動はぴたりと止まった。
徐々に色はピンクに変化し再びドクンドクンと波打った。
『このピンクはあの時の・・・』
一息大きくついてオサムは大文字の夜のあの大きな瞳を思い出した。
その時である。テレビの画面に臨時ニュースが流れた。
「臨時ニュースをお知らせします!」
画面はフセイン自殺の瞬間をとらえていた。
「日本時間午前2時40分、イラクのフセイン大統領が
政府高官の面前で短銃で自殺し、フセイン政権は崩壊しました。
反フセイン民主勢力が臨時内閣を樹立し、まもなく
臨時政府による記者会見が行われます。くりかえします。
イラクのフセイン大統領はイスラエルへの核攻撃に失敗し、
バグダッドの作戦司令室にて短銃により自殺しました。この
映像がその時の映像です。間もなく新政府による記者会見が
始まります。核攻撃失敗の詳しい内容はまだわかりません・・」
もしかしたらこれだったのかもしれない。今回の祈りは成功した!
そう信じよう。その時ドナルドからメールが入った。
「ジョージおじさんから連絡あり『ドナルド本当にありがとう。
ナムストーンを信じるよ。これからもよろしく!』」
ほどなく緊急記者会見が始まった。全世界が緊張する。
「イラク新政府は次の新事実を映像とともに全世界へ公開する。
(1)フセインは核弾頭を積んだスカッドミサイル3基を
イスラエルへ向けて12月24日午後8時発射準備を完了させた。
(2)第1基目第2基目も発射に失敗し第3基目は自ら発射ボタン
を押した。失敗の原因はいまだに全く不明である。
(3)失敗確認後3基のスカッドミサイルを即座にシェルターに
移動したがこれらはすべて衛星に探知され、もしこの時攻撃されて
いればイラクは国内で核の自爆となっていた。国連軍、なかんずく
米国の自制に新政府は全イラク国民を代表して感謝する。今この
核はシェルター内に新民主政府軍の管理下で厳重に確保されている。
できるだけ早い時期に国連に手渡したいと願っている。
(4)フセインが核攻撃失敗を悟った瞬間、作戦室内に緊張が走った。
フセインを囲んで副官が3人さらにその周りを他の高官15名が取り
囲んだ。全員手に短銃を持って10数秒対峙した。副官3名が短銃を
床に落とすと同時にフセインは自らの口内に短銃を突っ込み瞬時に発射
した。弾丸は口内から小脳を貫通し即死であった。ビデオはすべてを
記録している。フセインがイスラムの英雄となるべくカメラはセット
されていたのだが、まさかの失敗で逆にすべての事実を映像として
記録されることとなった。
(5)新政府はいまだ未熟でイラク国民は貧困にあえいでいる。われ
われ新政府は全世界に向けて一日も早い民主化と自由化の促進をここに
宣言する。願わくば理解ある先進諸先輩国からの絶大なる支援を
心の底より切に要望する次第である。以上」
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