第21話 調達

警察署潜入作戦から2日後のある昼下がり



新宿御苑マンション



管理室でおおますがパソコンをいじっていた。



手にする紙には建物の見取り図らしき物が描かれ、それを眺めながら、キーボードを叩いている。



何かを作成してるようだ



後ろのテーブルにはプロジェクターらしき機器が置かれ



コンコン



作業する中ノックされ



おおます「いいぞぉ~」



ハサウェイが部屋に入ってきた。



おおます「お おまえか やっと来たかぁ~」



ハサウェイ「用件って何です?」



おおます「用件というか まぁ ちとおまえに見て貰いたいものがあってな これを見てくれ」



ハサウェイがおもむろにパソコンを覗くとおおますがある動画サイトをクリックした。



すると 画面に50代半ばらしき軍服姿の男が映し出され喋り始めた。



軍服の男「え~ 私は陸自…いや今では元ですね 私は元陸上自衛隊特殊第8急襲兵団所属及び指揮官を務めてました。宮本と言います」



ハサウェイ「……」



宮本「階級は元一佐であります え~ この動画を視聴する全ての者に告ぐ 我々は今、人が人を襲う奇怪で未曽有の大惨事に直面し滅亡の危機に瀕しております もう防衛のみでは奴等の増加や侵攻を食い止める事は出来ない… 逃げ隠れしても奴等の脅威から逃れる事は出来ない…」



おおます「…」



宮本「したがって今ここで奴等と戦う事を宣言する 私達は既に重火器、爆薬、銃器、食料、1000人の同志が集まり全ての準備を整え終えた。全て揃った。これより全ての主要都市、全てのゾンビを一匹残らず駆逐し殲滅して周ります これを見た全ての生存者の皆さん もう脅える日々は終わりにしましょう 必ずやランナーやウォーカーを私達が全滅させあなた達のもとへ救出に向かいます。私達が行くまで希望を捨てずに待っていて下さい」



ハサウェイ「まじか? ついに…」



宮本「我らは… Zombie Adjust Counterattack Team…」



ハサウェイ「ゾンビ… アジャスト… カウンターアタックチーム?」



宮本「これよりZACT(ザクト)の名の元に必ずや人類の勝利を勝ち取ってみせます この佐世保の地から私達は必ずや滅びの道を止めてみせます。 また… これを見た力ある者よ 我がもとへ集え! 元の暮らしを取り戻したければ もう戦うほかない! 共に戦おう 以上」



動画サイトはこれで終わった。



ハサウェイ「ザクト… ついに動きだしたんですね」



おおます「この動画の投稿日は2週間程前だ ネットで他のグループと作戦打合せのやり取りをしてる時にこの話題が上がってなぁ まぁ前々から名は聞いてたんだが… ようやく動き出したって聞いてそれで調べてみたんだ なんでもこの宮本って奴が中心に日本全国の自衛官を集結させ、そこに日本に取り残された米軍兵と警察が加わり、暴力団、猟友会、犯罪者などなど奴等と戦う為だけに結成された集団組織だそうだぞ」



ハサウェイ「ゾンビ狩りの組織って事ですね」



おおます「あぁ そしてこれが今日アップされたやつだ」



おおますがクリックすると違う画面が映し出された。



ハサウェイの目に…



それは…日本では考えられない光景



まるで映画のワンシーンのような映像が映し出されていた。



黒塗りの完全武装した男達が市街戦を繰り広げていた。



前方から迫り来る感染者、ゾンビをアサルトライフルやらショットガンでことごとく撃ち落としているのだ



また違う映像に切り替わり、30人程の部隊がゆっくり前進しながらRPGロケットランチャーを使用したり手榴弾を投擲しながら快進撃を映す動画だった。



おおます「北上するそうだ まあ東京へ来る頃にはどうなってるか… でも…お前等が望んでいた反撃が遂に実現したんだよ」



ハサウェイ「なるほど これは嬉しいニュースですね 頑張って貰わないと 全てを託したいですよ」



ーーーーーーーーーーーーーーーー



同マンション905号室



エレナと江藤が筋力トレーニングに励み汗を流していた。



恵美子「ちょっと~ ハサウェイ~ 純や~」



するとそこに恵美子がやってきた。



恵美子「あれ 2人だけ? ねぇエレナさん クリスちゃん私に懐いてくれたようなの この子ホント可愛いわね~」



クリスも後から部屋に入ってきて足早にエレナへと近寄って行った。



エレナ「クリス~ ホントなのぉ 偉いわ~」



エレナが頭を撫でるや床に転がり腹ばいになるクリス



エレナがその腹を撫でながら



エレナ「ほかの人に慣れるなんて滅多にないんです ましてやこんなに早く懐くなんて恵美子さん凄いです」



恵美子「私、犬好きだからかな… そうそう あれ?純やとハサウェイは?」



江藤は筋トレを続けながら「純や君は自分の部屋で爆睡中、ハサウェイさんはさっきおおますさんに呼ばれて管理室に行ってるよ」



恵美子「あらそうなの… う~ん そろそろ無くなりそうなのよね ならお2人に調達お願い出来るかしら クリスちゃんのドッグフードも加えて」



恵美子はメモ用紙にボールペンで書き加えた。



エレナ「??」



エレナが江藤を見ると



江藤「食料の調達だよ いつもは純や君とハサウェイさんと3人で行ってるんだけど 特に危険も無さそうだし2人で行こうか?」



エレナ「え?食料庫なんてあるんですか?」



江藤「あるよ 2階建てのスーパーだよ」



エレナ「スーパー?」



エレナの瞳が急にキラキラしたように見えた。



エレナ「行く行く お買い物ですね 私も連れてって下さい!」



エレナと江藤は恵美子に頼まれスーパーにある食料調達へ行く事となった。



EVが2階に止まるとカゴを持つ2人が姿を現し 、非常階段の扉を開いた。



外に面した非常階段の先には木の板で作られた橋が見える。



ルンルン気分なエレナは「わぁーおー 橋だぁ」



江藤「エレナさんあまり外で大声出さないようにね」



エレナはとっさに口を両手で覆いながら隣りのビルへと渡った。



ビルの中に入ると通路になっており、2人はその廊下を直進する。



エレナが小声で「おっかいもの~ おっかいもの~」



…と突然口ずさみだし、軽くスキップを入れ足早に歩き始めた。



江藤は心の中で…



お金なんて払わないから単なる調達ですよエレナさん…!



通路を抜けまた非常階段に出ると再び板の橋が見えてきた。



エレナ「わあ~お~ 再びぃ」



江藤「シッ だからエレナさん外では静かにね 安全だけど聞かれるとゾンビとか寄ってくるから」



エレナはまた口を覆い橋を渡った。



橋は一軒家の民家へと繋がっていて2階のベランダに直通、室内へと入って行く



エレナは小さな声で「お邪魔しま~す お留守ですよね?」



江藤「うん ここの住人だろうね 前に感染者がいたけどとうに駆除してるから大丈夫 今は無人だよ もうすぐ着くからね」



エレナ「へぇ~」



階段を下り台所の扉を開くと建物に囲まれどの道にも繋がらない一直線の細長い私道へと出た2人



江藤「この道真っ直ぐ行ったあの扉がスーパーに繋がってるんだ」



エレナは私道を歩むと次第に口ずさみ始めた



エレナ「ふっふふぅふぅふぅ~ お~かい~もの おっかいもの」



しかもやたらと大声な口ずさみ



江藤「あの~ ねぇ 急にキャラ変わり過ぎじゃない しかも声デカ過ぎ はしゃぎ過ぎ」



エレナ「もう~ これがホントの私ですよ。お買い物なんて久し振りなんですから 女性はね~ お買い物が大好きなんですから もうお堅い事言わないの ね!」



江藤「ね!って……」



そして扉を開くとそこはゴミ捨て場だったのだろう… 潰されまとめられたダンボールやらパンパンに詰められたゴミ袋が10個程置かれていた。



2人がスーパーの裏口から中に入ると従業員用の休憩室へ入り、また扉を開くと在庫室に辿り着いた。



日用雑貨、インスタント食品系、飲料水、などなどありとあらゆる品がダンボールで積み上げられている。



その奥には稼働された冷凍室、冷蔵室などが見える。



電気が通ってる為全て機能されていた。



それを目にしたエレナの眼は完全に…お星様状態



輝きだした。



エレナ「え 凄い… こ…これ全部… 私のもの…?」



江藤「エ…エレナさん… 違う違う みんなの物ね…」



エレナは在庫室の扉を開き店内へ颯爽と飛び出した。



窓と言う窓は鉄のシャッターで完全に閉められ、外部からは見えず、室内は完全密閉化されていた。



店内に飛び出したエレナ



エレナ「キャー 凄い」



エレナは大絶叫後店内を無邪気な子供のように駆けまわった。



陳列されたおいしそうなお菓子を食べながら駆けずり回り、はしゃぐ姿



江藤はその様子を見てやれやれと言った苦笑いを浮かべながらメモ用紙に目を通す



エレナ「江藤さん 流石に野菜とか肉魚系の生ものは無いですよね!?」



江藤「あるよ 冷蔵庫じゃ駄目になるから腐る前に全て冷凍室に置いてあるよ 勿論鮮度や味はまったくだけど腐るよりはましだからね」



エレナ「え~ そうなんですか じゃあもう私ここに住む」



江藤「駄目」



エレナ「嘘ですよ 2階には何があるんですか?」



江藤「服とかまあ食品以外の生活用品だよ」



エレナ「行ってもいいですか?」



江藤「しょうがない いいよ もう眼が流れ星になってるし 俺が恵美子さんに頼まれたの集めとくから」



エレナ「えへ わかりますぅ じゃあ ちょっとだけ」



エレナはアラレちゃんのように両手を広げ2階へ駆け上がって行った。



それから30分後…



江藤が大量に品の詰まったカゴを両手に、エレナもカゴを1つ抱えながら戻っていく



エレナ「あ~楽しかった あんな素敵な所また連れて行って下さいね」



江藤「あぁ でも… いつまでもあそこがある訳じゃないよ」



エレナ「え?」



江藤「供給されてる訳じゃないからさ…未来永劫いつまでも物がある訳じゃない… いずれはあそこも空っぽになるよ それにこんな世界がずっと続けば… いずれ食料の奪い合いが始まるかも… 人の欲はゾンビの存在よりも恐ろしいから」



エレナ「うん 確かにそうですね…すいません浮かれすぎてました私… 今ある食べ物に感謝しなきゃですね」



2人は食料を抱え帰って行った。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



同時刻  



渋谷区のとある倉庫内



ギシギシと激しく揺れる古びたダブルベッド



全身刺青の入った男が裸の女性にまたがり激しいピストン運動を行っていた。



女は抵抗する力も気力も一切見えず、されるがまま蹂躙、今では生気さえも殺(そ)がれていた。



椅子に腰掛けナイフを研ぐ男が刺青男へ口にした。



「おい 龍谷(りゅうや) おまえやりすぎだ 1日何回やれば気が済むんだよ 見てみろよ その女とうとう壊れちゃったじゃねぇかよ」



ピストンを止め龍谷が女を見るや、女の眼は精神が破壊され廃人のように見開かれたままだった。



ギシギシ ギシギシ



だが再び腰振りをはじめる龍谷



また丸テーブルでスタンガンを分解中の男が作業しながら口にした。



ギシギシギシギシギシギシ



「まぁ 毎日毎日朝から晩まで強姦されればそりゃあ壊れもするだろ 喘ぎ声無しじゃ興奮もしねぇーわ それじゃあただのダッチワイフだろ」



そして激しく動かしていた龍谷の腰の動きが止まった。



また拳銃の手入れをする男が女へと近づき覗き込むや



「ほんとだ 中々締まりも良かったし、清楚で可愛い子だったのに 駄目だこりゃ 速攻壊すなよな」



拳銃の男が女の髪を掴み持ち上げながら耳元で口にした。



「おい 生きてますか?」



女から返答は無い



まばたきも無く生気も無い無表情で天井を見つめるのみだった。



拳銃男「駄目だこりゃ また精神崩壊してる もうオメェー等 やり過ぎだ」



「おまえが言うな 朝から3連チャンかましてたの知ってんだかんな」



「っで… この女どうするよ?」



龍谷がズボンを履きながら口にした。



龍谷「その辺に捨ててこい あとは糞ゾンビが後処理してくれんべ おまえが捨ててこい」



拳銃男「はぁ? やだし 重ぇ~し面倒くせぇ~」



スタンガン野郎「じゃあ 次の女さらいに行かないとだな」



すると



パソコンをいじる男が「ねえ みんな来て これ見てみなよ なんか面白いもん見つけたよ」



4人がノートパソコンを覗くとそこには、おおますが超高層ビルに取り残された人々の救出作戦について書いた状況報告と参加を募る画面が映しだされていた。



ノートパソコン男「超高層ビルで救出活動だって なんか面白そうじゃない?」



「女もめっちゃいそうだな」



ノートパソコン男「うん ゾンビ狩り、レイプ、人殺しと全ての遊びが詰まった夢の箱でしょ これ!」



カタカタキーを叩きだす



「もちのろんで参加だよね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る